オールドメディアはなぜ信用を失ったのか? 追及・糾弾一辺倒ではなく、ときに相手を思いやり、事件や騒動の当事者たちの胸の内を引き出す鈴木エイト——。取材者でありながら当事者となることへの責任をまっとうし、自らの使命と向き合う覚悟を日々忘れない。そんな鈴木エイトの作品は「私小説」ならぬ「私ノンフィクション」と評される。 さまざまな会見で「NG記者」となりながら真実を追い続ける著者が独自の取材手法をはじめて明かし、この時代の報道の問題点、ジャーナリズムのありかたを模索した『NG記者だから見えるもの』より一部抜粋・再編集して、本当に知るべき日本の深層をお届けする。 『「HPVワクチンのせいだ」と思い込まされての供述…集団訴訟で“NG記者”鈴木エイトが目撃した“矛盾だらけ”の反対尋問』より続く。 さらに衝撃的だった大阪地裁での本人尋問 「スローニュース」の配信後になったが、2024年9月、大阪地裁で開かれた本人尋問における反対尋問では、さらに衝撃的な「カルテの内容」が明らかとなった。 原告女性3人への本人尋問から2名を抽出する。この日2人目の尋問となった原告番号25番の女性への本人尋問(主尋問と反対尋問)において、前月の東京地裁での反対尋問をある意味で上回るような家庭内の因子が示された。 まず、原告代理人による主尋問で示されたのは、やはりHPVワクチン接種前は健康だったが、接種後に多様な症状が出たという内容だった。 家族との関係について訊かれた際の原告の回答は「家族みんなでショッピングモールへ」「USJやディズニーランドに行った」「父方の祖父母のところに遊びに」「家族は仲良いほう」といったものだ。 GSK代理人による原告25番の女性への反対尋問。この期日の前回、傍聴取材を行った東京地裁での3番目の原告の反対尋問の内容も衝撃的だったが、この日、示された内容はさらに衝撃的だった。 GSK代理人は医療記録などから、家庭や学校における当時の原告女性を取り巻く状況とその問題点を指摘していく。 小学3年から5年時のカルテに「腹痛、白色便」「小一から意識消失」「めまい、立ち眩み、耳鳴り」「学校生活に疲れた」「浮遊感」「心因的要素が大きい」「小4は体調悪く、あまり学校に行けなかった」「腹痛と吐き気」「側頭部と後頭部頭痛」「家にいる時、胸の痛み」「過呼吸」等の記述があることについて、原告女性は「母が心配症」「記憶ない」などと返答。 カルテには、家庭環境について「母に離婚勧めていた」「夫婦仲」「父が母に暴力」「回し蹴り」との記述。GSK代理人から「覚えていますか?」と訊かれた原告女性は「曖昧な感じ」と返答。父親から手を上げられた記憶について尋ねられると「覚えがない、関心ない」と答えていた。 「誤導」という批判 私は「関心ない」との原告女性の返答を聴き、強い違和感を抱いた。 カルテに「夫婦仲が悪い」「父親が消費者金融から借金」「浮気」との記述があることについて「覚えてない」「借金は知らない」と返答。 小学5年時に、原告の父親が脳腫瘍に罹患したことには「生まれる前」と否定。 カルテに記載されていた母親へのヒアリングの記述には「感情的に怒ってしまう」「カステラを包丁でバン! バン! と切って(娘の)目が点に」「子ども虐待」「弟、可愛いと思えず」「子どもが死んだらと考える」とあった。だが、母親の「精神的不安定」について訊かれた原告女性は「感じることがなかった」「隠していたと思う」と否定していた。 カルテからGSK代理人は「学級崩壊」「イジメ」「自殺願望」などを指摘する。カルテに「怖い夢を見る」「母が斧で〜」との記述があることが指摘されたが原告女性は「覚えていない」と否定。 小学6年から中学1年時のカルテに「クラス、学級崩壊していた」「級友のことでしんどかった」「身体化しやすさあり」「身体化症状、ストレス」「友人とのトラブル」「蕁麻疹」「頭痛」「対人緊張」「物忘れ」「被害妄想」等が記述されていた。 ここで原告代理人から、「カルテを示さず質問するのは誤導」「カルテを示して質問してほしい」と指摘が入る。その際、原告代理人からはこんな発言があった。 「傍聴席に被告代理人の質問をそのままアピールする人もおられるので」 これは東京地裁での傍聴取材時のレポート記事を書いた私のことを指しているのだろう。私は自分の見解も適宜挟んではいるが、事実に基づいて法廷や会見で見聞きしたことを客観的に記しており、このような指摘が私に対してなされたことは残念である。 『「父親からの数十分にわたる暴力」「学校での退学トラブル」…HPVワクチンの薬害を訴える原告女性の痛々しい家庭環境』へ続く。 【つづきを読む】「父親からの数十分にわたる暴力」「学校での退学トラブル」…HPVワクチンの薬害を訴える原告女性の痛々しい家庭環境