沖縄初の大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」が7月25日にオープンして2週間が過ぎようとしている。民放各局が大々的に紹介する一方で、オープン前から交通の便の悪さが指摘されていた。さらに、Googleマップに投稿された「クチコミ」が数日にわたって表示されないなど波乱の幕開けとなった。ジャングリアは今後どうなっていくのだろう。 *** 【写真を見る】“ひどい”“チャチい”と言われる「ジャングリア沖縄」のアトラクション 沖縄本島北部の今帰仁村(なきじんそん)と名護市にまたがり、東京ドーム約13個分もの敷地面積を持つジャングリア。《T-REXからの逃走》が楽しめるという「ダイナソーサファリ」や《超爽快!ジャングル上空を飛ぶ鳥になる》というキャッチコピーの「スカイフェニックス」など22種類のアトラクションに加え、飲食施設や温泉施設も備えられた《大自然没入型》がウリのテーマパークだ。 ジャングリア沖縄(公式HPより) 「アトラクションの内容や混雑具合は予想よりもひどかったですね。でも、それがネット上で大騒ぎになったのは想定外でした」 とオープン直後の状況を語るのは、日本遊園地学会の塩地優会長である。前述のGoogleマップのクチコミほかネット上には、アトラクションのチャチさやそもそもアトラクションを体験できないといった書き込みがあふれた。 「例えば『ダイナソーサファリ』は、35年近く前にアメリカのユニバーサル・スタジオ・フロリダにできた『ジョーズ』を超えるくらいのクオリティーには仕上げてくるのだろうと思っていたのですが、それにも遠く及ばない。ティラノサウルスの出来も良くありませんでした。そもそも恐竜がいた時代の植生って、シダ植物のジャングルを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし、ジャングリアは芝生の上にヤシの木が生えているような感じです。また、このアトラクションは12人乗りの車に乗り込むのですが、経路上で一度、車から降りるため、全員が再び乗車して発車しないと次の車両を出発させられない。降りる場所を2パターンに分けて工夫しているとはいえ、効率が非常に悪いんです。つまり、それが行列の長さにつながっているのです」(塩地氏) 広報は上手い トロッコを使うなどして赤ちゃん恐竜を探し出す「ファインディングダイナソーズ」も効率の悪さは同様だという。 「子供向けのアトラクションですが、8人ごとにガイドをつけるとは思いませんでした。スタッフも多くしなければならないし、客にとっては効率も悪くなります」(塩地氏) テレビ各局の紹介では迫力満点と大絶賛されていた。出資でもしているのかと思ったほどだ。 「音頭をとった森岡毅さん率いる株式会社刀の本業はマーケティングですから、広報力はすごいと思います」(塩地氏) 森岡氏といえば大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させたことで知られ、西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市)のリニューアルやイマーシブ・フォート東京(東京都江東区)の運営なども手がける日本最強のマーケター集団と称される。 「マーケティングが得意ですから広報面では成功しても、経営面でコストが大きくなりすぎるケースがある。USJはともかく、西武園はリニューアルの2年後には大幅な赤字に陥りました。イマーシブ・フォートも開業日はニュース番組が取り上げたほど露出はすさまじかった。ここも“没入型”を謳っていたのですが、説明不足だったために何ができるのかわからず、集客に結びつかなかった。その反省からか、ジャングリアではティラノサウルスに人が食べられるとか“ネタバレ”になるような情報も出した。すると今度は、それがマックスであることが伝わってしまい、しかもオープン後にはクオリティーがそれほどでもないことまで広まってしまったわけです」(塩地氏) キャパの少なさが問題 ジャングリアの入場料(1Dayチケット)は大人6930円、子供4950円(いずれも税込)。アトラクションによっては整理券も配布されるが、プレミアムパス(2000〜3000円)を追加購入することで並ばずに体験できる。 「いわゆるラインスキップするようなチケットは重要な収益源になるのですが、ジャングリアの場合はアトラクションのキャパが小さすぎる。特に体験型のアトラクションはキャパが小さいので、そこでプレミアムパスを先に販売してしまうと朝イチで入園しても整理券が手に入らないということも起きているんです」(塩地氏) 整理券やプレミアムパスを必要としないアトラクションはないのだろうか。 「4つしかありません。何でも乗れるはずの1Dayチケットを購入したのに、それだけで乗れるアトラクションは4つしかありません。しかも、そこに3時間以上も並ぶという状態になっているのです」(塩地氏) ちょっと長すぎないか。 「アトラクションの効率が悪いため多くの人を捌くことがけないのです。体験型アトラクションをやるのなら完全予約制にすべきだと思います。他のところでもバンジージャンプやジップラインは予約制が普通ですから。キャパがないのに好きなだけ乗れますよと言って入場料を取っていることが悪評につながっているのだと思います」(塩地氏) 最大の失策はどこにあるのだろう。 もって2〜3年 「大型テーマパークを作ったことそのものが失策だったのではでしょうか。立地的にも年間200万人級のテーマパークが成り立つはずがありません。本当は入場料なしで各アトラクションを単体で切り売りすればよかったのですが、総事業費が700億円もかかっているので、それをやったら赤字になる。そのためどのアトラクションもキャパオーバーで、客にしてみれば騙されたと言いたくなるような形で入場券を売っている、払った金額の割に満足度も高くないという結果になっているわけです」(塩地氏) 満足度が低ければリピーターにも結びつかない。 「リピーターどころか新規の客にも結びつきません」(塩地氏) お先真っ暗のように聞こえるが……。 「8月いっぱいはトントンかプラスで推移すると思いますが、9月以降はどうでしょう。夏休みが終わり、沖縄に行く人も減るでしょう。資金面でも銀行が融資に応じてくれなくなりますし、追加出資に応じてくれるところはほとんどないのではないでしょうか。これだけ大規模な施設で、毎年、赤字が積み重なるようだと、2年から3年で何らかの決断が迫られるかもしれません」(塩地氏) 改善する方法はないのだろうか。 「アトラクションを増やすという方法はありますが、残る敷地は使い勝手の悪い場所が多いので簡単ではありません。建設中のアトラクションが8月中旬に完成して以降は、しばらく大型アトラクションの追加は難しいと思います」(塩地氏) デイリー新潮編集部