この夏、″クアトロモンスター″猛雨災害が日本を襲う!

7月10日、関東で多数のゲリラ雷雨が発生し、豪雨に強い都内でも多くの道路が冠水した 今年の夏は40℃に迫る殺人猛暑だけじゃない! 4つの気象状況によってモンスター級の被害を与える猛雨災害にも厳重な注意が必要なのだ!! "異常な夏"の原因を専門家が徹底解説する!!! 【図】海面水温、海面水温の平年との差ほか * * * ■海面水温が平年より5℃も上がっている! 今年は、昨年にも増して異常な夏だ! 7月10日、関東では多くのゲリラ雷雨が発生した。東京の目黒川はあふれる寸前で、渋谷では多くの道路が冠水し、代々木のアンダーパスには約1m30cmの浸水があった。 また、横浜ではマンホールが吹き飛び、約10mの水柱が噴き上がった。一部の電車は運転を見合わせる事態にまで陥った。大雨対策が進んでいる都心でも、予想以上の豪雨によって都市機能がマヒしたのだ。 なぜ、こんなことになっているのか? 三重大学気象・気候ダイナミクス研究室の立花義裕教授に聞いた。 「今年は35℃以上の猛暑日が6月中旬から始まりました。暑くなるのが早かったため、日本周辺の海面水温もどんどん上がっていったんです。 特に日本海や東北・北海道の海面水温が異常な高温になりました。平年と比べて5℃くらい高い場所も出ています。 過去にも日本列島のほんの一部の海域で平年と比べて5℃くらい高いケースはありましたが、今年は広範囲にわたっています。私はこんなに高くなったのをこれまで見たことがありません。今年は北海道で40℃に迫る暑さになりましたが、これは高い海面水温が影響していると思います。 そして、海面水温が高いということは、それだけ水蒸気が大量に海面から上がってくるため、豪雨被害が起こりやすいということです。 実は�28℃が豪雨のライン�といわれていて、海面水温が28℃になると水蒸気がどんどん上がってきて、積乱雲がたくさん生まれ、豪雨になります。 今はまだ28℃ラインが関東や北陸周辺ですが、今後は東北や北海道にも移っていくでしょう。今年は東北、北海道でも災害級の豪雨があってもおかしくないと思います」 7月26日の海面水温。関東の沖や日本海までもが、すでに27℃に達している。28℃になるのもすぐのはずだ(図1、2とも気象庁のホームページを基に作成) 7月17日の時点で、東北や北海道沖の海面水温は平年と比べて4〜5℃高くなっている ——今年は6月9日に九州で最初の線状降水帯が発生しました。昨年の最初の発生は6月21日でした。今年は線状降水帯の発生が早くなっている気がしますが......。 「線状降水帯の発生も海面水温が関係しています。簡単に言うと、線状降水帯は海でできたものが陸に流れていきますから、海面水温が高いほど大きな被害を及ぼすものができやすい。もちろん数も多くなるということです。 また、線状降水帯は陸上に移動するとより勢力が強まります。海上は進路を妨害するものがほとんどありません。しかし、陸上はでこぼこしているので空気の流れが渋滞する場所があります。すると、そこに水蒸気がたまり強い雨になるわけです。 さらに、線状降水帯は海から常に水蒸気が供給されるので、なかなか途切れません。海面水温が高い今年は、昨年よりも強力で長時間に及ぶ�ウルトラ線状降水帯�が起きる可能性が高いと思います」 ——7月に関東地方を襲った広域のゲリラ雷雨は、大きな被害を及ぼしました。 「ゲリラ雷雨は、大気の状態が不安定なときの急激な上昇気流によって起こります。 例えば、関東地方では海からの風によって、内陸に多くの水蒸気がたまっていることがあります。そこに強い日差しを受けて地面の温度がどんどん上がっていくと上昇気流が発生し、発達した積乱雲ができてゲリラ雷雨になります。ここでも海面水温が関わってくるわけです。 また、ゲリラ雷雨はちょっとした地形の変化で起こります。例えば小高い丘があって、そこに向かって風が吹いて上昇気流が起こると、積乱雲ができてゲリラ雷雨になることがある。 都会には高層ビルが多いので、そこに風が吹くと複雑な渦ができて、予測不可能なところでゲリラ雷雨が起こりやすい。千代田区は晴れているのに、新宿区では雷雨ということも珍しくありません。 しかも、黒潮の蛇行によって暖かい黒潮が関東地方にへばりついているので、関東には水蒸気が入りやすくなっていて、ゲリラ雷雨が増えているのです。 今年は昨年よりも強力で広範囲のジャイアント・ゲリラ雷雨がたくさん発生する可能性も否定できません」 ——線状降水帯やゲリラ雷雨だけでなく、そのほかにも豪雨被害を及ぼす気象状況はありますか? 「あまり注目されていませんが『寒冷渦』も危険です。何年も前から偏西風が日本の北側で大蛇行しています。偏西風の北側には寒気があって、南側には暖気があります。 そして、偏西風が激しく蛇行していると、北側の寒気がちぎれて日本列島にやって来ることがあるんです。すると、冷たい空気と暖かい空気が混ざり合って積乱雲が発達し、広い範囲に激しい雨やひょうを降らせ、突風や落雷を起こします。 昨年5月、日本海側を中心に広い範囲に被害を与えた寒冷渦は、暴風雨により家屋を破損させ、多くのケガ人を出しました。 また、昨年10月にスペインで起きた寒冷渦による大雨では、200人以上の死者が出ています。寒冷渦は台風のような被害を及ぼします」 北から襲う暴走雷雨、寒冷渦にも注意が必要だ。 冷たい寒冷渦が暖かい空気の中に飛び込んでくることで、不安定な空気になり豪雨が起こる ■豪雨被害は11月まで続く!? ——では、通常の台風はどうなのでしょう。今年は台風1号の発生が6月11日と遅かったですが、海面水温の影響があるのでしょうか。 「台風の発生が遅かったのは、たまたまだと思います。ただ、年間の発生数は毎年ほぼ同じなんです。ですから、1号の発生が遅ければ、その後に多く生まれるはずです。 そして、これだけ日本付近の海面水温が高いわけですから、台風が近づいてきても勢力が弱まりません。むしろ強まりながら近づいてきます。 先ほども言いましたが、日本海や東北、北海道も水温が高いので、日本海に抜けても東北に行っても弱まらない。強いまま北海道に上陸することもあるわけです。 これまで、台風の被害というと西日本が多かったイメージがありますが、今年は日本中のどこでも台風被害が起こりうるということです。 さらに何度も繰り返しますが、偏西風が大蛇行して北海道の北を通っています。すると日本列島付近は風が弱い。これまでのように偏西風が日本列島を通っていれば、台風は偏西風の影響で東に大きく移動していきます。 しかし、風が弱いのですから、日本近辺をゆっくりとウロウロする動きになる。いわゆる迷走台風です。だから、同じ地域に何日にもわたって雨を降らせることもあるでしょうし、台風が去ったなと思ったら、また戻ってくることもある。 しかも海面水温が高いので弱まらないわけですから、この『スーパー迷走台風』は、とても大きな被害を及ぼすことになると思います。 そして、今年は台風の発生が遅れていたので、8月、9月に多くなることが予想されます。すると、強力な迷走台風が日本列島に2つも3つもやって来ることもありえます。 複数個の台風があると、お互いが牽制し合って、あまり動くことがなくなります。相撲でいうところの『がっぷり四つ』です。 そうなると、台風ががっぷりと組んでいる場所では、長期間にわたって大雨を降らせることになるでしょう」 今年の夏は�ウルトラ線状降水帯��ジャイアント・ゲリラ雷雨��暴走寒冷渦��スーパー迷走台風�といった4つの気象状況による�モンスター猛雨�で、日本は大きな被害を受けるかもしれない。そのための準備は怠らないでほしい。 しかも、このモンスター猛雨は、8月、9月だけではなく、10月、11月まで続くかもしれないというのだ。 「われわれ研究者もびっくりしたのですが、基本的に線状降水帯は夏の間にできるものだと思っていました。しかし、昨年は長崎県などで11月に線状降水帯が発生しているのです。 6月から猛暑が始まり、11月まで夏の気象が続いている。長期間、猛暑や豪雨の影響を受ける時代になってしまったということです」 改めて言うが、今年の夏は暑さだけでなく、�猛雨�にも気をつけてほしい。 取材・文/村上隆保 写真/時事通信社

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