地元食材をふんだんに使ったパンがウリで上越市で30年間続いた町のパン屋さんが、6月に惜しまれながら閉店しました。長年 市民から愛されてきたお店がなぜ閉店を決断したのか…味を守り続けてきた夫婦の思いとは。営業最終日に密着しました。 上越市高田地区にあるパンのお店『ソフィー』。毎朝5時半から厨房でパン作りが始まります。次々とパンが焼き上がり香ばしい匂いが店中に広がります。店を切り盛りするのは、代表の山粼美矢子さん(76)と夫・秋男さん(76)です。 ■ソフィー 山粼秋男さん 「季節によって温度差があるから手順も変わる。(仕込みを)変えるタイミングが大変。」 地元野菜をふんだんに使った惣菜パンをはじめ、ドイツの伝統的な焼き菓子「シュートレン」やドライフルーツがたっぷりと詰まったこだわりのパンが人気です。 朝8時- 開店の時間です。 約60種類あるパンは、すべて夫婦の手作り!棚に並んだパンは飛ぶように売れていきました。 ■市内から 「ハード系のパンがおいしいので買い占めちゃいます。」 ■ソフィー 山粼秋男さん 「こんなに皆さん来るとは思っていなかった。(店を)閉めるなんて言って…。」 約30年、上越でパンを作り続けてきましたが、6月上旬に店頭やSNSで閉店を告知。すると、別れを惜しむ客が殺到するようになったといいます。 ■ソフィー 山粼美矢子さん 「体力の限界。夫も『腰が痛い』と言っている。私も4年ほど前に脊椎の圧迫骨折をして腰がどんどん曲がってきている。」 体力の低下に加え、5年前の新型コロナウイルスの流行で急激に客足が減ってしまったと言います。新型コロナ禍があけても客はほとんど戻らず、さらに原材料費の高騰が追い打ちをかけ、やむなく閉店を決断しました。 ■市内から 「寂しい。」 ■市内から 「子どもたちはソフィーの豆パンが好きだったのでよく買いに来ていた。もうすぐ閉店と聞いて、久しぶりに(パンを)買いに来た。」 勤続5年目の従業員の古屋教子さん。夫婦とともに店を支えてきた仲間です。 ■従業員 古屋教子さん 「私から見ると、ものすごい一生懸命仕事をする夫婦。」 (カメラマン:2人は76歳だが) 「すごいなぁ。逆に元気をもらっている。」 6月28日、営業最終日- ■ソフィー 山粼秋男さん 「とにかく毎日が忙しくて疲れちゃって、あまり(最終日を)考える余裕もない。」 ■ソフィー 山粼美矢子さん 「(Q.今日のパンの量は?)3倍くらい多い。」 開店30分前には、すでにお客さんの姿が。 ■市内から 「(閉店は)ショックすぎる。ドイツ系のパンが売っている店があまりないので。」 ■市内から 「妻に連れられてよく来ていた。今日は最後の応援ということで来た。」 ■市内から 「今までおいしいパンをたくさん食べてきたので、寂しさよりも『ありがとうございました』という感謝の気持ちのほうが強い。」 ■市内から 「この子が初めてお使いに来た店。」 「いま高校2年生。」 こんなお客さんの姿も- (カメラマン:すごいお客さんの数ですね。) ■ソフィー 山粼美矢子さん 「本当にありがたい。ありがたいを通り越してボーッとしている。」 そこへ、1組の親子が- 開店前に並んでいた小学生です。美矢子さんに手紙を渡します。 ■ソフィー 山粼美矢子さん 「感激。こういう機会がなければ普段なかなか会えない人に会える。良かった。」 最終日も、パンは見る見るうちに売れてゆき…そして- ■ソフィー 山粼秋男さん 「全部終わった。」 店内のパンはすべて完売。最終日の来客数は、200組を超えました。 ■ソフィー 山粼美矢子さん 「色々な人とパン屋をやったことでつながった。今となっては(この店は)張り合い。普通だったら孫の世話をしている歳。それなのに朝から晩まで辛いこともあった。朝早く起きられなかったこともあったけど、それでも〝食〟のことを私は好きだった。」 30年間、上越で愛された町のパン屋。人々の記憶に思い出の味として残り続けます。