1億年前の堆積層から採取されたコア試料(地質試料)から微生物が見つかった。この微生物を発見したのが、JAMSTEC高知コア研究所 物質科学研究グループの諸野祐樹上席研究員です。この掘削調査は南太平洋の中央部にある「南太平洋環流域」とよばれる地点で行われました。 恐竜の繁栄する時代から1億年を生き続けた微生物とは何か? その歴史的な大発見の裏側には、じつはある大失敗があったのだといいます。 そもそも海底から採取したコアと呼ばれる地質試料をどのように分析するのか? そこに生命が存在すると言い切るためには? 10年以上の歳月を経て、ようやく1億年前から生きている微生物だと諸野さんが断言した大発見から、あらためて「生命とは何か?」について考えたみたいと思います。(取材・構成:岡田仁志) *本記事は、JAMSTECの研究紹介のなかから「生命研究」に焦点をあて、『JAMSTECアーカイブス』として、とくに話題となった記事を再編集してお届けいたします。本記事は2024年5月22日に配信された前後編の記事をもとにしています。 深海の下、海底下の堆積層に生命が! ーー海底下の堆積層に生物がいるかどうかは、いつごろから研究されていたのでしょうか。 もっとも早い段階の研究としては、1955年に発表された論文が知られています。ハワイの西、太平洋のど真ん中の深い海の底に船の上からパイプを突き刺して、1メートル刻みで泥を採取したんですね。 そのときは、海底下7メートルまで微生物の存在が確認されました。でも、それよりも深いところには見つからなかったんですね。だから、1955年時点の海底下生命圏は、わずか7メートルでおしまい。それより下には、生物はいないと当時は思われていました。 そもそも太陽の光も届かないような深海は、人間から見ると「死の世界」のように感じられます。海底面でさえそうですから、その下の泥を何百メートルも深く掘り下げても、生き物が存在するとは思いにくい。だから、海底下7メートルが生命圏の限界だろうというのが当時の認識だったんですね。 それ以降、しばらくは誰もそれ以上は調べようとしませんでした。微生物は地球上のいたるところにいますから、この分野の研究者が調べるべき場所はほかにたくさんあったでしょうしね。 地球上の微生物の3分の1は海底下にいる! ーー微生物がいるかどうか、当時はどうやって調べたんですか? 採取した泥を、寒天でつくった培地に載せて、コロニーをつくるかどうかを見るんです。そこに生き物がいれば、栄養を食べてコロニーをつくる。コロニーができなければ、生き物はいないと考えるわけです。まだ泥の中にいる微生物を見分けることができなかったので、それ以外に調べる方法がなかったんですよ。 でも顕微鏡やDNAの分析技術、海底下の掘削技術などの進歩もあって、1980年代に入ると再び海底下生命圏の研究が活発になりました。とくに大きなインパクトがあったのは、英国の微生物学者ジョン・パークスらが1994年に発表した論文です。 彼らは、太平洋沿岸の海底下から採取した泥を顕微鏡で調べました。DNAを染色して光らせる試薬が開発されていたので、コロニーをつくらせなくても、泥と生物を見分けられるようになっていたんです。その結果、深さ約800メートルまでの海底下でも微生物が存在することがわかりました。 それも、わずかな数ではありません。1立方センチメートルあたり10万個を超える数です。これ、海水中の微生物の密度よりも多いんですよ。その後も研究が進んで、いまでは地球上の微生物の3分の1近くが海底下に埋もれているのではないかと考えられています。 70年前は「死の世界」だと信じられていた海底下が、現在ではむしろ「微生物の楽園」なのかもしれないという話になっているんです。 生命存在の限界はどこにあるのか? ーー生物学のフロンティアが一気に広がったんですね。 地上の微生物研究は進展していて、骨を投げ込めば溶けてしまうような酸性の湖や、手を入れれば皮膚がヌルヌルに溶けてしまうようなアルカリ性の水などにも、微生物が存在することがわかってきています。もはや、地上で微生物がいない場所を探すほうが難しいぐらいです。地上は微生物に征服されているといっても過言ではありません。成層圏にも、微生物はいますからね。 では、地球上で微生物が生きられない場所はどこなのか。限界点のひとつは、必ず海底下にあるはずなんですよ。 なぜなら、地球の中心のあたりは温度や圧力が高すぎて、生物を形づくる有機物がバラバラになってしまうからです。そこに至るまでのどこかに、生物が存在できる限界点がある。それがどこなのかを知りたくて研究をしています。 この中に微生物は何個いますか? ーー DNAで泥と生物を見分けられるようになったことで、その研究が大きく進展したわけですね。 そうですね。生きているか死んでいるかは別にして、DNAをもっていれば生き物だと考えて差し支えありませんから。とはいえ、DNAを染色して見分けるのも決して簡単ではないんですよ。試薬をかけて顕微鏡で観察しても、誰でも同じように数えられるわけではありません。同じ試料でも、数える人によって100倍になったり1000倍になったりしてしまうんです。 僕自身、この分野の研究を始めたころに、その難しさを痛感させられたことがあるんですよ。僕は2006年にJAMSTECに来たんですが、その少し前に、2005年に竣工した地球深部探査船「ちきゅう」の慣熟航海が行われました。下北半島沖の海底を掘削して、コア試料を採取したんですね。僕のJAMSTECでの初仕事は、そのとき海底下400メートル弱のところから取ってきたコア試料に含まれる微生物の数を調べることでした。 そこで、DNAを緑色の蛍光色素で染める試薬をかけて顕微鏡で見たのが、この写真です。 緑色に光っている部分が、小さいものから大きいものまで、たくさんありますよね? これを全部、生物のDNAと見なしてカウントしていいのかどうか、よくわからなかったんですよ。 角砂糖1つ分の泥に1000憶の微生物!? ーーたしかに、小さいものや色が暗いものもあって、素人目にも迷う感じですね。 そうでしょ? 僕はJAMSTECに来る前に、産業技術総合研究所で仕事をしていました。そこでは培養した微生物しか扱っていなかったので、光ったものはすべて微生物として数えられたんですね。でも、海底下から取ってきた試料には、どんなものが入っているかわからないじゃないですか。 だから研究グループのリーダーに「どこからどこまで数えればいいでしょう?」と相談したんですよ。すると「大きさがそれっぽいやつは全部数えていいだろう」というので、画像解析プログラムで明るさの閾値を決めて、光り方がすごく暗いやつだけ除外してコンピュータに数えさせたんです。サイズはどれも微生物と見なせるものだったので。 そうしたら、1立方センチメートルあたり10の11乗個というものすごい数になっちゃったんですよ。角砂糖ひとつ分の泥の中に、1000億もの微生物がいるということです。それまでの研究では多くても10の9乗個でしたから、100倍も多い。 しかも不思議なことに、深いところに行くほど数が増えるんです。ふつうは深いほど少なくなるんですよ。浅いほど生き物の栄養源が多いと考えられますから。それなのに、こちらは逆に増えていく。10の12乗に迫るほどの数でした。 世紀の大発見が……! ーーうかがっているかぎり、画期的な新発見……のように思えますが。 JAMSTEC内部でも、「これは教科書が書き換わる大発見だ!」と大騒ぎになりました。でも、まわりが盛り上がれば盛り上がるほど、僕は不安になったんです。自分が数えたのが本当にすべて微生物なのかどうか、自信がない。だから別の方法でも確認しようと思って、試料を電子顕微鏡で観察してみたんです。 微生物を電子顕微鏡で拡大すると、ふつうは写真右上の囲み部分みたいにプックリした形が見えるんですね。いかにも生き物っぽいでしょ? ところが僕が数えた試料を拡大したら、写真のようにゴミみたいなものばかりだったんですよ。もちろん、中には微生物っぽいものもあるんですが、ますます不安になっちゃいましたね。 新しい試薬でDNAを染色して見えたものは! でも、ちょうど同じ時期に、DNAを染める試薬についての新しい発見があったんですよ。DNAを染める試薬として使われているものが、くっつく先のものによって色が変わることがある、というんですね。 それを知って、さっそく試してみました。そのときの写真がこれです。 前の写真と見比べると、まったく数が違いますよね? 指を折って自分で数えられるぐらいしか、微生物がいません。 つまり、前の写真で光って見えたものは99%ぐらいが偽物だったんです。しかも、浅いところよりも深いところのほうが偽物の割合が増えることもわかりました。おかげで、論文が世に出る前に、間違いがわかったんです。 100%正しいと言いきるための精度へ ーーじつにスリリングなご経験ですね。微生物研究の難しさがよくわかりました。科学を志す若い人たちにも広く知ってほしいお話だと思います。 計測技術などの進歩で、同じ現象がまったく違う形に見えるようになることが科学の世界にはありますからね。世間を驚かせた新発見が、10年後、20年後に「間違っていた」とわかることも決して珍しくありません。 でも注意深く慎重にやれば、避けることのできる間違いもある。僕にとっては、それがいちばんの教訓でした。教訓というより、ほとんどトラウマみたいなものです(笑)。だから次の大きな仕事は、慎重すぎるぐらい慎重に取り組みました。 恐竜が生きていた時代の堆積層には? ーーそれが、1億年前の地層から発見された微生物の研究ですね? そうです。2010年に、アメリカが運航する掘削船「ジョイデス・レゾリューション」に乗船して、南太平洋環流域で海底下生命の探査を行いました。 実験に使ったのは、海底下1.6〜74.5メートルから採取した堆積物です。これは、430万〜1億150年前にできたもの。いちばん古い層は、恐竜が繁栄していた時代です。そこに生きた微生物がいるかどうかを調べました。 その結論を出して論文を発表したのは、2020年のことです。試料の採取から10年もかかってしまいました。前の経験がなければ、そんなに時間をかけなかったかもしれません。でも、可能なかぎり慎重に進めたおかげで、自信を持って「この微生物は1億年前から生き続けている」と発表することができました。 その微生物は1億年前から生きているのか? ──南太平洋環流域の海底下で1億年前の地層から見つかった微生物は、1億年前からずっとそこにいたのでしょうか? あの領域の海底下の堆積物は、遠洋性粘土という細かい粒子で構成されていて、みっちりと詰まっているんですよ。その環境では、1000分の1ミリメートル程度の小さな微生物でも、動き回ったり、水の流れに乗って移動したりすることはできないでしょう。ですから、1億年前からそこに閉じ込められていたと考えられます。 ーー細胞分裂で世代交代しながら命をつないできたのではなく、同じ個体が1億年前からずっとそこで生きているんですか? 当然、そういう疑問は持たれますよね。 その地層は栄養源がとても少ないので、細胞分裂ができるほどのエネルギーは得られないんです。人間の細胞ひとつが消費するエネルギーを1とすると、1億年前の地層で微生物が得られるエネルギーは1億分の1以下。もっとわかりやすくいうなら、微生物が人間ぐらいのサイズだとすると、1日に食べられる量はごはん30粒ぐらいなんです。 ーーダイエット中でも、それだけでは3日ともたないでしょうね。 人間は1日に1200キロカロリー以上のエネルギーを摂取しないと、だんだんやせていって、やがて死んでしまいます。ごはん30粒は、3キロカロリー程度。つまり1億年前の地層にいる微生物は、人間で考えた場合の生命維持に必要な最低レベルの400分の1しかエネルギーが得られないんです。 ごはん30粒レベルのエネルギーでも、その個体がギリギリで生きられる状態ですから、細胞分裂して増えることなんかできません。実験室で栄養をギリギリまで絞った環境に置かれた微生物も、分裂はしないことがわかっています。 1億年前の地層は、そのレベルより4桁も少ない。ですから、細胞分裂で世代交代したのではなく、1億年前から細々と生き続けてきたと考えられるんです。 なぜ超・貧栄養状態で生きられるのか? ーーギリギリ生きられる最低レベルより4桁も少ないのに、なぜ死なないのでしょう。 エネルギー生物学者たちの論文によると、自然環境ではさまざまな要素が複雑にからむので、実験室よりも2桁少ないエネルギーでも生きられるとのことでした。しかし1億年前の地層は、それよりも2桁少ないわけです。そのため、細胞の全機能を維持することはできません。 でも、細胞の機能がいくらか損なわれても、体がバラバラに分解しないように維持するだけなら、もっと少ないエネルギーでも何とか生きていられるんです。そのことが理論的には明らかになっていたので、1億年前の地層で微生物が生きているのは決して不思議なことではありません。 実際、エサを与えたら食べましたし、全体の7割ぐらいは分裂して増殖もしました。 超微小の世界——微生物の代謝を見るには? ーー微生物がエサを食べたことを知るのも、簡単ではなさそうですが。 そうですね。目に見えない世界を見るのは大変です。 この実験では、まず見たい微生物を泥から分離して、たくさん集める必要がありました。そのためには、密度の異なる数種類の溶液を重ねて、微生物を含んだ泥水を加えるという方法があります。こうすると、重い泥の粒子は沈んで、軽い微生物が浮くんですね。 それまでは2種類の溶液を使っていましたが、このときは4種類の溶液を重ねました。微生物が泥の粒子に引きずられて一緒に沈んでも、次の境界で泥と分離するので、溶液の種類が多いほうが多くの微生物を取り出せます。 1秒間に10万回の振動で水滴を作る! そこから回収した微生物を、さらにセルソーターという装置にかけると、わずかに残っている泥の粒子から微生物だけを取り分けることができます。微生物を、同じ範囲に何百個もの高密度で集めることができるんです。 また、前にお話ししたとおり地上は微生物だらけなので、コンタミネーション(混入)を徹底的に防がなければいけません。その点では、高知コア研究所にあるスーパークリーンルームがじつに頼もしい存在でした。 微生物が餌を食べたかを知るには? ーーこうやって微生物を集めるんですか! でも、微生物が餌を食べたのか? というのはどうやってわかるんですか? 微生物に与えたエサは、グルコース、ピルビン酸、アミノ酸などです。微生物がそれらを食べたかどうかを追跡するために、このエサにはある仕掛けがありました。炭素や窒素などの安定同位体を使ったんです。 たとえば炭素なら、自然界には炭素12と炭素13が99:1の割合で存在しています。エサに入っているのは、炭素13のほう。微生物がそれを食べれば、体の中にある炭素13の割合が1%よりも多くなります。そうやって、さまざまな安定同位体の割合の変化を見ることで、エサを食べたかどうかわかるんですよ。その観察には、超高空間分解能二次イオン質量分析計(NanoSIMS)を使用しました。 1億年前の微生物発見は、10年越しの成果だった ーーそれらの作業を慎重に進めた結果、発表まで10年かかったんですね。1億年前の地層にいた微生物が生きているという大発見ですから、反響も大きかったでしょう。 もちろん、それなりに話題にはなりました。でも、発表したのが2020年7月だったんですよね。その前の4月から5月まで、コロナ禍で最初の緊急事態宣言が出ていました。みんながパンデミックの成り行きを固唾を呑んで見守っていたときですから、未知の微生物の話なんて聞きたくない(苦笑)。研究に10年かけたら、たまたまそんなタイミングだったわけです。 だからネットニュースのコメント欄では「こんな大変なときに1億年前の微生物を蘇らせるなんて、科学者は何を考えてるんだ!」「新たな感染症を引き起こすのでは?」といったネガティブな反応が7割ぐらいを占めていましたね。「すぐ返してこい!」とも言われました(笑)。 でも、その気持ちもわかります。微生物に対する恐怖心を煽るようなパニック映画も昔からよくありますしね。そういう映画だったら、僕なんか真っ先に死んじゃう役ですよ。第一発見者って、たいがい最初の犠牲者じゃないですか。 ーー新種の微生物を発見した時点で「死亡フラグが立った」と言われる(笑)。 そうそう。でも、海底下には感染相手となる生き物がいないので、そもそも人間に感染して病気を引き起こす微生物が存在する可能性はきわめて低いと考えられているんですよ。もちろんリスクはゼロではないので、微生物が外に漏れ出ないよう厳重に管理された実験室でしか取り扱いません。 生命とは何か? 究極の問いへ ーー発表時の反応はやや残念だったとはいえ、微生物研究や生物学全体にあたえたインパクトはかなり大きいのではないでしょうか。1億年も生き続けられるとなると、「生命とは何か」という根源的な問題にも関わるような気がします。 そうですね。この微生物の場合、1億年前から「生きている」というより、「死んでいない」という表現のほうがふさわしい気もします。生き死には「イチかゼロか」ではなく、そのあいだにいろいろな状態があるのかもしれません。 限りなくゼロに近い状態だけど、死んではいない。そういう状態で1億年も過ごすのがどういうことなのか、せいぜい100年で死んでしまう人間には想像がつきません。1日ごはん30粒だけしか食べられなかったら、1年も経たずに餓死する運命しか見えませんから。 もちろん微生物たちは、たぶん何も考えることなく、自然界の中でつくられた有機物として、ただジーッと存在しているわけです。そして、外から栄養物が来れば増殖する。そういう化学反応の連鎖がくり返されるだけなのかと思うと、生き物なのに無機的な印象を受けたりするわけです。 もしかしたら、生物と非生物のあいだに線を引こうとすること自体が間違いであって、中間的な存在があってもいいのかもしれません。そもそも「生命とは何か」という問題設定が、人間の都合ですからね。自然界では誰もそんなこと考えていないわけで。 生きている? それとも、死んでない? ーー1億年前の地層から見つかった微生物の中には、エサを食べなかったものもあるんですよね? それは死んでいると考えてよいのでしょうか。 7割は生きていると確認できましたが、残りの3割はわからないですね。気に入るエサを与えていないから食べないのかもしれないし、いまは食べないだけで、しばらくしたら食べるという可能性もあります。死んでいるのかもしれませんが、それは証明できません。 ーーなるほど、「生きている」ことは証明できても、「死んでいる」かどうかは悪魔の証明みたいな話になってしまうんですね。 そういうことです。じつは、僕が追い求めている「生命圏の限界」もそうなんですよ。そこに生物が「いる」ことは証明できますが、ここから先は生き物が「いない」と証明するのは難しい。 「いなかった」といっても、「調べ方が悪いんじゃないのか」といわれてしまいますからね。海底下を掘り下げて、そこに生き物がいるかいないかを探す従来のアプローチだけでは、この問題は解けません。 だから今後は、数学者の力も借りようと思っています。というのも、海底下の深いところほど、生物の数は減るわけですよね。ならば、減る原因となる変数を明らかにして数式化すれば、「この深さを超えると生物の数が1を下回る」といった境界が理論的に計算できるはずなんです。その理論値と観測値を組み合わせて計算すれば、「ここより下には99.9%の確率で生物が存在しない」といった確率論的な話はできるでしょう。 生命存在の限界、カギを握るのは「温度」 ーー生物の数を減らす原因でいちばん重要なのは何ですか? やはり温度だと思っています。従来の常識では考えられないほどの低栄養でも死なないことは1億年前の微生物で明らかになりましたし、相当な圧力がかかっても増殖する微生物がいることもわかっていますから。 温度のほうは、JAMSTECの高井研さんの発見によって、いまのところ122度が生命の最高増殖温度とされています。だから僕としては、150度以上のところを見たい。これはタンパク質がバラバラになる温度なので、さすがにそこにはいないと思うんですよ。そうなれば、生命圏の限界は122度から150度のあいだのどこかにあることになります。まあ、そこにもいるかもしれませんけど(笑)。 ーーそれはそれで、すごい大発見だと思いますが。 そうなんですけど、僕は生物が「いないところ」を探しているもので(笑)。でも、「生物が見つからないところ」はなかなか見つかりません。たとえば2016年と2019年の航海では、120度ぐらいのところまで掘り下げましたが、ある深さで「ここにはいない」とわかっても、その下から見つかっちゃうんですよ。 じゃあ、もっと深く掘って調べようと思ったら、さらに下は条件が悪かったんですね。2016年のときは、泥ではなく石の地層になっていました。石の層は隙間に外から水といっしょに微生物が流入するので、生命圏の限界を見定めるには適していません。2019年のときは泥の層が続いていましたが、高熱で有機物が分解してできた天然ガスの濃度が高く、安全に掘削することができませんでした。 ですから、生物が存在できる温度の限界を知るには、有機物、つまり微生物の栄養が少なくて、温度勾配が急なところ、つまりあまり深くまで掘らなくても温度が急激に上がるような場所を探さなければなりません。探し方は、誰かに教えてほしいぐらいですけどね(笑)。そういう場所が見つかったら、定年までの残り13年をその研究に丸ごと注ぎ込んでもいいと思っています。 取材・構成:岡田仁志 取材・図版協力:国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC) 撮影:市谷明美・講談社写真部 マリアナ海溝で生命の限界を探る!生命研究の第一人者が現代の”ビーグル号航海”に挑む
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