宮本慎也、青木宣親、バレンティン…神宮球場の”声の主”が明かす、球史に残る「名選手たちの記憶」

赤いストライプやグリーンのユニホームを着たファン、その手に握られた小さな応援傘、球場を囲む豊かな緑と都市風景、夕焼けから少しずつ色を変えていく空。 そしてもう一つ、「神宮球場に来たな」と実感させてくれるのが、球場に響く東京ヤクルトスワローズのスタジアムDJ、パトリック・ユウ氏の明るく伸びやかな声だ。 ファンにとってはすっかりお馴染み、試合に欠かすことのできない存在のパトリック氏だが、どういうきっかけでスワローズのスタジアムDJとなったのか。知られざる経緯とともに、印象に残っている選手や応援歌、スワローズへの思いなどを聞いた。 【第2回】『球場に「ネガティブな言葉は似合わない」神宮を盛り上げる《声の演出家》…ヤクルト・名物DJが語る「仕事の流儀」』より続く。 数々の名選手たちの記憶 スワローズのスタジアムMCに就任して、今年で18年目。その間、さまざまな選手の活躍を見つめてきたパトリック氏に、記憶に残っている選手を聞いてみた。 「う〜ん、いっぱいいますね……。みんなそれぞれ記憶に残っていますが、投手だと、クローザーの林昌勇(イム・チャンヨン)選手(2008-2012)はすごかった。 投手陣は明治神宮外苑の軟式グラウンドで練習することがあるのですが、そこで遠投を120mくらい勢いのある球を投げていたんですよ。キャッチャーは1人では返せないから、間に1人入って中継で返す。その光景に驚きました。いやあ、球が本当に速かったですね」 球史に残るシーンに立ち会ってきた では、打者はどうか。パトリック氏は「打者も本当に数え切れないんですよね」と困ったように笑みを浮かべた。 「パッと思い出すだけでも、日本プロ野球新記録となったバレンティン選手(2011-2019)のシーズン通算60号本塁打、2022年の最終戦・最終打席で56号を決めた村上宗隆選手、2015年日本シリーズで3打席連続本塁打を放った山田哲人選手……本当に、球史に残るシーンを目撃していますね。 宮本慎也選手(1995-2013)の引退試合の最終打席も印象深い。レフトフェンス際の大飛球だったんですけど、あれがホームランだったら引退を撤回してくれたんじゃないかな(笑)。 青木宣親選手(2004-2011、2018-2024)も忘れられません。打撃や守備はもちろんのこと、ヒーローインタビューもとても盛り上がる。青木選手の優しい人柄やファンへの思いが、素直な言葉として出てくるのだと思います。 石川雅規投手も言葉の選択がとても素敵で、たまにパクらせていただくこともあります(笑)。すごくいい言葉でお話しされるので、参考になっています。さすがスワローズの先輩。教えられることが多いです」 選手あれば、応援歌あり。数々の名勝負を彩ってきた選手応援歌の中で、パトリック氏の印象に残っている曲は何だろうか。 「やっぱりバレンティン選手、青木選手の応援歌は盛り上がりますよね。あと、比屋根渉選手(2012-2018)の曲も好きでした。沖縄出身だから、沖縄っぽいワードが入っていてね。それから福地寿樹選手(2008-2012)の『光の速さでフクチ!』。好きでしたね〜。ちょっと渋いですかね(笑)」 ファンの熱量が伝わる「ブリッジ」だからこそ 応援歌といえば、とパトリック氏は話を継いだ。 「今シーズン、山田選手が登場する時の歓声、応援歌のボリュームが本当に大きいなと感じています。村上選手、長岡秀樹選手、塩見泰隆選手、あと丸山和郁選手もコンディション不良で抜けて苦しい状況の中、ファンの方々がキャプテンに期待を寄せている表れだと感じています」 アナウンスブースではなく、ファンの熱量を直に感じるブリッジでMCをしているからこそ伝わる思い、臨場感。時に寄り添い、時に鼓舞するパトリック氏の熱い言葉は、ブリッジにいるからこそ生まれてくるものなのだろう。 「実は1年目の最初の1ヵ月はブース内で話していたんです。当時のプロデューサーさんが臨場感あるアナウンスにしていこうという演出を考えておられて、現在のブリッジで話すことになったんです。プロデューサーさんが外に出してくれなかったら、今の私はなかった。本当に感謝です」 ブリッジに移動になった利点はもう一つ。ブルペンが近く、投手が準備している様子をすぐそばで見られることだ。 「神宮球場って、客席とフィールドがめちゃめちゃ近いんですよ。だから、選手の息や汗まで伝わってくる。ブルペンでキャッチャーが捕球する音も聞こえます。それから、ロケーションも魅力ですよね。都会のど真ん中、緑溢れるオアシスでプロの試合を見ることができるのってすごいことだなと思います」 (撮影/濱粼慎治、取材・文/井上華織) ・・・・・・ 【つづきを読む】『「彼は天才でした」盟友・つば九郎との別れを胸に…神宮球場の“声の主”が語る「スワローズと歩む夢」』 【つづきを読む】「彼は天才でした」盟友・つば九郎との別れを胸に…神宮球場の”声の主”が語る「スワローズと歩む夢」

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