日本版ロシアゲートなのか。20日に投開票が迫った参院選でなんと「ロシアが選挙に干渉している」という疑惑が浮上している。「日本人ファースト」を掲げて支持を拡大する参政党が、ロシアから支援を受けているとの話にまで発展しているのだ。もちろん神谷宗幣代表はロシアとの関係を否定。とはいえ、ロシアは米大統領選にも干渉した過去があるだけに影響は無視できない。果たして——。 きっかけは情報法制研究所の上席研究員である山本一郎氏のnoteだった。15日に「参政党を支えたのはロシア製ボットによる反政府プロパガンダ」と題して、ロシアがSNSを使って日本に対して情報工作を仕掛けていると指摘。親露系SNSアカウントを使って自民党へのネガティブキャンペーンをネット上で行っていたという。ボットとは自動投稿プログラムのことだ。 山本氏は「彼らの目的はあくまで『日本政治や社会が不安定化するよう、偽情報や印象操作で国民を怒らせる』こと」だとし、今回の参院選では「参政党を使って反社会的な言動を煽っている作戦に出ているように見えます」と指摘している。つまり、何気なく使っているXなどSNSから、日本人が知らない間にロシアの工作による世論操作を受けていたかもしれないというわけだ。 山本氏のnoteを受ける形で自民党の政治家らは一斉に「専門家による調査を検討しています。米大統領選でも指摘されましたが、民主政治への重大な犯罪行為かと」(小野寺五典政調会長の15日のX)などと言い出している。また、国民民主党の玉木雄一郎代表や日本維新の会の前原誠司共同代表も山本氏のnoteの内容に危機感を示した。 一方、工作の結果として参政党が浮上しているとの内容に、参政党は反発している。神谷氏は15日にXで「参政党の勢いをとめられないと考えたのか、『参政党の躍進の裏にはロシアの工作がある』という、まさに陰謀論が出てきました。参政党が議席を伸ばした後に叩くためのネタの仕込みですね」と一蹴。「参政党は親露派ではないし、ロシア政府の応援も受けていませんからね」とロシアとの関係を否定した。 ロシアの工作は関係ないとの主張ではあるが、東京都選挙区から出馬しているさや氏がロシア系報道機関「スプートニク」の取材を受けていたことが疑惑を加速させた。スプートニクは一部でロシアの諜報機関とされており、さすがの神谷氏も「私も広報部も許可を出していません。現場と党の末端の職員が勝手にやってしまったので、その職員には厳しい処分を下しました」(15日のX)と騒動の沈静化を図った。 結局、参院選へのロシアの工作はあり得るのか。実際に山本氏のnoteで指摘された親露系アカウントは凍結されている。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「ロシアによる日本の選挙への干渉は十分ありえます。2016年の米大統領選挙でも『ロシアゲート』といってヒラリー氏ではなくトランプ氏を勝たせるためにロシアが世論工作などをしたと指摘されています」と解説した。 干渉そのものに驚きはないという。「世論工作はロシアに限らず北朝鮮も中国も日本に対してやっているでしょう。それどころか日本の政党もやっており珍しいことではないのです」(同)。過去には野党を攻撃する投稿を繰り返していたDappiというツイッターアカウント(現在の�)が自民党との親密さを指摘される騒動もあった。 「もっともロシアがどこまで本気なのかという疑問もあります。参政党はまだ日本の世論を主導できるパワーはありません。ロシアは参政党を狙ったわけではなく、どこでもよかったのでしょう。親露系アカウントに巻き込まれたのが参政党だった。参政党側も支援されたどころか、『余計なことしてくれたな』と思っているのでは?」(同) ネット上の工作だけにシッポはつかめない。「米国のロシアゲートが尻すぼみになったように今回のことも真相は分からず尻すぼみになるのではないか。SNSにおける世論操作や監視は当たり前にあること。気を付けようと言うしかない」(同) 世論工作に流されないリテラシーの養成が必要だ。