鳥取、島根両県が合区となって４度目となる今回の参院選。 　合区問題に詳しい鳥取大の塩沢健一教授（４６）（地域政治学）に、問題点などを聞いた。 　——今回の参院選についての印象は。 　すべての候補者が鳥取に地盤がない。合区の選挙では投票率が低下する傾向にあるが、候補者が一方の県に固まることで、もう一方の県の投票率低下が顕著になる恐れがある。実際に２０１９年の徳島・高知選挙区では、高知に地盤を置く候補者の対決となり、徳島の投票率は３８・５９％と、全国で唯一の３０％台となった。今回の参院選でも鳥取の投票率が低下することは十分考えられる。 　——合区による候補者や陣営側に生じる弊害は。 　県単位の選挙より、選挙区域が拡大するが、同じ条件で選挙活動する必要があり、負担がかかる。地盤のない県でも浸透を図る必要があるので、難しい面がある。候補者が地元の有権者とコミュニケーションを取る機会もつくりにくい。 　選挙区が両県をまたぐため、選挙の構図が固まる段階で、自民党は県連間の調整も強いられた。野党も含め、県単位の選挙では生じない複雑な過程が見られた。 　——有権者側から見た問題点は。 　候補者の時間が限られ、おのずと人が集まりやすい場所での選挙活動を選ぶ傾向が強くなるため、有権者は候補者の政見に触れる機会が限定的になる。鳥取や島根は人口が少ない中山間地を抱え、候補者が来ないという状況も生まれる可能性が高まる。関心が低下する要因になりかねない。 　地元ではない候補者が出ると、自分たちの地域の課題を国政で解決してくれるのか、と期待が持てない人もいるかもしれない。 　——合区解消に向けて。 　有権者は限られた情報から自分の考えに近い候補者を選ぶ。選挙区では自分の県の代表を選べないかもしれないが、比例選では国政に代表を送り込んで意思表示をする必要がある。合区選出の国会議員は合区解消という役割を担っていることを自覚して道筋を示すことが求められる。（聞き手・山内浩平）