１９８６年に福井市で中学３年の女子生徒を殺害したとして殺人罪で懲役７年が確定し、服役した前川彰司さん（６０）の再審で、名古屋高裁金沢支部は１８日、１審・福井地裁の無罪判決を支持して検察側の控訴を棄却し、「再審無罪」とする判決を言い渡した。 増田啓祐裁判長は、警察が関係者供述を誘導し、検察が意図的に証拠を開示しなかったと認め、「刑事司法全体に対する信頼を揺るがしかねない」と述べた。 ◇ 過去の捜査・公判に関わった関係者は、それぞれの立場で判決を受け止めた。 １９９０年に福井地裁で前川さんに無罪判決を出した元裁判官の林正彦さん（７０）は取材に「３５年前の判断が誤りではなかったと認められ、長年の心のつかえがとれた」と安堵（あんど）した。一方で、「無罪となるべき人が非常な苦労をした。刑事司法の一端を担った身として、申し訳ない気持ちがある。救済すべき人を早期に救済できる再審制度の整備が必要だ」と述べた。 事件当時、捜査に携わった福井県警の元警察官は取材に「判決には納得できない」と不満を述べつつも、判決で捜査員が事件関係者に現金を渡したと言及されたことには「同じ警察官だった身として情けない」と恥じた。「どの冤罪（えんざい）事件にも、警察に落ち度がある。批判を受けるのは仕方ない」と話した。 １９６６年の静岡県一家４人殺害事件で再審無罪が確定した袴田巌さん（８９）の姉、ひで子さん（９２）は、前川さんの無罪判決を受け、報道陣の取材に応じ、「無罪になると思っていた。改めて良かったと思う」と笑顔を見せた。再審制度の見直しについても言及し、「この波に乗って、（制度の見直しも）実行してもらいたい」と話した。
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