遺族の“手記”と安全への訴え 御巣鷹事故の記憶を次の世代へ

遺族が残した手記 孫が受け継ぐ「事故の記憶」 1985年8月12日。 羽田発大阪・伊丹行きの日本航空123便が、飛行中に操縦不能となり、群馬県上野村にある「御巣鷹の尾根」に墜落。この事故で乗客乗員520人が犠牲となり、現在でも世界で単独機として最大の死者数です。 【写真で見る】遺族の“手記”と安全への訴え 御巣鷹事故の記憶を次の世代へ 兵庫県尼崎市に住んでいた岡本武志さん、明子さん夫婦も北海道・札幌市で行われた親族の葬儀の帰りに、事故に巻き込まれてしまいました。 年季の入ったスケッチブックの表紙に手書きで書かれた「昭和60年8月12日 日航機墜落事故記録」の文字。兄・武志さんを亡くした、岡本清志さんが書いたものです。中には事故に関する記事のスクラップや、緊急時の連絡先、事故の直後から武志さん夫婦の葬儀までの16日間を、7枚に渡り残した手記があります。 「19時頃 兄が羽田空港から大阪に帰る時 乗った飛行機が事故を起こし墜落したらしく 詳細は不明と電話あり」。札幌市内の自宅で事故を知った清志さんは、その4日後、群馬県藤岡市にある遺体安置所で、武志さんの遺体と再会します。遺体に手足は無く、「全身が焼けただれたように変形していた」と記されています。 変わり果てた武志さんの姿に清志さんは「無残とは この事にある文字か(中略)他人であれば顔をそむけたくなる 兄だと思うから目をそらさず ずっと見入る」と胸の内を書き残しています。 この手記は去年の初め、事故から14年後に亡くなった清志さんの遺品を整理しているときに見つかりました。 「(清志さんは)私を溺愛していて、すごい優しかった」こう語るのは、手記を見つけた孫娘のみかさん(仮名)。事故当時は2歳だったみかさんは、祖父・清志さんが残した手記について「遺品でも、受け取ったからには責任があると思った。40年の節目に、事故を知らない世代や、知りたい人に知って欲しい」と語り、大好きな清志さんから受け継いだ「事故の記憶」を伝えて行きたいと話します。 遺族が訴える空の安全「『臆病者』と呼ばれる勇気 御巣鷹山から安全を一緒に」 「伝えることは、心のどこかがいつも少し痛いです。でもこの飛行機事故を伝えることは、健ちゃんからの宿題だと思っています」 「事故の記憶」を伝え続けている遺族がいます。事故で9歳の息子を亡くした美谷島邦子さん(78歳)。7月下旬、事故から40年になるのを前に、これまでを振り返る講演を行いました。 時折ハンカチで目元を拭いながら耳を傾けていたのは、日本航空グループ社員およそ1100人。日航は年に1回、「安全講話」として講師を招き、社員の安全に対する意識の向上を目指しています。 美谷島さんは「日航の職員と接してきて、傷ついたこともあったが、立場を超えて惜しみない愛をくれた人もいた」と話しました。そのうえで「安全運航は、社員1人1人が働きやすいJALであることが前提です。そして、今一番思うことは『臆病者』と言われる勇気を持って欲しいです。41年目です、御巣鷹山から一緒に安全を作っていきましょう」と訴えました。 受け継がれる「事故の記憶」はJAL社員も 事故知る世代は2026年中に「0」へ 遺族たちが「空の安全」について思いを託す日本航空。しかし、今年3月末時点で、日航の現役社員1万4023人のうち、事故当時に入社をしていたのは17人で、わずか0.1%です。さらに、このままのペースでいけば2026年中に、事故を知る現役の社員が「0」になることが、その後の取材でわかりました。当時を知る社員が少なくなる日航では、事故の伝承が課題となっています。 7月25日、パイロット候補生や空港で働く地上係員など全国から集まった日航グループの新入社員22人が御巣鷹の尾根に登りました。日航は事故の記憶を引き継ぐために、新入社員や入社10年目の社員など、節目の年に「安全研修」として御巣鷹山を訪れます。 遺品や、事故の機体を保存している「安全啓発センター」の運営を行う社員から説明を受けながら登り、「昇魂の碑」の前で、「空の安全」を担う者として、新入社員たちは誓います。 松隈佳奈さん(23歳)地上係員 「遺族の方たちが残してくださっている情報であったり、お話に関心をこれからも持ち続けて、情報知っていく。それを積極的に発信して、これからの世代の方たちにも繋げていきたい」 中村駿介さん(23歳)パイロット候補生 「誰か1人が安全に対して意識が高い状態では駄目だと思っていて、全員が全員、高い安全に対する意識を持つ。そして、それを助長できるような人間になりたい」 託された事故の記憶が「空の安全」の礎になっていきます。

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