【前編記事はこちら】『高校時代の深夜、「行為」にフケっていた現場を母に目撃され…クリアファイルで性的不能になった理由とは』 「妻だけED」 こんにちは。ベテラン看護師のみさき、41歳です。 性にまつわる医療にやりがいを感じ、キャリアのほとんどを泌尿器科と不妊治療クリニックに費やしてきましたが、下半身現役世代にとって、勃起不全は悩ましい問題のようです。先日も、不妊治療クリニックで、奥様に連れられてやってきた30代の男性患者がいました。 「夫のあれが元気ないんです。なかなか起立してくれなくて……。何か異常はあるか調べたいのですが……」 夫婦の目的は子作りだったため、御主人を採精室に誘導し、精液を採取してもらうことになったのですが、採精室は「個室ビデオ店」のような場所です。1畳ほどの密室にはリクライニングチェアと、エッチなDVD、ティッシュが常備されています。 私は「ED気味のようなので、採取には時間がかかるかな」とか思いながら、精液採取の仕方を説明していると、御主人はこの異空間で女性看護師に精液採取の方法を教えて貰っているシチュエーション自体に反応したのか、下腹部がモコモコと大きくなっていました。これ、よくあるパターンです。 いわゆる「妻だけED」。 フィニッシュのスイッチ 先に男性器の構造についてお話しすると、そもそも男性は「勃起」と「射精」を同じ仲間、同じような生理現象と考えている方がほとんどですが、実はまったくの別物なのです。 勃起は「副交感神経」が優位になって起こる現象です。つまり心身ともに安定した状態、いわゆる“リラックスモード” のときに、神経と血流が協力して陰茎に血液がどっと流れ込むことで、仁王立ちの状態になります。 一方の射精は真逆で、「交感神経」が優位な“戦闘モード”のときに起こります。筋肉を緊張させて一気にエネルギーを放出する、言うなれば「フィニッシュのスイッチ」なのです。 このように勃起と射精は異なる自律神経のスイッチで操作されているため、例えば「勃起はするけど射精できない」、あるいは「射精はできるけど勃たない」といったアンバランスな状態が起こり得るのです。 「心因性ED」はいつでも起きる そして話を戻します。 「妻では勃たないけれど、他の女性なら問題ない」という現象。これは妻との行為に飽きたというより、“心因性ED(心理的な要因での勃起不全)”である可能性が高いです。妻との関係性、過去の経験、家庭内のストレスなどが「副交感神経」を乱し、リラックスモードに入れない状態を引き起こしていることが主な原因と考えられます。 20年以上、妻では勃たないというある年配の患者さんは、若い頃に奥さんにコスプレをお願いしたら、 「はあ? じゃあ、あんたもスーツにネクタイして革靴はいてきなさいよ」 と冷たくあしらわれ、長い間セックスレスに陥ったと嘆いていらっしゃいました。この経験があるため、妻とそういう雰囲気になっても「副交感神経」が優位にならず、勃起するためのスイッチが入らなくなっていました。 リラックしたときに勃起する現象は手術する時にもよくわかります。手術前の患者の下半身はほとんどの場合、しょんぼりしています。これから何をされるかわからない恐怖に対して身構えている状態で、まさに「まな板の上の鯉」。睾丸もペニスを支えながら静かに鎮座しています。 ところが、手術が無事に終わると、嵐が過ぎ去って喜んでいるかのようにペニスはむくむくと上昇、睾丸もゆっくりと動き始めます。術後になんだか勃起してしまったという話が多いのはそれが理由です。緊張の場面では勃起しにくく、リラックスすると元気になるというメカニズムがわかりやすいシーンかと思います。 かつて日ハムの新庄剛志監督は、「飛行機の離陸時にペニスも勃起しながら上昇する」とおっしゃっていましたが、移動時は完全にリラックスした状態にできるプロの鑑のような選手だったと言えそうです。だったら逆に、打席に入って会心の当たりが出た時にはどういう状況だったか知りたくなるエピソードです。 もっと読みたい方はこちら⇒『「パイプカットしたのに避妊失敗」…精管を切っても避妊できない「3ヵ月の落とし穴」とは』 【つづきを読む】「パイプカットしたのに避妊失敗」…精管を切っても避妊できない「3ヵ月の落とし穴」とは