「球種がバレている?」…“前半戦7勝”の好成績でもオリオールズ・菅野智之はトレード要員か カギは「きれい過ぎる直球」と「MLB式防御率」

「自信がない感じ」  現地時間7月21日、オリオールズの菅野智之(35)がガーディアンズ戦に先発し、4回途中で降板となった。初回のマウンドでいきなり3ランを喰らい、イニングを投了させるまで27球を投じる大乱調だった。 【写真】癖もなく、あまりにも綺麗過ぎるフォーシームを投げる菅野のピッチングフォーム  前回登板のメッツ戦(7月10日)では6回4安打3失点と好投し、今季7勝目を挙げている。この対照的な結果を受けて、米メディアは「球種がバレているんじゃないのか?」と菅野に質問した。菅野はちょっと考えてから、こう答えた。 「そうですね、けっこう気持ち良くスイングされてしまっている感じがするので、そういうのも含めて、次の登板までピッチングコーチとしっかり話し合っていきます」 まさか、球種がバレている?  オリオールズのトニー・マンソリーノ監督代行(42)も同様の質問を受けたが、こちらも暗に“球種バレ”を認めるようなコメントを返している。 「1イニング目から自分に確信が持てないようにも見えたし、自信がないような感じだった」  今季のオリオールズはア・リーグ東地区の最下位から抜け出せず、苦しい状況が続いている。菅野でガーディアンズ戦を落とした時点での勝敗表は44勝55敗。首位・ブルージェイズとのゲーム差は16.5まで広がり、メジャーリーグ公式データサイト「Baseball-Reference.com」によれば「0.1% to make postseason」。つまり、ポストシーズンマッチ進出の可能性は0.1%以下。来季以降を見据えた再建策もいくつか始まっており、有望な若手を得るため、35歳の菅野をトレード放出するかどうかも一つの注目ポイントになっていた。 「同日の菅野は口ヒゲを蓄えていました。最近では移動の際も白いシャツに黒のパンツで着飾るなど、巨人時代にはなかったオシャレな一面も見せています。トレードの噂についてマイクを向けられることもあり、その都度、『このチームで頑張りたい、貢献したい』『このまま終わるチームではない』と答えていました。メジャーリーグには自己主張の強い選手も多いんですが、菅野のチーム優先の言動に地元メディアも好感を持っていました」(米国人ライター)  21日のガーディアンズ戦では降板が告げられるまでの3回3分の2を投げて、90球を要した。11個のアウトカウントを取るまでこんなに多くの球数を投じたのは、巨人時代に遡っても、不振だった23年シーズンを除けばほとんどなかったはずだ。“球種バレ”の仮説が本当であれば、同日は菅野の自信と「交換要員としての価値」を一気に落としてしまったことになる。 きれいすぎる直球 「前回登板が7月10日のメッツ戦。オールスターゲームを挟み、10日以上の間隔が空いてしまいました。この間、優勝争いをしているチームは獲得可能な下位チームの主力選手の調査をします。映像での再チェック、データの照会などをし、戦力になるのかどうかを検証します。7月末のトレード期限までの間、事態が変わる可能性も否定できませんが、球宴休み中の調査結果では菅野に関する評価は高くなかったと聞いています」(前出・同)  高い評価を得られなかった理由はいくつかある。  年齢はともかく、まず、クセのない投球フォームとフォーシーム(直球)の回転が“綺麗過ぎる”こと。「クセのない分、球種の見極めがされやすい」ということで、これはガーディアンズ戦での球種バレに通じるものもありそうだ。また、上位チームの編成スタッフが菅野を獲るか否かの際に躊躇ったとされるデータが、フォーシームの空振り率が10%前後と低いこと。そして、「xERA」の数値だ。  xERAとは、一般的な防御率の数字より投手の能力を客観的に見るため、「打たれた打球の質」「奪三振数」「与四球」などの要素を検討したMLB式の防御率のこと。  菅野の通常防御率は4.54。このxERAに直すと、6点台後半から7点台前半になる。WHIP(1回あたりの与四球と被安打)は1.35と好成績だが、xERAが示す限りでは「菅野のボールはバットの芯で捉えられている」「ヒット性の当たりが結果的に野手の守備範囲に飛んだだけ」ということになる。つまり、菅野は大量失点される危険性を秘めた先発投手でもあるわけだ。  xERAの数値が悪いのは、フォーシームの球速に原因がある。MLB全体の平均球速が94マイル(約151.2キロ)なのに対し、菅野は91.9マイル(約147.8キロ)だ。 「優勝争いをしているチームの大半は、ブルペン陣の層を厚くすることをいちばんに考えます。オリオールズの投手のなかで他球団が注視しているのは、クローザーに返り咲いたフェリックス・バティスタ(30)です。23年にトミー・ジョン手術を受け、今季が本格的な復帰イヤー。序盤戦は打ち込まれたものの、フォーシーム、スプリットともに徐々に本来のキレを取り戻していきました」(現地記者)  もっとも、こんな見方もされている。  先発投手の頭数が足りないチームがある中で、菅野は大量失点の危険性もあるが、ここまで19試合に先発し、103イニングを投げている。平均して5イニング以上を投げ、ローテーションもしっかり守ってきたので「実年齢よりも肉体が若い」とも解釈されている。これらの長所を指して、「ローテーションを守ってくれるだけでも、先発、救援陣を休ませることができる」という判断をされているそうだ。 残留は得策か? 「先発投手の負傷者が続出したドジャース、先発ローテーションの再整備が迫られているパドレス、タイガース、レッドソックスがトレードリストに菅野の名前を残しているようです。ローテーションを守ってくれるだけでも、定期的にブルペンデーを設けて凌いでいるドジャースにとっては有り難いですし、昨年オフ、パドレスの編成トップであるA.J.プレラー氏が菅野獲得に動こうとしました。しかし、パドレスは前オーナーの家族と現スタッフの内輪揉めが決着していないので、プレラー氏が動きたくても動けないようですが」(前出・同)  先発投手の補強で本命を逃がしたチームが菅野獲得で“妥協する”かもしれない。しかし、ドジャースは菅野がKO負けした21日、ツインズに勝利したものの、クローザーのタナー・スコット(31)が前腕部に異変を訴えた。緊急降板するハプニングに見舞われ、トレードでは先発投手よりもリリーバー獲得を優先する可能性も出てきた。 「メジャーリーグのローテーション投手はxERAが高くても4点台です」(前出・米国人ライター)  不本意な敗戦を喫したガーディアンズ戦、菅野は自身の今後についても質問をされている。地元中継局MASNは単刀直入に「あなたの名前がトレード候補として取り沙汰されています。他球団で投げるチャンスに前向きですか」と聞いた。  ここでも菅野はオリオールズでシーズンを全うしたい気持ちを伝えたが、契約は今季限りの1年だ。オフのフリーエージェント交渉が始まれば、他球団の評価はもっと厳しくなる。来年以降もメジャーリーグでやっていくつもりなら、残留希望は得策ではないのだが。 デイリー新潮編集部

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