【広島 原爆の日】祖父は「落とした側」と「落とされた側」も…共に平和目指す2人の孫

戦後80年。6日、「原爆の日」を迎えた広島には、原爆を「落とした側」と「落とされた側」、かつては敵同士だった2人の孫が並んで祈りをささげる姿がありました。立場の違う2人が共に目指す平和への思いを「news zero」の藤井貴彦キャスターが取材しました。     ◇ 厳しい暑さの中、迎えた8月6日。平和記念式典にはおよそ5万5000人が参列しました。原爆が投下された午前8時15分、静かな祈りがささげられました。 核兵器がなくならない現状に広島県知事は問いかけました。 広島県 湯崎英彦知事 「このような世の中だからこそ、核抑止がますます重要だと声高に叫ぶ人たちがいます。しかし本当にそうなのでしょうか」 全国の被爆者の数はおよそ10万人。戦後80年となり被爆者の平均年齢は86歳を超えました。 広島県被団協の箕牧智之理事長は石破首相に「日本は80年間、戦争をしていません。今後も戦争をしないことを国民に約束していただきたい」と伝えました。 6日夜、原爆ドーム近くの川ではとうろう流しが行われました。 参加者 「ピースって書きました。いつまでも平和に暮らせますように」 広島県出身 「被爆者が亡くなって思いが薄れないように、引き継いでいきたいなと」 平和への祈りに包まれた広島。特別な思いでこの日を迎えた2人がいました。原爆ドームを望む場所で黙とうをささげていた、原田小鈴さん(50)と、アメリカ人のアリ・ビーザーさん(37)です。 ——なぜここで黙とうされた? 原田小鈴さん(50) 「私の祖父は被爆者ですから、80年を迎えるにあたって、原爆ドームの前で祈るのも一つの私たちの祈りかなと」 アリ・ビーザーさん(37) 「原爆が爆発した場所を見つめて、その瞬間に集中していました」 80年前、原田さんの祖父・山口彊(やまぐち・つとむ)さんは、2度被爆をしました。そして、アリさんの祖父ジェイコブ・ビーザーさんは、広島・長崎に原爆を落とした両方の投下機に搭乗していました。 敵同士だった祖父。その孫同士は、いま共に平和に向けて活動をしています。 ——2人はどのような行動をしている? 原田小鈴さん(50) 「一緒にスピーチする時間を持てたり、(アリさんが)ドキュメンタリー作家でもあるので、彼の作品を手伝ったり」 ——彊さんは広島・長崎の両方で被爆された? 原田小鈴さん(50) 「長崎から広島に入ってきて、出張中に被爆し、長崎に戻ってまた被爆する。二重被爆者です」 彊さんは当時、造船所で設計技師として働いていました。 山口彊さん 「広島から長崎までキノコ雲に追いかけられて、ここまで来たのかと」 90歳で自身の被爆体験を語りはじめ、93歳で亡くなるまで、平和と核廃絶を訴え続けました。原田さんは彊さんの死後、被爆体験を伝える活動を始めたといいます。 ——アリさんの祖父は原爆を落とした爆撃機に搭乗していた? アリ・ビーザーさん(37) 「両方」 ——2つとも アリ・ビーザーさん(37) 「そうです」 ジェイコブさんは、レーダー技師として両方の投下機に乗っていた唯一の人物です。 ——祖父について初めて聞いた時どう感じましたか? アリ・ビーザーさん(37) 「覚えていない」 アリさんが4歳の時に亡くなったため、ジェイコブさんの記憶はほとんどないといいます。 アリ・ビーザーさん(37) 「6歳の時、おじいさんやおばあさんに第二次世界大戦で何をしたかを聞きましょうという授業がありました。先生は『あなたのおじいさんが、戦争を終わらせる作戦に参加していたことをみんな知っています』と言いました」 原爆投下後にアメリカで取材を受けた時のジェイコブさんの音声が残されています。 ジェイコブさんの音声 「私が見たのは、すでに飛行機よりも高く上がっているキノコ雲だった。途方もない被害があり、人々が傷ついているのは間違いなかった。しかし、我々はある意味ほっとしていた」 当時、「祖父は戦争を終わらせた英雄」だと教わったというアリさん。原爆に関する考えが変わったきっかけは、親族のつながりで出会ったある被爆者の家族でした。 アリ・ビーザーさん(37) 「『もし、あなたが原爆で何が起きたのかを知りたいなら、被爆者に会うべきだ』と言われました」 それからアリさんは度々、日本を訪れ、被爆者の証言を聞き世界に発信しています。 ——(アリさんのおじいさんは)広島・長崎で原爆を落とす爆撃機にいた。原田さんはどう思った? 原田小鈴さん(50) 「私たち被爆者の家族ですから、それは最初からよくきたね、という気持ちには複雑ながら、ならなかった」 それでも、アリさんは毎年のように何度も足を運んで会いに来ました。 原田小鈴さん(50) 「歩み寄る彼の誠実な気持ちと、すごく愛嬌のある方なので、私たち家族も少しずつ心を打ち解けていった」 ——もしアリさんが答えたくなかったら答えなくていいが、(アメリカで)原爆は正しかったという教育を受けたと思う。広島の原爆は正当化できるかどうか アリ・ビーザーさん(37) 「私はあまり、過去の正当化に焦点をあてたくありません。過去を変えることはできません。しかし、そこから学ぶことはできます。広島と長崎を忘れないことで、二度と同じことが繰り返されないようにするのです」 国や立場が違う2人をつないでいるのは「平和への思い」。 ——再び核使用の危険性が高まっているが、今後2人でどう活動していきたい? 原田小鈴さん(50) 「私たちの思い『核廃絶をしたい』のは、同じ思い。私たちは対話を繰り返して活動している。人の心に届きたいから。かつて、加害と被害の関係にあった2人が手を取り合って、肌の色も、目の色も、言葉さえも違うけど、一緒に活動しているのが、世界の誰かの心に届けばいいかなと」 アリ・ビーザーさん(37) 「私も小鈴さんと同じ気持ちです。私たちはあらゆることを話して距離が縮まりました。結局、キノコ雲の上と下にいた祖父の孫である私たちが友達になれるのなら、誰もが仲良くなれます」 (8月6日放送『news zero』より)

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