参院選で大幅に議席を増やした参政党。SNSなどネットをうまく駆使していると言われるが、それだけではない。躍進の秘密に迫る。 前編記事『元党員が「もはや洗脳」と暴露…参政党を躍進に導いた神谷宗幣代表の「オカルト人脈」と「組織運営術」』より続く。 支えるのは「自民党出身」のスタッフたち 参政党の組織力を裏付ける要素が強固な地方組織だ。公式HPによると、'20年の結党から5年あまりで全国に287支部を設立し、地方議員は150人を超える。 代表の神谷宗幣氏はかつて大阪の吹田市議を2期務めた。'12年衆院選には自民党公認で大阪13区から出馬するも、当選は叶わず。'15年の府議選にも無所属で出馬したが、最下位で落選した。長年の交流を持つ自民党の地方議員はこう語る。 「不遇の時代が長かった神谷君に『新党をつくるならどうすべきか』と相談をうけたことがあります。私が強調したのは、昔の自民党の強さは、地方組織の頑丈さだということ。兵隊として動く地方議員がしっかりしてないと国政選挙は戦えない。参政党も「自民方式」を意識しています」 神谷氏の脇を固める参政党の事務方にも、同様の問題意識を持つスタッフがいる。 「たとえば神谷側近の地域統括部長の藤本一磨氏は元習志野市議で、自民推薦で市長選に出馬した過去もある。神谷氏が吹田市議時代に立ち上げた地方議員の全国ネットワーク『龍馬プロジェクト』は参加者の約8割が自民系でした。藤本氏もその時からの付き合いです」(参政党関係者) 収入は1年で約13億円!参政党の恐るべき集金力 かように「自民党の組織力」を知るスタッフらが地方組織作りに携わっている点が、参政党の基盤だ。ただし……、 「参院選でも元自民党衆院議員の安藤裕氏が参政党から全国比例候補として出馬しましたが、彼は自民党時代に女性問題で出馬を断念した人物。要は、神谷氏しかり、自民党ではやっていけない人が参政党に流れ、人材の質は『劣化版自民党』です」(同前) もうひとつ指摘しておかなければならないのが、「集金力」である。参政党の元近畿ブロック長の出原秀昭氏が語る。 「タウンミーティングで活動費を稼ぐことが推奨されています。2000〜3000円のチケットを参加者に買わせ、ボランティアスタッフにも販売。さらに神谷さんをはじめとする講師を党本部から呼び、講師料を神谷さんの親族が代表を務める『イシキカイカク』(以下、イ社)に支払う」 こまめな集金により、参政党の'23年分の収支報告書によれば、収入は約13億円に及ぶ。 「政治とカネ」の問題が次々と浮上 だが、収支報告書を精査していくと、「政治とカネ」の問題が複数浮上した。 筆者が入手したのは、参政党が'22年分の収支報告書に添付し、総務省に提出した振り込み記録だ。同年7月29日に、参政党本部からイ社に900万円の振込履歴がある。しかし、収支報告書のどこにも出金が記載されていない。収支報告書上に載らない「裏ガネ」が存在したのか。政治資金問題に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授が指摘する。 「実際には支出があったのに、それを収支報告書に書いていなかったとすれば、政治資金規正法違反(不記載)となります。5年以下の禁錮または100万円以下の罰金に該当する可能性があります」 この点を参政党本部に尋ねるとこう書面で回答した。 〈900万円の取引は、令和4年1月18日、今後の活動資金に備える目的でイシキカイカクから参政党へ一時的に仮払いとして資金をお預かりしたもので、実際には使用せず、同年7月29日に全額をイシキカイカク社に返金しております。この取引は、寄付や対価の支払いといった実質的な収入・支出には該当しないと判断し、収支報告書には記載していません。上記の事情から、本件は政治資金規正法違反には当たらず、いわゆる『裏金』とのご指摘も事実に反するものと認識しております〉 つまり、イ社からの900万円の「預かり金」を、同社に「返金」したもので、収支報告書に記載しなくてもいいと判断したという。果たして本当にそんな理屈が成り立つのか。 本部から支部への寄付も記載されていない…! 参政党も「現時点では訂正の必要ないと考えておりますが、今後の運用や指摘等を踏まえて、必要に応じて適切に判断して参ります」と逃げ道を用意する。実は参政党の説明通りだとしても、規正法上の問題があるのだ。 「約半年以上にわたりおカネを預かっていたとすれば、政党は借入金として記載すべきです。さらにそれを返金したのなら支出として記載する必要も当然ある。政治資金規制法違反(不記載)にあたる可能性があります。 前年度の繰越額が7000万円以上ある中で、預かり金が必要という説明自体も理解に苦しみます。政党側の『裏ガネ』をイ社に支払ったのではないかという疑念を払拭するためにも、参政党はイ社からの900万円の振込履歴を開示すべきです」(上脇氏) 参政党本部から支部への寄付が、収支報告書上で記載されていない事例も存在した。'22年に参政党本部は山形支部に対して、10月17日付で20万6000円の支部交付金を支出している。しかし、支部の収支報告書にはそれが記載されていないのだ。 参政党本部に尋ねると、「交付金20万6000円は党費収入として誤記されており、現在、再修正手続き中です」と瑕疵を認めた。 「政治資金規正法違反(虚偽記入)に該当する恐れがあります」(前出・上脇氏) 躍進の陰で積み重ねた「綻び」は、大きな亀裂になりかねない—。 【もっと読む】『「進次郎総理で解散総選挙だ!」自民党で始まった「ポスト石破」をめぐる熾烈な争い』 かわの・よしのぶ/'91年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部を卒業後、『サンデー毎日』『週刊文春』の記者を経てフリーに。主に政治を取材している 「週刊現代」2025年08月04日号より 【もっと読む】「進次郎総理で解散総選挙だ!」自民党で始まった「ポスト石破」をめぐる熾烈な争い