【ワシントン=池田慶太、淵上隆悠】米国の第2次トランプ政権が今年1月に発足してから20日で半年を迎える。 上下両院の過半数を共和党が占める権力基盤の強さを背景に、トランプ大統領は政権公約を次々実現させている。外交面では評価が分かれており、来年の中間選挙に向けて不安要素も指摘され始めている。 共和党の「トランプ党」化は顕著 「今日、ある人から、我々は約束したより多くの約束を果たしたと言われた。だが、実際は『はるかに多くの約束』を果たしたと思う」 トランプ氏は18日、議会上院の共和党議員をホワイトハウスに招いた夕食会でこう自賛した。実績として挙げたのが、大規模減税の恒久化を柱とする法案だ。 トランプ氏が今月、署名して成立させたもので、飲食店従業員らが受け取るチップや残業手当の税額控除など国内に関する2期目の公約の大半が盛り込まれた。 トランプ氏に目立つのは「公約最優先」とも呼べる姿勢だ。大統領選で有権者の不安を捉えた不法移民対策が典型で、政府が所有する個人情報から不法移民の居場所を突き止め、法執行機関が身柄を次々拘束している。殺人などを犯した不法移民はアフリカなどの第三国に送りつけている。 政権発足後、南西部国境の不法越境者は1か月当たり1万人前後にとどまり、30万人を超えることのあったバイデン前政権当時と比べて激減。大統領再選を支えた岩盤支持層「MAGA」(「米国を再び偉大に」の略)からは喝采を浴びる。 与党・共和党の「トランプ党化」も顕著だ。昨年の議会選挙で共和党が上下両院の過半数を占めて以降、法案は相次ぎ通過している。一握りの反対意見はトランプ氏が説得や脅しで抑え込み、政権は「連戦連勝」(米FOXニュース)だ。 国際社会を翻弄(ほんろう)する関税交渉は、一定の成果も上げている。4月に導入した「相互関税」の一律10%分や品目別の追加関税により、米国の関税収入は急増し、6月は266億ドル(約3兆9000億円)と例年の4倍になった。このまま続けば法人税に次ぐ「第2の国庫財源」になると予想される。 外交や「闇の政府」など不安要素も 一方、計算通りに進んでいないのが、ロシアのウクライナ侵略を巡る対応だ。大統領選で豪語した「24時間以内の紛争の解決」は果たせず、解決目標の時期は先送りされ続けている。得意の「ディール(取引)」でプーチン露大統領との直接対話で和平を模索したが、交渉は行き詰まっている。パレスチナ自治区ガザでの停戦を含む中東外交も展望を描き切れていない。 支持基盤には、不安要素もある。トランプ氏が未成年者の人身売買で起訴され勾留中に死亡した米実業家ジェフリー・エプスタイン氏の「顧客リスト」を明らかにすると公約に掲げながら、一転して情報公開に後ろ向きな姿勢を見せたことで反発を受けている。 岩盤支持層の一部は、エリートと官僚機構が結託した「ディープステート(闇の政府)」の腐敗ぶりが明らかになると期待した。政権の根幹は揺らいでいないが、トランプ氏が守勢に回る場面が目立っている。 国内評価は二分も焦りなし…外国からの信頼は急低下 トランプ米大統領の国内での評価は二分している。 米紙ニューヨーク・タイムズが集計した世論調査の平均によると、トランプ氏の支持率は44%で、不支持率の53%を9ポイント下回った。今年1月の返り咲き直後は支持52%、不支持43%で、ほぼ逆転した。バイデン前大統領は同じ期間で、支持率が不支持率を12ポイント上回っており、トランプ氏の不人気が目立っている。 ただ、トランプ氏に焦りはなさそうだ。第1次政権ではこの時期、不支持率が支持率を16ポイント上回っており、状況はさらに悪かった。米CNNの今月の世論調査によると、民主党の支持率は28%で、1992年以降で最低だった3月の29%をさらに1ポイント下回った。民主党の低迷もトランプ氏の安心材料となっているようだ。 一方、海外での米国に対する信頼は、急速に低下している。同盟国に対しても関税などで威圧を強めるトランプ氏への反発が強い。 米調査機関ピュー・リサーチ・センターは6月、調査した24か国のうち21か国で米国の好感度が昨年より下がるか、横ばいだったとする調査結果を公表した。 不法移民対策などでトランプ氏から圧力を受けるメキシコでは米国に好感を持つ人は29%で、昨年の61%から32ポイント下がった。米国の「51番目の州」にするなどと繰り返し挑発されたカナダでも、好感度は54%から20ポイント下がって34%となった。厳しい関税交渉を強いられている日本も、70%から15ポイント減り55%だった。一方、トランプ政権が擁護するイスラエルでは6ポイント上昇した。