もう「タワマン」に振り回される人生はまっぴらだ…!幻想で暴走した「不動産”局所バブル”」の悲惨な末路

「タワマン時代」の終わりの始まり 筆者はタワマンを売ったことも買ったこともない、戸建住宅のキャリアを積んだ戸建事業者である。今回は、我田引水との批判は甘んじて受けることとし、戸建事業者からみたタワマンの課題について考えている。 前編『「タワマン神話」の崩壊が始まった…!セレブの“キラキラ感”で突き進んだ「マンション幻想」のヤバすぎる実態』で見てきたように、本来マンションは、「一戸建てを買えない人」のための選択肢だった。 「住宅すごろく」で言えば、マンションはあくまで“途中経過”に過ぎなかったはずだ。ところがいつの間にか、「億ション」「タワーマンション」という言葉が「記号化」され、セレブな暮らしの代名詞のように扱われるようになった。 とりわけ2000年代以降、奥様方の“キラキラ感”をくすぐる「社会記号」へと変貌したのである。 このように「タワマン神話」を流布することで突き進んできた住宅業界だが、直近ではその価値観にも変化がみられるようになっている。 本稿では、その実態について詳しく見ていくことにしよう。 「タワマン」に住み始めた海外勢 マンションの価格高騰が顕著である。マンション価格の理不尽な高騰については、拙稿『マンション暴騰のいまだから考えたい! 家は『マンションがいいのか?』『戸建がいいのか?』、この論争にプロの私が決着をつけたいと思います!』にて詳しく述べたので、改めてご確認いただきたい。 「オーバーレジデンシズム」とは、海外資本や超富裕層が特定エリアの不動産を買い漁ることで、本当に住みたい人が居住できなくなる現象を指す、私が作った造語である。 東京のタワマン市場でも近年、中国をはじめとする外国人富裕層の存在感が急上昇している。豪華な庭で有名な東京の超高級マンション「ブランズタワー豊洲」や、夜の美しい姿が水面に映る「パークタワー晴海」などが中国人富裕層を魅了しているとの報道もある。 中国国内の高級マンション価格に比べ、日本のタワマンは割安とされ、さらに中国からの資産逃避(キャピタルフライト)を目的に、安全な日本の不動産に資金を移す動きがブーム化している。 長期の円安傾向も手伝い、日本の高層マンションはアジア富裕層にとって魅力的な投資先となり、東京のみならず、京都や北海道ニセコなどでも外国資本による不動産購入が増加した。その結果、一部地域では、地元の若者が住宅価格の高騰によって隣県へ生活圏を追われるケースが出ている。 住居取得の環境が外国人に影響されているだけでなく、実際の生活への影響も懸念される。 アセットテクノロジー社が実施した「タワーマンション管理に関する実態調査」(2025年6月)によれば、タワーマンションの入居者対応についての課題を尋ねたところ、1位は「外国人入居者への対応」(50.9%)であった。6位の「入居者とのコミュニケーション」(20.4%)と比べても、外国人入居者対応が大きな課題となっていることがわかる。言語や習慣が異なる外国人入居者と同じマンションで暮らす苦悩が読み取れ、きらびやかな生活を夢見て入居した理想と現実のギャップを感じざるを得ない。 「襲う高齢化」と「管理組合の機能不全」 同じく「タワーマンション管理に関する実態調査」(2025年6月)によれば、タワーマンション所有における将来的な不安については、1位が「修繕費用の高騰」(51.9%)、2位が「設備の老朽化対応」(46.3%)となっており、その不安は深刻である。 高層マンションでは、大規模修繕費用の不足が深刻化している。新築分譲時に月額の修繕積立金が低く設定されるケースが多く、築10年前後で最初の修繕時期を迎えると資金不足に陥る例が相次いでいる。積立金の見直しを怠れば修繕工事を実施できず、放置すれば建物の老朽化が進み、スラム化しかねない。 実際、全国で修繕積立金不足により大規模修繕が進まず、老朽化が著しいマンションが出始めており、居住者が退去し管理会社にも見放されるケースすら懸念されている。タワマンにおいても決して他人事ではなく、将来、建て替え不能・修繕不能に陥るリスクに備え、早期から積立金を増額修正するなどの対策が急務である。 また、入居者の高齢化が抱える課題も見逃せない。タワマンでは数百世帯規模の大規模コミュニティが形成されるが、居住者間の意見対立や管理組合の運営トラブルも発生しやすい。特に築年数が経つにつれて住民の高齢化が進み、管理組合役員のなり手不足や意思決定の停滞が顕著になる。高層階を含む戸数が多いマンションほど総会での合意形成が難しく、修繕積立金の増額など痛みを伴う決定が先送りされがちである。 さらに、購入時に若かったファミリー層も、時が経てば一様に高齢化し、「かつてのニュータウン」のように同時多発的に老境を迎える問題が発生する。高度経済成長期に開発された郊外団地が経験したように、入居者が同時期に高齢化すると空き住戸が増え、活気を失い、やがて廃墟化するリスクが高まる。 拙稿『その「空き家」、買ってはいけません…! 大量放出の「空き家」をついつい買った人がたどる「最悪の末路」』でも指摘したが、これは短期的需要に応えるべく大量供給された住宅地がたどった道であり、タワマンもまた同様の問題を将来抱え込む可能性が高いと、専門家たちは警鐘を鳴らしている。 「神話崩壊」で起きること 以上のように、タワーマンションには構造的な弱点が内在し、資産価値の維持や居住の安定性という点で長期的な不安が大きい。 高層ゆえの災害リスク、巨額の修繕費用、コミュニティの脆弱性、投機マネーによる歪み──これらの問題は今後ますます顕在化し、「タワマン神話」は終焉へ向かう可能性が高いと私は見ている。 一方で、自分の裁量でメンテナンスや建て替えの計画が立てられ、他者の合意形成に悩まされないという戸建の利点に注目が集まるだろう。土地という資産が残り、家族のための投資になる。マンションに比べて敷地面積が広く、駐車場や庭を持てる点も根強い人気だ。もちろん戸建てにも課題はあるが、少なくとも「自分の家族のための投資」であり、他人の意思に左右されるリスクは少ない。国も空き家対策や住生活基本計画の中で良質な既存住宅の活用を掲げ、住宅政策も転換期を迎えている。 人生100年時代——。 タワマンのブランドに惑わされず、本質的な価値を見つめ直すべき時がきている。 さらに連載記事『「昭和のステータス」が滅びゆく住宅業界に「令和の新常識」が台頭していた…!若者たちが始めている「かしこい家の選び方」』でも、住宅事情の変遷を詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてほしい。 【もっと読む】「昭和のステータス」が滅びゆく住宅業界に「令和の新常識」が台頭していた…!若者たちが始めている「かしこい家の選び方」

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