〈7月1日の出馬表明から3週間という圧倒的な時間不足。政党・企業・労組などから一切の支援のない完全無所属。脅迫や中傷などが支援者の皆さんまで傷つける場面もあったと思います。それでも濁りなく誇りの持てる選挙戦を作り上げてくれたのはお一人おひとりの『個』の力でした。お一人おひとりの強さと優しさでした〉 【写真】「中腰で相手の目を見て…」応援者たちと握手する山尾志桜里氏ほか 7月20日に投開票された参院選で、東京選挙区から無所属で立候補した山尾志桜里氏。同選挙区の改選定数は6だが、今回は非改選の欠員1を補充する合併選挙だったため7人が当選できた。しかし、結果は10万票を得たものの、当選ラインに遠く及ばない16位に終わった。 山尾氏は投開票日翌日の21日に自身のXを更新し、【心からの感謝を込めて】と題した参院選の振り返りを掲載。選挙戦の手応えや関係者への感謝の思いをつづる一方、敗因については冒頭のように「時間不足」や「準備不足」を挙げた。 山尾氏は当初、国民民主党から比例代表で出馬する予定だったが、過去の不倫スキャンダルが再燃し、山尾氏の公認を内定した国民民主党の支持率が急落する“山尾ショック”が起きた。 同氏が参院選への出馬を表明するに至る経過を、全国紙政治部記者はこう説明する。 「山尾氏は自身が起こした“ショック”を収拾しようと6月10日に記者会見を開きましたが、焦点だった不倫スキャンダルを巡り、『今、新たに言葉を紡ぐ、具体的に話をするのはさまざまな人のご事情があるのでご容赦いただきたい』とゼロ回答を貫きました。 会見は大失敗に終わり、さらなる世論の反発を招きました。会見を受けて、国民民主党は『十分な理解と信頼を得られない』として、山尾氏の公認内定を取り消しましたが、党の対応に激怒した山尾氏は同党にすぐさま離党届を提出したのです」 「国政への再挑戦」に燃える山尾氏は結局、全国最多の7枠で、知名度の高さが有利に働く東京選挙区からの出馬を決断したわけだが、果たして勝算はあったのか──。 国民民主党関係者はこう指摘する。 山尾氏の集票力とは 「公認を内定したのにネット世論の反発が大きいからと内定を取り消し、対応が二転三転した党への批判は相当なものでした。山尾氏の記者会見の内容はだいぶ残念な結果でしたが、山尾氏が党からハシゴを外される格好になったのも事実で、一定の“同情票”を集められると踏んで、無所属での立候補に踏み切ったのではないでしょうか」 山尾氏の得票数については、政党の支援もないことから「せいぜい数万票」(永田町関係者)との見方もあったが、蓋を開けてみると同氏は10万6230票と、10万票以上を獲得した。 山尾氏が掲げる「中道政治」にどれだけの有権者が賛同したのかは不明だが、同氏に一定の集票力があることも選挙結果からはうかがえる。一方、山尾氏の国政復帰のハードルが高いことも想像に難くない。 山尾氏は敗因について、Xに「時間不足」や「準備不足」を挙げているほか、陣営での敗戦の弁では「私自身の伝える力の不足もあるでしょう」と語っている。 このことについて、ネット上では辛辣な言葉が飛び交っている。 〈伝える力が足りないんじゃなくて、自分を省みる力が足りない〉 〈あの記者会見をやった上でよく出馬できたな〉 〈(不倫相手とされる男性の元妻で自ら命を絶った)元奥様の人権を損なった自分を反省し、ご冥福と謝罪をしない限り、あなたはだれも信用しない〉 山尾氏は今回の選挙戦を振り返って、いま何を思うのか。問い合わせたところ、以下のような回答があった。 「カオスな選挙戦の中…」 「無所属20日間の短期決戦で10万を超える都民の方々に支持頂いたこと、心から感謝しています。与党に幻滅、野党は乱立、ウケ狙いの政策や差別用語が飛び交うカオスな選挙戦の中、『落ち着いて経済・防衛・皇室の土台を立て直し、本当の誇りある日本をつくろう』と『中道政治』を訴えました。 議席に届かなかった結果の責任はすべて私自身の準備不足・力量不足。他方でボランティア選対の力強さは、中道政治を求める声の確かな証明だったと思います。中道の受け皿を広げるため、精進します」 自身の公認内定を取り消した国民民主党について、取消直後には玉木代表ほか党執行部への怒りが報じられることもあった。しかし、すでに吹っ切れているようだ。 「玉木さんにも執行部にも個人的にネガティブな感情はありません。組織としての統治不全は相当深刻だと言わざるを得ませんが、一人ひとりは、リスクをとって政治に挑戦する同志だと思っています。むしろ私自身は、公認取消の結果、無所属で立候補でき、『ポピュリズムに走らない中道路線』という政治家としての信念を貫くことができました。 組織に潰されずに再起できるというメッセージとともに、政界への女性の挑戦を応援していくという目標もできました。人生万事塞翁が馬。状況は変化するでしょうが、自分の信念は貫いて、その時々の最善を尽くしていきたいと思っています」 今後向かう目的地にも変わりはない。 「国政復帰の意志に変わりありません。今回の選挙で、中道政治の旗をともに掲げてくれるかげかえのない仲間ができました。これからは1人で判断せず、仲間とともに次の道筋を描き、決断していきたいと思っています」 国政復帰への強い意志を見せる山尾氏。議員バッジを再び胸につける日は来るのだろうか。