娘が聞いても「頼んでいない」と認知症両親が反応…定期購入に罠が

「実家に行ったらテーブルの上に健康食品の箱。 「定期コース」と書いてある。中を開けると、振り込み用紙が入っていた。「これ、頼んだの?」と両親に聞いたけど、 2人そろって「頼んでないよ」と首を振る(頼んでないのにきた? いや、どちらかが頼んだんだろう)」 【写真】宅配ボックスに荷物がギッチギチ… 実家を訪れて、認知症の母宛の健康食品を見つけた「まんぼうどうふちゃん」さん(manbou_ara50、以下まんぼうどうふちゃん)によるXでの投稿が話題に。 「うちの母も知らないうちに、通販で何か買っている…」「我が家の話かと思いました」など同じような経験を持つ人からの共感の声が。 また、「通販会社それぞれで対応は異なるかもしれませんが、ある程度高齢のお客様が多い会社が抱える問題」「定期購入の罠、シニア世代は特にひっかかりやすいから、しっかり確認しないと」と社会問題と捉える向きも。 契約によっては当人はもちろん、第三者の解約が難しいなか、まんぼうどうふちゃんの母が、通信販売で申し込んだ定期コースはその後どうなったのでしょうか? 詳細を取材しました。 テレビCMを見てすぐに注文してしまう まんぼうどうふちゃんの両親は、ともに認知症があり、時折実家に行き、様子を確認しています。 両親ともに頼んでいないという、未開封の箱。父に改めて確認した上で“お父さんはそういうのに興味ないタイプ。答え方にも自信がある”、そして母はまったく覚えていない可能性が高いと考えたまんぼうどうふちゃん。通販会社に確認するためにコールセンターに電話。 「今回の分は支払うので、次からの定期コースを止めてほしいとお願いしたら、コールセンターの方が“確実にお止めします”と言ってくれたのです。心底ホッとしました」と、まんぼうどうふちゃん。 しかもコールセンターのオペレーターから、「いつ頼まれたかお調べしましょうか?」と提案されたそう。 調べてもらったところ、 商品を申し込んだ日にちと商品を紹介するテレビを見て申し込んだことが分かりました。 「やっぱり、母が申し込んだのだとはっきりわかりました。母はいつもテレビを見ているからです」 さらに、オペレーターから「今度から注文が入ったらその都度、ご家族に確認する形にしましょうか?」との申し出まであったのです。 「定期コースで申し込んでおきながら、1回でコースを辞めるというのに、迷惑そうな対応を一切せず、確認の提案までしてくれるなんて!と感動しました。認知症の人からの注文などによる問い合わせが多いのかもしれませんし、会社として家族に確認するシステムを作っているのではないか、と思わせるようなスマートな対応で、感謝とともに、迷惑をかけたことを申し訳ないと感じました」 今後、電話があった場合は、娘であるまんぼうどうふちゃんに確認電話を入れてくれることになったそうです。 神対応もあれば、認知症の人を狙う商売も 実は以前にも同じ通販会社の商品のCMを見て、定期コースを電話注文したことがあったことも判明。その際は、父親が通販会社に電話し、ストップしてもらったとのことでした。 「私が知っているのはそれくらいですが、他にも知らない間に頼んでいる可能性もあります。同居していないからすべての行動を、管理することはできない」 今回のできごとを受けて、「テレビで見て、欲しくないのに電話しないでね」と言うと、母親は「うん!」と答えたそう。ただ、まんぼうどうふちゃんは、母が欲しいと思うとすぐに注文し、注文したら忘れてしまうことに頭を抱えています。 「商品を配達するドライバーの人からの、明らかに認知症と思われる方に配達したときは“ここに電話して、もう送らないように話してください”と言ったり、個人的に警察に相談したりしているという話はありがたいなと思いました」 また、通販会社で働いている人から、「高齢の方の注文は“受けたフリしてキャンセル”などの対応をしている通販会社もある」という情報がありました。 「“注文を受けるたびに家族に連絡”の進化版とも言える神対応だと感じました。家族も毎回連絡が来たら大変です。電話の向こうの注文主が認知症だとわかると、その方を傷つけないようにその場では話を合わせる対応をしつつ、その方からの注文はキャンセル、そこまでしてくれるということに感謝の気持ちしかありません」 しかし、このような神対応がある一方で、「高齢者や認知症の方を狙った商売があるのも事実」という声も。 「相手が絶対理解してないと分かった上でどんどん話を進めて高い契約を結ばせるようなところで、「こっそりキャンセル」と逆バージョンです」と、話すまんぼうどうふちゃん自身、著名な企業でもその対応に悪意を感じたことがあったそう。 「商品の注文の仕組みなどを理解していないことを承知で、“こっちが得ですよ”などと言って、乗り換えさせようとするんです。名前の通った会社でもそうでない会社でも、そういうことをする会社はあります」 独立行政法人国民生活センターのサイトでは、『1回限り』『お試し』と大々的に謳っているものの、実は定期コース申し込みが商品購入の条件だった、初回は『1回限り』の低価格で2回目の購入からは高額だったなどの被害による相談事例が紹介されています。 分かりづらいように表記されているなど、この問題は年配層に限ったものではありません(※1) 認知症に理解がある世界に ほかにも、詐欺などの犯罪に巻き込まれることも心配の種に。かつて実家に見知らぬ人が訪ねてきて、「昨日言いましたよね?」などと言いながら、家の中に上がり込もうとするトラブルがあったそう。 「父や母が、昨日のことを忘れていることを確信して狙われていたのです」 トラブルは未然に防ぎましたが、認知症になると日常のあらゆる場面で(守られるべき自分の家にいてさえも)危険と隣り合わせになることを実感しています。 それでも、今回の通販会社の対応やそのことを紹介したポストに集まった声には、優しい世界がある、と再認識。 「認知症への理解が全くない場合もまだまだ多い社会で、相談をしてもたらい回しにされることもしばしば。でも、通販会社や配達の方々の世界は認知症に理解があり、とても優しいと感じました」。 厚生労働省の研究班は、2040年には認知症や軽度認知障害(MCI)の高齢者が1200万人あまりになる(高齢者の3.6人に1人)と推計。国では認知症やMCIの人やその家族を地域で助けていく「認知症サポーター」の養成に取り組み、認知症の人たちにとってやさしい地域づくりを推進しています。 まんぼうどうふちゃんはXで認知症の両親を通じて、どういった症状があるのかを発信。 「これから認知症やその予備軍(MCI)がどんどん増えていくので、排除ではなく共存しようという流れになっています。通販会社のこのような対応はこれからの社会の見本になるのではないかと思います」。 お盆休み中、実家への帰省を予定している人もいることでしょう。父母、祖父母の健康状態の確認に加え、お買い物状況などもチェックしてみてはいかがでしょうか。 (※1)消費者庁の調査によると2020年時は、60代は8947件、70歳以上は5216件ですが、40代は11656件、50代は14191件。そして、20歳未満は6205件となっています(令和3年版消費者白書目次 第1部 第1章 第4節 (2)インターネット通販に関する相談 「定期購入」に関する消費生活相談件数(性別・年齢層別・2020年)より) (まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・宮前 晶子)

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