トヨタ、モータースポーツの現場で鍛え続けるGRヤリス?さらなる進化を目指して トヨタは、「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」の理念のもと、「GRヤリス」を様々なモータースポーツの過酷な環境で継続的に鍛え、その知見を市販車へフィードバックし続けています。 今回、7月26日・27日にスーパー耐久オートポリス大会が開催され、「GRヤリスDAT(32号車・104号車)」が出走し、それぞれ異なるアプローチで「もっといいクルマづくり」に挑戦します。 GRヤリスはまだまだ進化!? 異なる仕様で鍛える意味とは(撮影:雪岡 直樹) 【画像】超かっこいい! 「進化するGRヤリス」の画像を見る!(10枚) ●GRヤリス:モータースポーツの現場で進化し続ける歴史 GRヤリスは2020年9月の発売と同時に、スーパー耐久(S耐)富士24時間レースに参戦するという、異例の船出を迎えました。 トヨタにとって市販車の発売はあくまでも「出発点」であり、モータースポーツの厳しい環境下で「走る・壊す・直す」というサイクルを繰り返すことで、クルマをさらに進化させる取り組みがここから始まったのです。 このモータースポーツでの経験を活かした進化を重ねた結果、GRヤリスは累計販売台数が5万台を超える人気モデルとなりました。 そして2023年9月からは、さらに進化したGRヤリスDAT(Direct Automatic Transmission)での参戦を開始。 2024年1月には、S耐で培った技術を投入した市販版GRヤリスDATが発売されています。 トヨタでは、S耐参戦の意義を「極限の状況で人・クルマを鍛え、モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりとカーボンニュートラルに向けた新技術の開発を、仲間とともに加速すること」と位置づけています。 これまでに延べ1,000人を超えるトヨタ社員がS耐の現場でのクルマづくりに参画してきたといいます。 ●GRヤリスDAT:2種類の32号車と104号車に込められた異なるアプローチ 「もっといいクルマづくり」に向けて、今回のS耐オートポリス大会に出走するGRヤリスDAT(32号車・104号車)は、同じモデルながら異なる特性を持たせています。 TOYOTA GAZOO Racingの江口氏は「32号車と104号車、同じGRヤリスDATではありますが、もっといいクルマづくりのためそれぞれ環境・道に合わせたアプローチとなっておりまして、この両号車の違いに注目していただきたいと思っています」とコメントしています。 特に32号車は、S耐で鍛えたGRヤリスを、2025年6月にニュルブルクリンク24時間レースに参戦させ完走。その経験を活かした同等仕様のセッティングで今回のS耐に臨みます。 「GRヤリスDATですが、このS耐で鍛えてまいりまして、そのクルマを先月6月に、ニュルブルクリンクで走らせて走行することができました。 起伏の激しい世界でも最も難しいと言われるコースで24時間走行することができまして、今回その仕様に合わせた同等の仕様のセッティングで、このS耐オートポリスに参戦します。 日本の暑い高温多湿な環境下で、どういった知見が得られるか、そういったことを市販車へのフィードバックに向けて取り組んでまいりたいと考えています」(江口氏) この2台のGRヤリスDATの主な違いは「道(サーキット)」に合わせた車両特性にあります。 日本の比較的フラットな高μ路面のサーキットと、うねりや起伏が激しく、ギャップの大きい縁石を持つニュルブルクリンクという異なる特性に対応するため、サスペンションセッティングなどに違いを持たせているのです。 32号車は路面追従性を重視した運動性能を追求し、アンチロールバー(ARB)のロール剛性を下げることで横揺れの吸収力を高め、車高を上げスプリングのストロークを確保することで縦揺れの吸収力を高めています。 また、32号車にはニュルブルクリンクでの経験から得た遮熱対策も施されています。 具体的には、「外気導入効率向上のためのダクトと遮熱加工」、「車内高温対策としてルーフに白カラーリング」、「車外排出用ファンの追加」などが挙げられます。 ニュルブルクリンクから帰り、スーパー耐久オートポリスを走るGRヤリス(撮影:雪岡 直樹) ●104号車:GRヤリスDAT改良版の市販に向けた開発 104号車は、エンジントルクの向上など、GRヤリス改良版の市販化に向けた開発アイテムの向上を図ることを目的としています。 2023年から引き続きDAT制御の向上に取り組むとともに、2025年では以下の改良を加えています。 ーーー 1. エンジントルクの向上 2. フロントスポイラー、アンダーカバー、リアスポイラーによる空力・部品冷却性能向上 3. フロントウインドシールドガラスの軽量化 4. DAT用の新開発LSD(リミテッド・スリップ・デフ) 5. 市販を想定したサスペンション開発 ーーー これらの改良を通じて、将来のGRヤリスDAT改良版の市販に向けた開発を進めています。 ●モータースポーツからのフィードバックで進化した市販車 S耐をはじめとするモータースポーツでの経験は、市販車の進化に大きく貢献しています。 今後、2025年秋に予定されている「GRヤリスエアロパフォーマンスパッケージ」では、S耐で学んだ高次元の空力バランスを実現するフロントリップスポイラーや、S耐車両の安全燃料タンクの下部をフラット形状にするアイデアを採用した燃料タンクアンダーカバーなど、レース経験から得た知見が活かされています。 トヨタの豊田章男会長もモリゾウとしてGRヤリスを鍛えてきた(撮影:雪岡 直樹) ●モータースポーツを通じて進化し続けるGRヤリス トヨタは「クルマは市販されてからが本当の意味での進化の始まり」という考え方のもと、モータースポーツという極限の環境でクルマを鍛え続けています。 S耐とニュルブルクリンクという異なる特性を持つレースに参戦することで、様々な環境下での知見を獲得し、それを市販車の進化に活かすという好循環を生み出しているのです。 今回のS耐オートポリス大会では、高温多湿という日本特有の環境下での走行を通じて、ニュルブルクリンクとはまた異なる知見が得られることが期待されます。