10年前、20年前、30年前に『FRIDAY』は何を報じていたのか。当時話題になったトピックを今ふたたびふり返る【プレイバック・フライデー】。今回は10年前の’15年8月21・28日号掲載の『妻子持ちの副店長が深夜2時に自宅訪問、何度もSEXを強要 サイゼリヤ20代女性定時社員を自殺に追い込んだセクハラ地獄』を紹介する。 ‘14年12月に自殺を遂げた外食チェーン大手『サイゼリヤ』の定時社員(非正規社員)だったA子さん(20代)。彼女の死をめぐって両親は‘15年7月21日、会社と元社員で副店長だったX氏らを相手取り、約1億円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。訴えによればA子さんの死はX氏のセクハラに悩んでのものだったという。『FRIDAY』は親族の男性に話を聞いた(年齢・肩書はすべて当時のもの。《》内の記述は過去記事より引用)。 繰り返された執拗なセクハラ行為 A子さんを子供の頃からずっと可愛がってきたという親族のB氏は『FRIDAY』の取材にこう語った。 《「A子はサイゼリヤに殺されたんだと思っています。優越的な立場を利用した副店長は、セクハラ行為を繰り返したうえ強引に肉体関係を結んで自殺にまで追い詰めたんです」》 A子さんが東京近郊にあるサイゼリヤの店舗で働きはじめたのは、高校を卒業して医療系の専門学校に入学した’13年4月だった。バイトを始めた頃は「サイゼリヤで働くのが楽しい」と話していたという。コンビニでのバイト経験があり、愛嬌もあったA子さんは当時の女性店長に定時社員になることを勧められて専門学校を中退。定時社員は等級が上がれば正社員に昇格できることから、A子さんはいっそう仕事に励んだ。 しかし、同年12月に女性店長が他店へ異動したことで、歯車が狂い出す。A子さんの指導役を任された副店長のX氏が、A子さんに執拗なセクハラ行為を始めたというのだ。X氏は同じサイゼリヤの定時社員の女性と結婚し、子供が生まれたばかりだった。 《レジの横でしゃがんで作業をしていたA子さんの上に座ろうとする、前触れもなく後ろから抱きついたり、耳や髪、足を触る……。肉体的な接触だけではなく、副店長という立場を利用して給与明細や職務日誌(トレーニングノート)にメッセージを書き込むこともあった。 〈私はあなたが好き。(中略)A子のことはちゃんと見ています〉 「A子が勤めていた店舗には、20〜30名のスタッフがいましたが、彼らの目の前で堂々とXはA子にセクハラを行っていた。女性店長の異動に伴い、他店からやってきた男性店長も『副店長とはもうヤッたの?』と聞いてくるなど、職場は針のむしろになっていたのです」(B氏)》 「私は底辺に落ちてしまった……」 こういったセクハラ行為をA子さんは母親や友人に相談していたが、X氏は指導役でA子さんの昇格にも関わっていたために、強い態度に出ることができなかったようだ。’14年8月にX氏が他店の店長となった後も『A子は、ずっとオレが見ていく』と公言。会社の書類からA子さんの一人暮らしのアパートの住所を割り出し、深夜2時に突然訪問するなどして性行為の強要を繰り返したという。 《他店に異動してもなおセクハラ行為を続けるX氏に絶望し、’14年9月の中頃、A子さんはついにX氏と肉体関係を持ってしまう。このとき、親しい友人に「底辺に落ちてしまった……」と打ち明けた。 その後も性交渉を持とうとするX氏は、要求を拒絶されると、「一緒に死のう!」と迫り、’14年末、A子さんは自室での首つり自殺を選んだ──》 ‘15年2月にA子さんの両親と面会したX氏は顔面蒼白で詫びた一方で「自分と彼女は友人なので(性行為があっても)セクハラにはあたらない」として自分の非を認めようとしなかったという。 サイゼリヤ広報部は当時、『FRIDAY』の取材に対して次のようにコメントをしていた。 《「故人のご冥福をお祈りするとともにご家族様におかれましては心からお悔やみ申し上げます。提訴されたとのことですが、現段階では訴状が届いておりません。弊社としましては、今後訴状の内容を精査し担当弁護士と協議の上で、訴訟手続きの中で適切な対応を致します」》 A子さんの葬儀では、大好きだったサイゼリヤのエプロンが棺に納められたという。 日記に綴られたセクハラの日々 裁判で遺族がセクハラの証拠として提出したのは、A子さんのPCに遺されていた日記だった。そこには日々の出来事が詳細に記録されており、X氏の勤務中のボディタッチが激しく「距離感がおかしい」と記すなど、セクハラや暴言を吐かれたことへの思いが書かれていた。その一方で、X氏を指導役として尊敬しているような文言もあった。 やがて、A子さんが一人暮らしを始めると、X氏は毎日のように押しかけてくるようになる。性的関係となってからの日記には、たびたび「関係を終わらせたい」と綴られるようになった。遺族はX氏との不倫関係に葛藤して精神的に不安定になったA子さんが、X氏から「一緒に死のう!」と言われて動揺したことが自死の引き金になったと主張した。 一方、X氏の主張はまったく異なっていた。不倫については認めたものの、日記の内容については「まったく別人のようで、自分の前で見せていた素振りと全然違う」と証言。A子さんのほうが交際には積極的で、家族と自分のどちらを選ぶのか迫ったのだという。X氏が家族を選ぶと伝えたことで、A子さんを死に追いやってしまったと主張した。 X氏は証拠としてA子さんとのLINEのやりとりを提出。店長や当時の同僚なども、不倫関係は知らなかったし、2人の関係を怪しいと思ったこともないと口を揃えて証言した。 ’18年3月にサイゼリヤと遺族の間で和解が成立。X氏も遺族に弔慰金を支払うこととなった。サイゼリヤ側は「訴訟の提起と報道により受けた社会的・経済的信用低下の回復のため訴訟を継続してきたが、当社の要望がほぼ採用された和解条項となった」とコメントしている。 X氏が証拠としたLINEは裁判の行方に大きく影響したと思われる。現在のわれわれからみれば、セクハラの被害者が加害者に対して、思っていることとは真逆の言動をしたり、メールを送ったりすることは常識だ。LINEの内容はどこまでがA子さんの本心だったのだろうか。 A子さんが亡くなってしまった以上、彼女の心のうちを知るすべはない。