20日投開票の参議院選挙を前に、「外国人」のワードを絡めた投稿が増え、関心が高まっています。「外国人犯罪が急増」「日本人だけ起訴される」といった内容もあり、データに基づいて検証しました。誤った投稿がなされる背景には何があるのでしょうか? ■SNSで増…外国人犯罪に関する投稿 高柳遼太郎・日本テレビ社会部記者(選挙戦のSNS動向分析を担当) 「X上で『参院選(参議院選挙、参議院議員選挙を含む)』と『外国人』の2つのワードを含んだ投稿は14日だけで、7万4779件でした。このところ投稿が増えていて、関心が高まっている様子がSNS上ではうかがえます」 山崎誠アナウンサー 「1日でもこれだけの数があるんですね。政府は外国人政策の司令塔となる組織を設置しましたが、石破首相からは『一部の外国人による犯罪や迷惑行為に、国民が不安を感じる状況がある』という言葉もありましたね」 高柳記者 「SNSでも、外国人犯罪に関連する投稿がこのところよく見られています。具体的には『外国人犯罪が多すぎる。急増している』『外国人はすべて不起訴』『日本人だけがしっかり起訴される』といったものが見られました」 鈴江奈々アナウンサー 「私たちも事件のニュースの中で、外国人が被告の裁判をお伝えすることもあります。すべて外国人の方が不起訴になっているというのは、さすがに違いますよね」 高柳記者 「最新の犯罪白書(刑法犯・特別法犯の処理状況)をもとに、検察庁による来日外国人の事件の起訴・不起訴の判断(2023年、永住者などを除く)を見ると、41.6%が起訴されています。そのためすべてが不起訴だというのは、間違った情報だと言えます」 「ちなみに日本人と外国人すべてを含めた全体の起訴率は、39.6%となっています」 ■在留外国人は過去最多の377万人 高柳記者 「では犯罪が多い、急増しているという投稿が正しいかどうかを調べました。まず、日本国内にどれだけ外国人がいるのでしょうか?」 山崎アナウンサー 「出入国在留管理庁のデータから確認します。日本で暮らす在留外国人の数は、コロナ禍の2020年と2021年はいったん少し減ったものの、そこからまた増加し、去年は約377万人と過去最多となりました」 「さらに旅行で日本を訪れた人などを含む外国人入国者数も去年は約3678万人と、これも過去最多になりました」 森アナウンサー 「ちょっと前まで目標3000万人と言っていたのに、あっという間にそれを超えてきました。日本テレビがあるのは東京・新橋で、隣が銀座ということもあり、本当に外国人の皆さんが多くなったなという印象がありますね」 斎藤佑樹キャスター 「そうですよね。僕自身も北海道に行ってホテルなどに泊まった時には、本当に海外の方が多いな、しかも10年前と比べても多くなったなという印象を受けますね」 ■外国人の検挙件数は全体の約8% 山崎アナウンサー 「日本国内で外国人による犯罪が実際に多かったり、急増したりしているのかどうか。多いかどうかは投稿者の主観によるところが大きいと思うので難しいところですが、見ていただきたいのは警察庁の犯罪統計です」 「殺人・窃盗・詐欺などの刑法犯と、薬物事件・入管法違反などの特別法犯の検挙件数を合わせたものです。ここで言う検挙というのは、逮捕や書類送検などを指しています」 山崎アナウンサー 「この統計から日本テレビが集計(交通関連の検挙は除く)したところ、去年の日本全体の検挙の件数は35万2493件でした。そのうち外国人の検挙件数は2万8616件で、全体における割合は約8%となりました」 瀧口麻衣アナウンサー 「この8%という数字が多いかは、それぞれの受け取り方次第でしょうか?」 高柳記者 「多いと思われる方もいらっしゃいますし、これくらいかと思われる方もいると思います」 ■2005年と去年の検挙件数を比較 高柳記者 「急増しているかどうかについては、外国人の検挙件数のグラフを見てみます。去年は一昨年よりやや増えていますが、20年前の2005年は6万207件です。それに比べると、去年の数字は2005年の半分以下になっています」 鈴江アナウンサー 「件数で見ると半分以下にということですが、全体の割合を長い期間で見てみても、それほど変わりはないと捉えていいんでしょうか?」 高柳記者 「そうですね。全体の検挙件数における外国人の検挙件数の割合は 2005年は約8%でした。増減はありますが去年も8%だったので、そこまで大きな変化はないと言えると思います」 山崎アナウンサー 「割合で変わっていないとすると、外国人だけが急増しているということになってこないわけです。そうした中では情報としては不正確なわけですが、SNSではこうした不正確な情報が、時にして注目されることもありますよね」 ■外国人に関する投稿に専門家は…? 高柳記者 「はい。外国人に関してデータに基づかずに、正しいと言えない投稿が行われていることについて、専門家にも取材をしました」 「移民や差別研究に詳しい大阪大学人間科学研究科の五十嵐彰准教授によると、そもそもSNSに限らず、日本の安全が外国人に脅かされていると思っている人については、事実とかけ離れた認識で排外的な行動をすることがあり得るそうです」 「例えば五十嵐准教授が行った実験で、過去1年に刑事事件で検挙された人のうち、何%が外国人かを日本人に尋ねました。すると実際は5%なのに、平均して『30%』と答えたということです。このように事実とは異なる認識を持ってしまっています」 「さらにメディアにおいて、外国人と犯罪が過度に結びつけられて報道されてきたことが、SNSの投稿にも影響していると指摘しています」 「また、社会意識と政治の結びつきに詳しい早稲田大学文学学術院の田辺俊介教授は、『規制』『治安対策』という面ばかりで外国人のことが語られること自体が、排外主義を高める危険があると話しています」 「それによって、日本が外国人の渡航先として選ばれなくなると、労働力不足などの道をたどると危惧しているそうです」 鈴江アナウンサー 「メディアの報じ方への指摘もありました。1つの外国人の事件について、私たちがフォーカスすると、よりそれが大きな影響を持って伝わることもあると思うので、私たちも気をつけなければいけません」 「改めて全体に占める割合を皆さんにも知っていただいて、冷静にデータを知ることも大事になりますね」 森アナウンサー 「ただ個人でこれだけのデータを集めるのは難しいでしょうから、安易に信じすぎないことを前提として持つのが必要かもしれませんね」 高柳記者 「SNSの投稿を見た時には感情的にならずに、まずは『それって本当か?』と考えることが必要だと思います」 (7月15日『news every.』より)