「電子」といったら、何を思い浮かべますか? スマートフォンやパソコン、電子メールや電子書籍…。確かにこれらは電子を利用していますが、ほんの一例。じつは、ほぼすべての現象は電子が引き起こしている、といっても過言ではないほど、電子は身の回りに満ちているんです! そんな電子の不思議なふるまいや、多岐にわたるはたらきをとりあげた、『電子を知れば科学がわかる』(江馬一弘著、講談社ブルーバックス)から、読みどころを抜粋してお届けします! 今回は「金属」に関するトピックスをご紹介します。 *本記事は、『電子を知れば科学がわかる』(ブルーバックス)を抜粋・再編集したものです。 金属が光り輝くのは自由電子の働き 自由電子は、金属の様々な特徴を生み出しています。金(Au)は、黄金色に輝いていますが、このように金属独特の輝きは「金属光沢」と呼ばれています。これは金属の表面での光の反射率が高い、つまり金属が光をよく反射することを意味しています。 第2章で見たように、原子に束縛された電子は、特定の波長の光のみを吸収したり放出したりして、色を生み出しています。 一方、自由に動ける自由電子は、幅広い波長の光(可視光線や赤外線など)に反応することができます。そのため、金属表面に光がやってくると、波長の長短(光の色)にかかわらず、自由電子がその光と同じ振動数で振動し、やってきた光の波をいったん打ち消します。その結果、光は金属内部に侵入できません。 そして、すぐに自由電子が同じ波長の光を放出するという現象が起きます。金属による光の反射とは、この自由電子による光の放出のことです。このように金属はほとんどの波長の光で高い反射率を示すため、独特の金属光沢が生まれるのです。 電池は「電子を放出しやすい金属」を利用している 金属の原子は一般的に、電子を放出して陽イオンになりやすい傾向があります。陽イオンへのなりやすさは元素によって異なり、これを「イオン化傾向」と呼びます。イオン化傾向が大きい順に金属元素などを並べたものは「イオン化列」と呼ばれています(図「イオン化列」)。 イオン化傾向が大きい、すなわち電子を放出しやすい金属元素ほど、化学反応(相手を還元させる反応)を起こしやすくなります。 イオン化傾向を利用した身近な製品に電池(化学電池)があります。例えば、1800年ごろ、イタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタ(1745〜1827)が発明した、世界で最初の電池であるボルタ電池は、プラス極が銅(Cu)、マイナス極が亜鉛(Zn)になっており、これらが希硫酸に浸されています(図「ボルタ電池」)。 亜鉛は希硫酸中の水素イオン(H+:1価の陽イオン)よりイオン化傾向が大きいので、亜鉛は2価の陽イオンとなって希硫酸中に溶けだしていきます。亜鉛が陽イオンになる際、電子が二つ放出され、それらが導線を伝わって銅のプラス極へと移動していきます。 プラス極では、希硫酸中の水素イオンが電子を受け取って水素分子となり、気体の水素となって発生します。この一連の反応によって、導線中を電流が流れつづけます。このように電子を放出しやすいという金属元素の性質をうまく利用したのが、電池なのです。なお、電圧の単位である「ボルト」は、ボルタの名前に由来します。 イオン化傾向が大きい元素は、電池の素材の良い候補となります。実際、イオン化傾向が最も大きいリチウム(Li)は、スマートフォンなどの「リチウムイオン電池」に使われています。 リチウムイオン電池は、リチウムを使うことで大きな電圧を生み出しているのです(ただしリチウムイオン電池では、電極に単体のリチウムが使われているわけではなく、その仕組みはボルタ電池よりも複雑です)。 問題・電流を流しやすい「金属」トップ3、何だか分かりますか? 「金・銀・銅」の3択で答えよ