日本のサッカー界は異常だ…海外記者がこぞってアビスパ福岡・金明輝監督の存在を指摘するワケ

暴力指導者に甘い日本サッカー界 「年間スケジュールを鑑みれば、プレーヤーたちは疲弊している。これ以上の過密日程を組めば怪我人が出る」と危惧されるなか、6月14日に開幕したFIFAクラブワールドカップ。以前は8チームで鎬を削っていたが、今回から参加チームを32に増やし、大会を制したチームの賞金が少なくとも1億2580万ドルと、ールの大きなイベントとなった。 2022年のAFCチャンピオンズリーグ王者として、日本のクラブで唯一、同大会に出場した浦和レッズはグループリーグ3連敗で姿を消した。ジャパニーズファンは悔しい思いをしたであろうが、これが現実である。 世界レベルと決定的な差があるのは技術、戦術だけではない。サッカー界に巣食う暴力指導者たちの存在、そして扱いも目に余る。暴行や傷害に値する問題を起こした者でも現場に戻れてしまうのが、日本のサッカー界である。 今シーズンからアビスパ福岡で指揮を執る金明輝は、2021年末、サガン鳥栖の監督を自ら降りた。トップチームのプロ、及びユース選手に対する暴行、暴言が明らかになったからだ。 プロ選手の前髪を握ってビンタをしたり、ボールをぶつけたり、ユース選手にも「死ね」「殺すぞ」「消えろ」「お前の顔は気持ち悪い」「ハゲ」なる発言を重ねていた。金の習性を問題視したサガン鳥栖が第三者委員会を設けて調査に乗り出すと、この男はチーム関係者に対して口止めを指示し、隠蔽工作を計っている。 こうした輩が平然とプロの世界で飯が食えている現状について、筆者はFIFAクラブワールドカップを記者席から取材するサッカージャーナリストたちに、意見を求めた。 まずは、40年近く現場に出続けている63歳のベテラン、スコット・フレンチ。 「表面的には永久追放が妥当だと思える。だが、メンタルヘルスの視点で深掘りする必要があるのではないかな。金監督に対して、徹底的な精神鑑定を施し、原因を究明すべきだったね。結果を踏まえ、医師の判断を仰ぎながら、金が2度と同じ罪を犯さぬように、かつ、これ以上の犠牲者を出さない改善策を検討すれば良かった。 問題の指導者は、当然のことながら自らの行為を完全に認め、復帰するのであれば、保護観察処分を受けたうえで、他のコーチと共に働く環境を用意しなければならなかった。このような状況下で、彼を再び雇用する意思のあるクラブがあったということを、私は不思議に思う。 彼は、共感性や良心の欠如が見られるサイコパスなのか、あるいは反社会性パーソナリティ障害であるソシオパスなのか? それとも、自身の感情をコントロールできず、情緒を爆発させる人間なのか。はたまた、何か別の原因があるのか。精神が衰弱していたのか? これらの疑問を究明すべきだった。 選手に対する虐待についても考察が必須だ。ここ数十年の間にコーチの職に就いていた、“昔ながらの指導者”のなかには、加虐に見えるようなやり方をするタイプもいることはいる。そのような指導者が本当に選手を傷つけようとして行ったのか否かは、しばし意見の分かれるところだ。だからこそ、金の事例を分析し、どの範囲に該当するのかを判断しなければならなかった」 セカンドチャンスは与えるべきか否か 金は自らの立場を利用し、平気な顔で「死ね」「殺すぞ」と発言する男である。人間の尊厳や生命の重みを考えたうえでの言動だったのか否か、精神鑑定が必要だった筈だ。 それにもかかわらず、日本サッカー協会は金が持っていた指導者ライセンスを最上級のS(2024年10月からSではなく、Proと呼称)から一つ下のAに落としただけで、再生プログラムを与えている。そして、2024年2月には金にS級を再発行し、トップリーグで采配を振るえる環境に置いてしまった。 英語とスペイン語のバイリンガルで、記者・編集者として働きながら、PodcastやYouTubeでも独自の見解を発表し続けるダニエル・オレアは、筆者が金の足跡について説明すると、呆れたように肩を窄めてから語った。 「彼の行為は本当に不快です。身体的虐待や暴言は、特に監督のような立場の人間ならば、決して許されるものではありません。本来、リーダーシップのある者が就くポジションですから。 アメリカでこのようなことが起こったら、その人物がプロスポーツ界で再び働くことは非常に困難になります。例えば、BMOスタディアムで起きたフリオ・ウリアスの事件のように……」 ロスアンジェルス・ドジャースの左腕として活躍したウリアスは、2024年9月、LAFC(※米国サッカー1部リーグのロスアンジェジェルス・フットボール・クラブ)の試合後、スタディアム前で引き起こした暴行罪で逮捕された。 その後、ウリアスが家庭内暴力容疑を掛けられた折に無罪を主張すると、捜査機関は同メジャーリーガーが関与した暴力事件の映像を公開。動画には、ウリアスが妻に突進し、フェンスに押し付ける様が映っていた。ウリアスは妻に左手でパンチを繰り出した直後に、拘束されている。カリフォルニア州ハイウェイパトロールによると、この証拠は目撃者によって録画されたものだという。 オレアは説いた。 「ウリアスのメジャーリーガーとしてのキャリアは終わりました。アメリカのスポーツ界は、このような事態を深刻に受け止めます。社会のなかで模範を示すよう指導し、かつ、国民やメディアからも常々プレッシャーを受けるのがプロの世界で生きるという事です。 周囲の人々が、金にセカンドチャンスを与えようとする気持ちも理解できますが、これほど深刻で度を越した行状には、真の責任追及が必要でしょう。アビスパ福岡、日本サッカー界の罰則は不十分です。問題を消し去ってしまうことで、誤ったメッセージを送っているように見えますね」 日本サッカー界の常識は、世界のスタンダードとかけ離れている事実を受け止めねばならない。 Yahooスポーツのアルマンド・べテロも述べた。 「非常に注目すべき問題であり、もしこのようなことがアメリカで発生したら、当人が監督としての再就職するのはまず無理でしょう。とはいえ、過去に犯してしまった罪が許された事例もあります。理想は、再生教育が効果を上げることでしょうね。いわゆる<罪人>が更生している例も見られる訳ですから。 とはいえ、身体的な虐待は簡単に許されるべきではありません。この監督の実力は、一体どれほどのレベルなのかが知りたいです。彼が再び指導者として活躍できるかどうかは断言できません。ただ、現代社会とは、結果が過去の過ちを覆い隠す時代でもあります。Jリーグにとって、この男の復帰を認めることが良いイメージに繋がるとは言えませんが、チームが勝っているのであれば、それが全てです。もし同じことが再び起こった場合は、永久追放処分になるでしょうが」 7月15日現在、アビスパ福岡は、J1の20チーム中12位。クラブ幹部は、金が過去の過ちを清算したと感じているのか。監督就任が発表された今シーズン開始前、金は自らを振り返り「匿名性がある中で、被害者個人を特定して直接謝罪することはなかなか難しいというのが現状です。個人に対しての具体的な対応はできておりません」と言ってのけている。裏を返せば、自身による暴行、暴言、侮辱、脅迫などで傷を負った相手に対し、謝る気は無いとしたのだ。金の行動は、民法709条に触れているにも拘らずだ。 被害者側が金の暴行に関して刑事告訴、また不法行為に関する損害賠償請求をしていないのだから、いずれほとぼりが冷める、といった思惑が感じられる。加えて、アビスパ福岡・川森敬史会長の「間違いを乗り越える過程も地域の子どもたちの学びになる」という発言は、チームの体質を表している。 筆者は、暴力や脅迫を用いて指導をした人間は、永久追放こそ相応しいと考える。こんな甘い反省のさせ方では、抑止に繋がらない。日本のプロスポーツ界で過去に強制排除という形で社会的制裁を受けたケースは、1969年に野球界で発覚した「黒い霧事件」、1965年に中央競馬の騎手が関わっていた「山岡事件」といった暴力団が絡んだ八百長、あるいは大相撲において力士同士が白星をカネで売り買いした件が挙がる。哀しいかな、日本は暴力指導に非常に寛容な歴史を持つ。 FIFAクラブワールドカップの決勝は、日本時間7月14日の午前4時にキックオフされ、プレミアリーグの雄、チェルシーが、今季UEFAチャンピオンズリーグを制したパリ・サンジェルマンを3-0で下した。試合開始直後よりチェルシーがボールを支配し、テンポよくパスを繋いだ。レベルの高い、見応えのあるゲームだった。会場となったメットライフ・スタディアムは、8万2500人の集客が可能だ。各々のファンが、一流のサッカーを堪能した。 この舞台でプレーしたトップ選手たちがコーチから暴力を振るわれたり、「死ね」「殺すぞ」などと脅されながら育つことなどあり得ない。我が国の社会は、金明輝のような指導者を生み出さない策を真剣に検討すべきではないか。 【関連記事】『8月からサッカーのルールが変わる! どうするゴールキーパー?』では、クラブW杯から適用された新ルールについて解説する。 【こちらも読む】8月からサッカーのルールが変わる! どうするゴールキーパー?

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