日本で「日本円」が使われているのは当たり前ではない?…ハイパーインフレを引き起こしたジンバブエに学ぶ「通貨」が用いられるための前提

黒田日銀の下で10年にわたって続けられた「異次元緩和」は、日本の財政運営に大きなゆがみをもたらした。 トランプ政権の関税政策などに象徴されるように、不確実性が高まる世界経済の中で、果たして日本の財政の行方はどうなるのか。遅まきながら金利上昇局面に入った日本は、近い将来、どのような危機に直面する可能性があるのだろうか。 第45回石橋湛山賞を受賞した必読書『日本銀行 我が国に迫る危機』より、日本財政の注目ポイントを、アイスランドとギリシャで起きた「阿鼻叫喚の経済危機」を例に解説した章を紹介しよう。 『日本銀行 我が国に迫る危機』連載第1回 なぜ日銀が発行する日本銀行券が使われるのか 通貨には 1.「(モノやサービスの)価値の尺度」 2.「決済(交換)手段」 3.「価値の保蔵手段」 という3つの機能があります。我が国であれば、私たちは日銀が発行する日本銀行券、円という通貨を、何の疑いもなく長年にわたって使い続けてきているのはなぜでしょうか。 我が国に限らず、中央銀行の発行する銀行券が、あまねく、その国の津々浦々に至るまで、この機能を果たせるようになるためには、単に国会で定める法律で、「日本銀行が発行する円建ての日本銀行券と政府が発行する貨幣が日本国の通貨である」と明確に定めておけばよい、というものでもありません。 このように法律で定められた通貨は"法貨"といわれます。確かにそうした法制度が確立されているもとにおいて、当該国の国民は、何らかの取引の対価として"法貨"を相手から渡されたときは、その価値を認めて受領しなければなりません。 しかし、自ら"法貨以外の通貨"を保蔵したり、"法貨以外の通貨"に価値を認める他人とやり取りしたりすることまでを、当該国が法律によって禁ずることは事実上かなり難しいでしょう。国民の基本的人権を十分に尊重する一般的な民主主義国家においてはなおのこと困難なはずです。 実際、これまでの経験からも、例えば財政破綻した新興国等で、自国通貨に代わり米ドル等他国の信用力ある通貨が実態として流通するようになり、当該国の政府としてもそれを追認ないしは黙認せざるを得なくなるような例はこれまでにいくつも存在しています。 ジンバブエでは米ドルが流通 2008年11月、月間物価上昇率が795億%というハイパー・インフレーションを招来したジンバブエでは、国民が法貨ジンバブエ・ドルを見限り、流通するのは米ドルになってしまいました。 "お上"から、「この国の"法貨"はジンバブエ・ドルであって、米ドルではない」といくら言われようと、またいくら法律にそう書いてあろうと、ろくに物も買えないのであれば、自国通貨をいくら持っていたところで意味はなくなります。 似たような例は、財政破綻したアルゼンチンやロシア等、いくつもあります。そうした国では、米ドルが事実上の通貨として国民の間で流通することを、結局政府も追認、ないしは少なくとも黙認せざるを得なくなるのが普通です。 これらの例が物語るように、通貨が人々によって"信認"され、広く使われるのは、それを支える法制度があるから、ではないのです。通貨価値の安定があってこそ、それが広く人々に認められてこそなのです。 だから各国の中央銀行は、自国の通貨価値を安定させるために金融政策を運営するのです。 『「銀行の信用失墜」「国外への資金流出」…財政運営に行き詰まった国々の悲惨な末路とは』へ続く。 【つづきを読む】「銀行の信用失墜」「国外への資金流出」…財政運営に行き詰まった国々の悲惨な末路とは

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