「40年たった今でも、会いたい。声を聞きたい——」日航機墜落事故40年 遺族が“伝えた”安全への願い

「まち子 子供 よろしく」—。最愛の夫がのこした“最後の手紙”を受け取った谷口真知子さん。夫の正勝さん(当時40歳)は40年前の日航ジャンボ機墜落事故で亡くなりました。“いつか日本航空の人たちに直接、事故のことを伝えたい”そう願い続けてきた真知子さんが今年7月、初めて日本航空の新入社員たちに向けて講演を行いました。 「40年がたった今でさえ、会いたい 声を聞きたい」 念願だった場所で、40年分の思いを伝える遺族の姿を取材しました。 (取材:日本テレビ 宮島弘樹) ■「いつか 直接 伝えたい」40年の悲願  「きのうは緊張してないって言ったのにね」 「朝3時に目が覚めてそこから眠れなかった…口ほどにもないね」 いつもの軽快な口調で話しながらも、落ち着かない様子。私がこれまで取材した15年で、初めて見る姿でした。 2025年7月9日、谷口真知子さんにとって特別な朝を迎えていました。 この日、真知子さんは飛行機に乗り自宅のある大阪から東京へ。 向かった先は、東京・羽田空港近くにある日本航空の施設です。真知子さんの緊張の理由、それは日本航空で講演を行うためでした。 1985年8月12日。日本航空123便が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落。夫・正勝さんは、「まち子 子供 よろしく」との短い手紙を残し、亡くなりました。 私がはじめて取材したのは2010年。前年に生まれた初孫の結菜ちゃんを連れての慰霊登山に同行しました。 以来、取材のたびに、“いつか日本航空の人たちに直接、事故のことを伝えたい”と話し、直接日本航空に訴える機会を望んでいました。その願いがやっとかなう日。 カメラの前でもいつも自然体の真知子さんが、講演開始前の控室で見せた緊張した表情。今回の講演会が、日本航空の人たちに直接訴えられるこの機会が、彼女にとっていかに特別なものか伝わってきました。 ■「夢でもいい 幽霊でもいい 会いたい 声を聞きたい」 今回の講演会場に集まったのは、整備部門に配属される新入社員たち。機体のメンテナンスを担当する人たちに特に伝えたいと、真知子さんが希望しました。 「これからも一緒に生きるはずだった人、一緒に暮らし、笑い、共に子を育てる人はもういない」 「たったひとつのケアレスミスが、最大最悪の事故につながる。その自覚をもって仕事をしていただきたい」 “家族がそろってご飯を食べる”そんな当たり前の日々が突然失われたつらい経験を、事故を知らない若い世代へと伝えていきます。 そして−。 「40年がたった今でさえ、夢でもいい 幽霊でもいい。会いたい 声を聞きたい」 「きょうと同じ日があすもあさってもやってくる。そんな日々を守っていただきたいと心から願っています」 事故から40年。ようやく直接伝えられた、事故遺族の願い。 ■生きがいをくれる「パパの柿の木」 講演会で、真知子さんは1冊の絵本を朗読しました。真知子さんが作った絵本です。 “事故を知らない孫の世代に、命の尊さを伝えたい” 孫の結菜ちゃんが御巣鷹の尾根でぽつりと言った「パパのパパに会いたかった」という言葉を、事故から30年の2015年に形にしました。 以来、改訂版を作るなど、真知子さんの生きがいとなっています。 題材は、庭の柿の木。 正勝さんが種を植えて5年後、事故の年に初めて実をつけ、家族の成長の日々を見守り続けてきた特別な木です。絵を担当した亭島和洋さんは、元々、真知子さんが「いつまでも御巣鷹の尾根に登りたい」と通うジムで、トレーナーとして知り合いました。 ■今年も、パパに会いに 講演の1週間後、真知子さんは御巣鷹の尾根へ。 ホテルでギリギリまで冷やした正勝さんの好きなビールとコーヒー、 そして絵本を持って、今年も会いにきました。 墓標の前で、目を閉じそっと手を合わせ日々の暮らしのこと、日本航空での講演のこと、正勝さんに報告します。 報告のあと、真知子さんがみせた安どの表情。 それでも、 「本当は今でもそばにいてくれたらな」 真知子さんが話したその言葉に、40年がたったいまなお残る、遺族の悲しさが表れていました。

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