東京電力福島第一原子力発電所で溶け落ちた核燃料（デブリ）の本格的な取り出しについて、東電は２９日、２０３０年代初頭としていた開始時期が３７年〜４０年にずれ込むと発表した。 原子炉建屋に隣接する放射線量の高い建物の解体などに時間がかかるためだ。当初の計画から大きく遅れるが、５１年の廃炉完了目標は維持する方針を示した。 同原発では、１１年の原発事故で発生した推計約８８０トンのデブリが１号機から３号機の原子炉内に残っている。本格的な取り出しについて、東電は使用済み核燃料を搬出済みの３号機から始める。 計画では３０年代初頭の本格的な取り出し開始を目標としていたが、作業の安全確保のため、３号機に隣接する建物の解体が必要なことが判明。取り出しの準備を含めて１２〜１５年の期間が見込まれるため、３号機の取り出し開始は２０３７年〜４０年となる。ただ、政府・東電が目指す５１年の廃炉完了の目標は見直さない方針だ。東電福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は記者会見で「物理的に厳しいという認識はあるが、目標を変える必要はない」などと述べるにとどめた。 想定する工法では、回収しやすくするため、デブリは特殊な装置で削って小さくし、原子炉格納容器の下部に落とす。そのうえで格納容器の横から取り出す。放射線量が高い部分や不安定な部分には、充填剤（じゅうてんざい）を入れて固める手法も組み合わせる。 東電は本格的な取り出しの工法を決めるため、廃炉の技術的な計画を立てる国の専門機関「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」と検討を重ねてきた。今後は１〜２年をかけて、３号機の原子炉建屋内の情報収集を進め、工法の設計に役立てる。
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