トヨタ博物館の至宝 34選(前編) 黎明期を駆けた名車

世界各地から集められたコレクション トヨタ博物館で保存されているのは、単にトヨタの旧車だけではない……。 【画像】世界を驚かせた水素燃料電池車【トヨタ・ミライを詳しく見る】 全28枚 東京から新幹線で100分、名古屋市の郊外にあるこの博物館は、自動車の歴史と文化を称える施設だ。 トヨタ博物館の注目展示を紹介する。 欧州、米国、日本の自動車が、黎明期から持続可能な未来の探求に至るまで、さまざまな時代のアイデアや技術の変遷を示すタイムラインに沿って展示されている。 2階建ての館内には、約150台の自動車が展示されており、最近、おもちゃのクルマ、当時のポスター、パンフレットなど、多様な資料を展示する素晴らしい文化ギャラリーも追加された。今回は、そんなトヨタ博物館の見どころとなる展示をいくつかご紹介しよう。 (翻訳者注:展示内容は取材時のものです。現在の展示とは異なる場合があります。) トヨダAA型(1936年) 1936年のAA型は、トヨタの原点ともいえるクルマだ。このクルマが登場するまでは、トヨタ(正確には豊田自動織機製作所)は自動織機を製造していた。創業者である豊田喜一郎(1894-1952)の指揮の下、当時の米国の自動車を参考にし、デソート・エアフローのエアロデザインを彷彿とさせるボディを採用。3.4LのOHV直列6気筒エンジンを搭載した。 この車両はレプリカで、現存する設計図から完全にリバースエンジニアリングして再現したものだ。オリジナル車はオランダにあるロウマン博物館に1台だけ残っているが、劣化が著しい。 トヨダAA型(1936年) パナール・エ・ルヴァッソール・タイプB2(1899年) 自動車黎明期のギャラリーには、1899年に製造されたパナール・エ・ルヴァッソール ・タイプB2が展示されている。これは、フロントエンジン、リアドライブのレイアウトを採用した最初の乗用車だ。 パナール・エ・ルヴァッソールは4気筒エンジンとステアリングホイールも導入し、1894年にパリからルーアンまでの世界初の自動車レースに出場した。 パナール・エ・ルヴァッソール・タイプB2(1899年) スタンレー・スチーマーE2(1909年) このギャラリーには、1909年のスタンレー・スチーマーE2も展示されている。米マサチューセッツ州出身の双子の兄弟、フリーランとフランシス・スタンレーは、写真乾板を製造していたが、コダック社に事業を売却した後、蒸気自動車事業に参入した。 スタンレー・スチーマーは1906年に時速127マイル(約204km/h)の陸上速度記録を樹立したが、急速に進歩する内燃機関自動車に押され、スタンレー社は1924年に倒産した。 スタンレー・スチーマーE2(1909年) キャデラック・モデル30(1912年) 1912年のキャデラック・モデル30も革新的な1台で、高性能な電気スターターモーターと電気ヘッドランプを標準装備した最初のクルマだ。デルコ社製の電気系統により、始動用に24V、照明用に6Vの電力が供給された。 キャデラック・モデル30(1912年) イスパノ・スイザ32CV H6b(1928年) イスパノ・スイザは高級車製造で知られたメーカーで、1928年の32CV H6bは、航空機技術を応用した四輪サーボブレーキと、オーバーヘッドカムの6.6Lオールアルミエンジンなどを搭載。当時世界最高の自動車の1つと評された。 イスパノ・スイザ32CV H6b(1928年) ブガッティ・タイプ35B(1927年) 戦前のグランプリカーの中で最も象徴的なクルマの1つであるブガッティ・タイプ35Bは、最高出力138psという当時としては非常に強力な2.3L 4気筒スーパーチャージャー付きエンジンを搭載し、驚異的なスピードを誇った。 この車両はフレンチブルー、後ろのベントレーはブリティッシュ・レーシンググリーンで、20世紀初頭に開催されたゴードン・ベネット・カップのカラーを彷彿とさせる、それぞれの国の国旗の色だ。 ブガッティ・タイプ35B(1927年) 筑波号(1935年) 1935年から3年間に130台しか生産されなかった筑波号は、現在では非常に希少なクルマだ。外観はオースチン・セブンとよく似ている。737ccの直列4気筒エンジンを搭載した前輪駆動車で、東京自動車製造が生産した。車名は、関東地方にある筑波山にちなんだもの。 筑波号(1935年) ダットサン11型フェートン(1932年) 日本で最初期に生産された自動車の1つが、1932年のダットサン11型フェートンだ。当初は創業者たちのイニシャルからダット(DAT、脱兎)という名前で発売されていたが、やがてその息子という意味でダットサンというブランドが誕生した。 ダットサンは1934年に日産に買収され、50年以上にわたりサブブランドとして活躍したが、1986年に廃止された。その後、2013年に低価格ブランドとして復活したものの、2023年に再び閉鎖となった。 ダットサン11型フェートン(1932年) ランチア・アストゥーラ(1936年) イタリアのコーチビルダー、ピニンファリーナが設計し、1931年のパリ・モーターショーで初公開されたランチア・アストゥーラ。ラムダモデルの後継車として登場したカブリオレだ。 2972ccのOHC V8エンジンを搭載し、戦前のランチアの中でも特に希少なモデルの1つで、ペブルビーチとヴィラ・デステの両コンクールで最高賞を受賞した。 ランチア・アストゥーラ(1936年) コード812(1937年) 注目を集めることを唯一の目的として設計されたコード812は、まさに異彩を放つ存在だった。非常に革新的な設計で、前輪駆動、リトラクタブルヘッドライト、スーパーチャージャー付きV8エンジン、バキュームギアシフトなどを特徴としていた。 しかし、商業的に大きな利益をもたらすことはなく、コード社は1937年末に倒産した。 コード812(1937年) パッカード・トゥエルブ(1939年) 米国版ロールスロイスとも評される、デトロイトを拠点とするパッカード社は、洗練されたV12エンジンと卓越した製造品質を誇る高級車を生産していた。実際、トゥエルブは、第32代合衆国大統領フランクリン・D・ルーズベルトが愛用したクルマでもある。この1939年式のトゥエルブは、パレードで大統領が乗ったもので、装甲板と防弾ガラスが装備されている。 パッカード・トゥエルブ(1939年) チシタリア202(1947年) ピニンファリーナによる象徴的で影響力のあるスタイリングを備えた202は、その革新性と卓越した美しさから、ニューヨーク近代美術館の展示品にも選ばれている。この1947年式のチシタリア202は、1948年のミッレミリアに参加した。 チシタリア202(1947年) タッカー48 “トーピード” (1948年) 非常に革新的で安全性に重点を置いた48は、ヘリコプター用の5.5L水平対向6気筒エンジンを後部に搭載し、中央にステアリング連動ヘッドライトを装備していた。しかし、さまざまなスキャンダルでタッカー社が倒産し、生産は51台にとどまった。現存する車両は、現在非常に貴重な存在となっている。 タッカー48 “トーピード” (1948年) トヨペットSA型(1951年) 一般公募で決定された『トヨペット』の名を持つ、トヨタの小型乗用車。フォルクスワーゲン・ビートルを彷彿とさせるスタイリング、画期的な四輪独立サスペンション、コラムシフトなどを採用した。 トヨペットSA型(1951年) トヨペット・クラウンRS(1955年) 初代トヨペット・クラウンRSは海外からの技術援助を受けずに国内製造され、自動車に対する日本の自信を高めた。当時の日本は、空襲によって多くの工場が破壊された戦禍から徐々に復興の途上にあった。 トヨペット・クラウンRS(1955年) トヨペット・クラウンRS(1955年) - 続き 観音様を祀る仏教寺院の扉から着想を得た逆開きのリアサイドドアは、広い開口部が特徴だった。このドアは「観音開きドア」と表現されている。 トヨペット・クラウンRS(1955年) - 続き

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