ブラジルで原爆の悲惨さ伝える、焼失した平和資料館再建へ…移民の被爆者が語り部として活動

 長崎の原爆投下で被爆した後、南米ブラジルに渡った移民たちが開設した「平和資料館」の再建事業が進んでいる。  原爆の悲惨さを紹介してきた同館は9年前に焼失したが、日系移民と地元自治体が協力し、戦後80年の節目となる今年中の完成を目指している。(ブラジル南部フレイロジェリオ市 大月美佳、写真も)  平和資料館は、フレイロジェリオ市に住む小川渡さん(96)ら被爆者3人と家族らでつくる「被爆者と子孫の会」が、ブラジル政府などの支援を受けて2010年に開設した。  渡さんの義理の兄で、長崎で被爆後にブラジルに移り住んで梨園を営んでいた和己さん(2012年に83歳で死去)が「戦争の不幸を繰り返してはいけない」と考え、自身の農園の休耕地に平屋(約420平方メートル)を建て、原爆で背中にやけどを負った子供の写真などのパネル80点を長崎市から譲り受けて展示した。その一帯は「平和の鐘公園」と名付けられている。  渡さんは三男ナオキさん(54)にポルトガル語の通訳をしてもらいながら、年間約5000人に及ぶ平和資料館の来館者に自身の体験を伝えてきた。  80年前の夏、広島県大竹市内の海軍機関学校に在籍していた渡さんは、広島に落とされた原爆の被害を目撃した。終戦となり、同じく原爆で焼け野原となった故郷の長崎に戻ったが、しばらくすると髪がごっそりと抜け落ちた。  「腹が膨れ上がった死体が、次から次へと川を流れてきた」「やせ細った幼なじみは『もう駄目ばい』と息絶えた」——。広島と長崎の惨状を伝える渡さんの話に小中学生は熱心に耳を傾け、涙を流す児童もいたという。  同館が16年に失火で焼失すると、地元ではすぐに再建運動が起きた。ナオキさんら日系2世がフレイロジェリオ市などと協議を重ねた結果、市などが財政支援し、交流施設を併設した形で再建する内容の事業計画が20年にまとまった。  今年4月に着工し、今年末までの完成を目指して、展示品の収集や地元大学の協力を得ながら資料の作成が進められている。渡さんは「戦争が絶えない今だからこそ、再び平和の願いが広がる場所となってほしい」と願う。  ナオキさんは、長崎に原爆が投下された8月9日に生まれた長男(23)にヒラカズ(平和)と名付けた。「平和を願う被爆者の思いを受け継ぐことは自分の使命」と考えている。  日本の厚生労働省によると、ブラジルには3月末現在、広島・長崎の被爆者66人が暮らしている。

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