みなさんは最近、書店で本を買ったことはあるでしょうか? ネット販売や電子書籍の普及で苦境に立つ書店に、変化の兆しが見え始めています。 工夫を凝らして逆境を乗り越える書店を取材しました。 音楽イベントに1台のバス…移動式書店! 人気アーティストが出演した北海道千歳市の音楽イベント。 およそ1万2000人が熱狂しました。 その会場の一角にとまっている1台のバス。 キッチンカーかと思いきや、実は移動式の書店なんです。 (父親)「絵本、どれがいい?」 (子ども)「恐竜さん好き、これ!好き!」 絵本を中心に揃える移動書店は、2024年4月に開店したばかり。 土日を中心に道内各地のイベントに出店しています。 『店内のワクワク感』 幼稚園バスを改装した店内はまるで秘密基地。 子どもも大人も宝さがしをするかのように絵本を手に取ります。 (絵本を買った人)「よく絵本を見に書店に行くんです。見たことない本がいっぱいあります。浦島太郎なんですけど、全然浦島太郎らしくなくて、話は浦島太郎なんですけどね、斬新じゃないですか」 (鷲見記者)「音楽フェスですよね?」 (絵本を買った人)「そうですそうです。ORANGE RANGEを見に来たんですけど」 登別を拠点に道内をまわる店主の加藤順也さん。 なぜ移動書店を始めようと思ったのでしょうか? (THE BOOK STAND 加藤順也さん)「『本屋がないマチは文化がないマチ』みたいな言葉があって、それがすごく気になっていて、文化がないんだったら本屋が行けばいいんじゃないかと」 自ら出向いて本との出会いを提供する加藤さん。 この日は音楽イベントにも関わらず、50冊の本が売れました。 (THE BOOK STAND 加藤順也さん)「どこで買ったか、どういうシチュエーションで買ったかというのがすごく記憶に残るので、バスで絵本屋さんがあったら記憶に残るし。だから子どもたちはいいんじゃないかなということです」 『本が売れなくてもいい』 新たなスタイルの書店も登場 札幌の奥座敷・定山渓にも新たなスタイルの書店ができました。 温泉街のホテルの中にある、その名も「風呂屋書店」。 旅や温泉に関する書籍が多く並びます。 (宿泊客)「すごい良い雰囲気ですよね。お酒と温泉と。最高ですね」 (鷲見記者)「ホテルの中にある書店だからこそ、空間そのものにこだわって作られています」 ホテルの滞在中にゆったりと新しい本に出合ってほしいと、ソファ席が設けられています。 宿泊客のアンケートを見てみるとー (アンケート)「書店がとてもすてきな場所になっていました」 (アンケート)「ここが目的でした。すごくよかったです」 (定山渓第一寶亭留翠山亭 大島彩乃さん)「われわれは宿泊のお客様の満足度が上がればいいなというのが一番の目的だった。旅館と書店という組み合わせもそうですし、最近だとカフェと書店という組み合わせもありますが、いろんな良い時間を過ごすということに携わっている業種なんかは本との親和性も高いのかなと思います」 温泉に浸かってゆったりと本を読む。 贅沢な時間と空間を楽しむことができます。 全国の書店数は減少の一途をたどっていて、この2年だけで1000以上の書店が閉店しました。 活字離れや電子書籍の普及が大きな理由です。 だからこそ、工夫を凝らしてピンチをチャンスに! 『充実した児童書』『本だけではない書店』黒字続く大型書店も! 大型書店のコーチャンフォーはコロナ禍でも業績を伸ばし、ここ数年は黒字経営が続いています。 伸び悩む雑誌などと異なり、安定した売り上げを誇るのが児童書です。 (コーチャンフォー新川通り店 佐藤英俊さん)「2019年まではここからそっち側だけだったんですけど、徐々に広がりまして今は奥まで児童書になっています」 本に親しむ子どもが増えれば、大人になってからも集客が期待できます。 (客)「広くて品揃えがあるので選びやすい。ここに来ると大体のものが揃う。誕生日プレゼントとかも買えるので」 書店には、道内最大規模となる1300台のカプセルトイや食品マルシェ、レストランなどが併設され、いろいろな楽しみ方ができます。 (コーチャンフォー新川通り店 佐藤英俊さん)「どの売り場に行っても魅力的で、お客様も1日いても飽きないんじゃないかというような自負しております。コーチャンフォーのコンセプトの親子3世代すべてのお客様に喜んでいただける売り場、お店作りというのはこれからもずっと変えずにいきたいと思っております」 出版業界に詳しい専門家は、書店に求められるものが変化していると指摘します。 (上智大学文学部 柴野京子教授)「わざわざ本屋に行くことは、そこで何かを「しよう」と。本を並んでいるのを見ようとか、ゆったりとした時間を過ごしたいとか、いろいろなことをしに行っているので、意味合いが変わってきている。書店の価値をどう作っていけばいいかは各書店で考えればいい時代に来たと前向きに捉えることはできると思います」 移動書店を営む加藤順也さんです。 店に並べるのは「好奇心を刺激する」絵本と決めています。 (客)「ジュマンジ!?元ネタ絵本なんですか!?へー!ほんとだ!元ネタは絵本なんだ。へ~」 (子ども)「全部面白そう。全然見たことない本」 (父親)「そうだよね。本屋さんで見たことない」 (子ども)「星の王子様は見たことある」 (父親)「それはそうだよ」 加藤さんは経営の難しさを感じながらも、書店の未来は明るいと信じています。 (THE BOOK STAND 加藤順也さん)「今すごく面白い書店がいっぱい出来ていて、その店主さんの色が出ている。(書店が)だいぶなくなってしまって、そこからなので、可能性しかないと思っていますね」 苦境が続く書店業界。 それでも、工夫を凝らして新たな価値を生み出す書店が希望の光をもたらすかもしれません。