【解説】石破首相が意欲みせる“戦後80年見解” 新たな分断への懸念も 安倍談話の深層…あえて“盛り込まなかった”言葉とは

戦争が終わって80年の15日、石破首相は終戦の日の式典で「反省」という言葉を首相としては13年ぶりに用いて挨拶しました。こうした中、石破首相が意欲を見せる“戦後80年見解”について伊佐治健・解説委員長と考えます。      ◇ 石川みなみアナウンサー 「戦後50年以降、節目の年にはいずれも首相談話が発表されてきましたが、今年は発表されていません。石破首相は見送ったんでしょうか」 伊佐治健・解説委員長 「石破首相は閣議決定する政府としての『談話』は見送り、自らの思いを込めたメッセージを“首相見解”などの形で今後、発表することを模索しています」 「しかし、保守系の議員らの間で石破首相の新たな“見解”に対して警戒と反発が高まり、政治問題化しています」 ■“見解”がなぜ政治問題化するのか 石川アナウンサー 「なぜ、問題に発展するのでしょうか」 伊佐治委員長 「歴代の首相談話を巡っては、これまで、先の戦争で日本が中国などに対し行ったことは『侵略』と認めるかどうかなど論争がありました。これらはいわゆる“保守派”や“リベラル派”といった個人の信条や、イデオロギーに密接に関わり、国内外で対立を生みやすい問題です」 「石破首相がこうした歴史認識に関わる個人的“見解”を示せば、新たな分断を生む可能性が懸念されているんです」 石川アナウンサー 「歴史認識をめぐる意見の対立は根深い訳ですが、今は落ち着いているんですか?」 伊佐治委員長 「この問題に一定の“決着”をもたらしたのは10年前に、当時の安倍政権がまとめた『戦後70年談話』です。この談話では、日本の行為を『侵略』と直接言及しませんでしたが、『侵略』『おわび』『反省』といった言葉を含めるなど、リベラル派に配慮しました」 「一方で、ヨーロッパやアメリカが行った植民地支配にも合わせて言及し、『日本だけが悪かったわけではない』と反発する保守派への配慮もありました。日本も悪かったけど、欧米も悪かった、というスタンスです」 ■左右両派に配慮した70年談話 石川アナ 「左右両派に気を配ったんですね」 伊佐治委員長 「海外の、特にアメリカの目も気にしていました。実は、70年談話では、戦後、アメリカなどの連合国が日本を占領した時期の重要な出来事にほとんど触れていません。例えば、戦勝国が敗戦国を裁いた東京裁判は一方的で日本だけが悪者にされていると保守派を中心に反発があります。憲法も同様にアメリカから押しつけられたとという声もあります」 「これらの扱いによっては当時、安倍首相を支持していた保守派から不満が出たでしょう。逆に否定的な姿勢を示せば、日本は戦争責任を認めないのかと海外から疑われることにもなります」 「当時、安倍首相と直接話した政治家によれば、安倍首相は占領されていた時期について、談話に盛り込まない方針を早くから決めていたそうです」 ■70年談話「世界史を相手に…」 当時、談話の作成に関わった兼原信克・元内閣官房副長官補に安倍談話の狙いを聞きました。 兼原信克氏 「世界史を相手に書いた原稿なんですよね。もちろん国内の左派と保守派をなんとかして1枚の歴史認識におさめて次の子供たちに託したいというのがあったんですけども、それは世界全体から見てですね、『そうだよね』と言ってもらわないと意味がないわけですよ」      ◇ 石川アナウンサー 「世界の目も意識してまとめられたものなんですね」 伊佐治委員長 「70年談話で重要な論点は言い尽くされ、これ以上は必要ないとも言われますが、こうした様々な妥協も含め慎重に中身を詰めたものでした」 ■石破首相の“こだわり“は 伊佐治委員長 「石破首相は、70年談話が『国内の政治システムは戦争の歯止めたり得なかった』と述べた部分にこだわりを見せています。石破首相と交流があり、今週も面会した有識者の寺島実郎氏は、次のように述べました」      ◇ 日本総合研究所・寺島実郎会長 「どうして戦争を止める歯止めになり得なかったのかってことについて、1行で済ましてるけれども、これについてね、もう少しまじめに真剣に考えてみようと。それを教訓にしてね、過去の思い出話じゃなくて、未来の日本、生きていく日本人のね、教訓としてしっかり考えてみようっていうスタンスが今、彼(石破首相)の言葉の中で僕は感じるわけですけども」      ◇ 伊佐治委員長 「寺島氏は政治システムを語るとしても、過去の歴史認識まで踏み込む必要はなく、アジア諸国に目を配った前向きな発信など未来志向の内容を発信するべきとの考えを示しました」 「また先ほどの兼原氏も、政治システムにこだわるなら、緊急事態における各省庁の具体的な対応などについては語る意味があると述べています。2人とも未来志向という点は共通しています」 石破首相は、15日このように述べました。 石破首相 「戦争の記憶を風化させない。このような戦争2度と行わないというような観点が大事であるというふうに考えております。今までの談話というものを踏まえた上で、そこにおいて提起をされているもの、なお我々が考えていかねばならないもの、そういうものについて申し上げるというようなことも一つの意義があると考えております」      ◇ 伊佐治委員長 「“首相見解”は、政権の命運に直結する可能性があります。戦後80年を迎えた日本のリーダーの座にある石破首相がいつ、どのような内容を語るのか、緊迫した局面が続きます」

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