今季から海外ツアーに挑戦する山下美夢有（みゆう）選手（２４）が快挙を成し遂げた。 　英国で行われた女子ゴルフ・ＡＩＧ全英女子オープンで初優勝。応援に駆けつけた家族の前でトロフィーを掲げ、「意外と軽いと思った」とおどけ、笑顔を見せた。 　大阪府寝屋川市出身の山下選手は大阪桐蔭高ゴルフ部時代から活躍。関西女子アマチュア選手権を制するなどし在学中の２０１９年にプロテストに合格した。コーチの父勝臣さん（５０）にフォームをチェックしてもらいながら腕を磨いた。 　全英女子オープンは２２年に初出場して１３位に入った。当時、国内で優勝する姿を見た元世界ランキング１位の宮里藍さんは、山下選手について「コースが難しくなればなるほど戦略を徹底し、強みを発揮できる」と評した。身長１メートル５０と小さな体ながら誰にも負けない精度と勝負強さで国内トップ選手に成長。目標は「メジャー大会で優勝したい」に変わった。 　弟の勝将（まさゆき）さん（２２）もプロゴルファー。山下選手は、支えてくれる家族の記念日に強さを発揮してきた。２２年５月の母の日に国内メジャー初優勝をプレゼントし、母の有貴さん（４９）は「名前の通り、夢をかなえてくれた」と喜んだ。翌年６月は父の日に優勝し、「恩返ししたかった」と話した。 　今大会中の２日は、山下選手の誕生日だった。現地には両親と妹の蘭さん（１７）が応援に駆けつけており、家族で誕生日を祝い、さらに優勝も手にする二重の喜びとなった。有貴さんは「言葉がない。誕生日に、また一つ思い出をもらった」と涙を見せた。 大阪桐蔭稿の恩師「持ち味をストイックに磨いてきた成果」 　山下選手を知る関係者からは祝福の声が上がった。 　大阪桐蔭高（大阪府大東市）ゴルフ部の柴山香織監督（５２）は、結果が出ない時にも言い訳せず、黙々と練習に取り組む山下選手の姿が印象に残っているという。「持ち味の（アプローチやパットなど）ショートゲームをストイックに磨いてきた成果だろう」とたたえ、「自分なりのゴルフを追求し続け、後輩たちのお手本になってほしい」と話した。 　同部の森中広和部長（４９）は「入部当時からパットの技術などは高かったけど、体が小さくドライバーなどの飛距離が出ないこともあって、飛び抜けた存在ではなかった」と振り返り、「山道のランニングなど苦しい練習にも常に全力で取り組み、ゴルフへの愛と心の強さで才能が開花したのだと思う」と祝福した。 　日本女子プロゴルフ協会の小林浩美会長は「４日間、見事なプレーで強さが抜きんでていた。パリ五輪での悔しい思いも糧に、ますます強くなった山下さんがメジャー優勝者に輝き感無量です」とのコメントを発表した。