国立劇場が主催する舞踊公演「日本舞踊の楽しみ」が８月９日、東京・浅草公会堂で開かれる。 　今回は「刀剣男士　髭切（ひげきり）・膝丸がいざなう！」と題し、人気ゲーム「刀剣乱舞ＯＮＬＩＮＥ」に登場する刀剣男士（だんし）ゆかりの名刀にまつわる長唄舞踊「綱館（つなやかた）」と「土蜘（つちぐも）」が披露される。（武田実沙子） 　「土蜘」は、病を患う源頼光（花柳寿美蔵（すみぞう））とその家臣（西川大樹、西川扇重郎（せんしげろう））のもとへ、次々と不審な来訪者が現れる。その正体は、人間に化けた土蜘の精。頼光は源氏の宝刀「膝丸」で土蜘に斬りかかる。 　今回は若柳里次朗が、見どころを凝縮させた振りを新たに創作した。そして、〈１〉遊郭に住む少女、切（きり）禿（かむろ）〈２〉芸を披露する目の見えない座頭（ざとう）〈３〉最高位の遊女、傾城（けいせい）——の男女３人に化けて頼光に近づく土蜘の精を、藤間涼太朗が踊る。 　衣装やかつらを早替わりしながら１人で踊り分けるので、視覚的にも楽しめる作品だ。涼太朗は「禿は袂（たもと）をかわいく持って愛嬌（あいきょう）を振りまき、座頭は目が見えないしぐさが伝わるように、傾城は格の高い女性」とそれぞれについて語る。 　里次朗は、見るだけでそれぞれの役柄の雰囲気が出せるよう、わかりやすい振り付けを心がけたという。「観客が『あれっ』と思うくらい、変化をおおらかに見て取れるようにしたい」と趣向を語る。頼光が手にする膝丸をしっかり客席へ見せる工夫も凝らした。 　舞台の大道具にも様々な仕掛けが施されている。衣装も次々と替わる演目だけに、踊り手だけではなく、裏方として支える人たちの力を結集した舞台を目指す。 　涼太朗はかつて歌舞伎俳優（尾上松男）として活動しており、８年前に日本舞踊家に転向した。黒衣（くろご）や後見となって俳優に衣装を着させるなど、踊り手を支える側の気持ちもよくわかっている。「踊りだけではなく、衣装の着替えやかつらの掛け替えの稽古もして、チームの呼吸を合わせる」と力を込め、「刀を抜いて戦う場面もあり、子どもたちにも楽しんでもらえるエンターテインメントになっている」と胸を張った。 　名刀「髭切」が登場する「綱館」は、舞踊家が衣装やかつらを使わずに踊る素踊りで見せる。花柳源九郎と藤間直三（なおぞう）が出演する。 　午前１１時半と午後３時半の２回公演。（電）０５７０・０７・９９００。