水は生命の源。人間の体も約60%が水であるだけに、水分補給の良し悪しは命を左右しかねません。あなたのその水の飲み方、はたして正解なのでしょうか……? 前編記事『あなたの水の飲み方、実は大間違いかも……医師が教える「正しい水分補給」の方法』に続き、「医学的に正しい水分補給法」について、済生会横浜市東部病院患者支援センター長の谷口英喜さんに聞きました。 たにぐち・ひでき/1966年生まれ。医学博士・麻酔科専門医。熱中症・脱水症対策でテレビ番組に多数出演。主な著書に『いのちを守る水分補給』『熱中症からいのちを守る』など 舌が乾いて、手が冷たいと要注意 ただしアルコールは水分補給にならないどころか、むしろ強い利尿作用で脱水を引き起こします。とくにビールは利尿効果が強く、1ℓ飲むと体から1.1ℓもの水分が失われてしまう。飲むときは必ず、ほかの飲み物で水分を補うよう心がけましょう。 こうやって水分補給に気をつけていても、炎天下に長時間いたり、あるいは激しく運動して汗をかいたりすると、脱水症になりかねません。たとえ室内でも、風通しが悪く湿度が高ければ脱水症のリスクは高まります。次の5つの項目のうち、1つでも当てはまったら要注意です。 (1)握手すると手が冷たい (2)舌の表面が乾いている (3)親指の爪の先を押すと、赤みが戻るまで3秒以上かかる (4)手首の皮膚をつまむと、元に戻るまで3秒以上かかる (5)わきの下が乾いている もし脱水症の疑いがあったら、どう対処すればいいのでしょうか。水分を補給すべきなのはもちろんですが、よく「スポーツドリンクを飲むべき」と言われます。たしかにただの水よりは効果的ですが、医学的な観点からはもう一歩進んで、経口補水液を飲んでほしいと思います。 脱水症になると、体は水分だけでなく塩分とカリウムを求めます。これらを一気に摂取できるのが、経口補水液なのです。しかもナトリウムとブドウ糖が特定の割合で配合されていると、小腸で「ナトリウム・ブドウ糖共輸送機構」が働き、吸収力と吸収速度がともにアップします。脱水から回復するには、スポーツドリンクよりも効果的です。 自宅でも簡単に作れる経口補水液 脱水症が疑わしい場合はもちろん、たとえば炎天下で長時間にわたって作業するときなどは、念のため経口補水液を準備しておくと安心です。もし脱水状態になってしまった場合は、まず500mlをできるだけ早めに飲み干し、その後は一気に飲むと効果が薄れるため、もう500mlを30分かけてゆっくりと飲んでみてください。 いまや経口補水液は薬局や一部のコンビニでも販売されていて、日常的に目にする機会が増えてきました。たとえ身近で売っていなくても、食塩を3gとブドウ糖10〜20g(手に入らなければ砂糖20〜40g)を水1ℓに溶かすだけで、自宅でも簡単に作ることができます。 もし自家製の経口補水液が飲みにくければ、そこにレモン半個分ほどの果汁を加えてみてください。吸収率は少し下がってしまうものの、グンと飲みやすくなります。ただし経口補水液は、あくまでも非常時に水分などを効率的に吸収するためのものなので、普段から水代わりに飲むものではありません。 脱水症は死を招きかねない恐ろしい症状ですが、普段から生活習慣に気をつけていれば、高い確率で予防できるものでもあります。3度の食事をしっかり食べて、こまめに水分を補給する——そんなちょっとした心がけこそが、酷暑から身を守る最良の方法なのです。 「週刊現代」2025年08月18日号より 【こちらも読む】『あなたの肝臓が危ない...「食品業界のタブー」と呼ばれる《果糖ブドウ糖液糖》について飲料メーカーへ《大規模アンケート》を実施「なぜ使用?」「健康上の問題はない?」』 【こちらも読む】あなたの肝臓が危ない...「食品業界のタブー」と呼ばれる《果糖ブドウ糖液糖》について飲料メーカーへ《大規模アンケート》を実施「なぜ使用?」「健康上の問題はない?」