米国のトランプ大統領とロシアのプーチン大統領が15日(日本時間16日)、米アラスカ州アンカレジで行った共同記者会見での発言は以下の通り。 プーチン大統領 (トランプ)大統領、そして皆さま。今日の交渉は、互いを尊重し合う建設的な雰囲気の中で行われ、とても有意義なものになった。協議は非常に徹底して行われ、とても有益だった。アラスカに招いてくださった米国の大統領に改めて感謝する。 太平洋に隔てられてはいるが、両国は近い隣人であり、この地で会うのは理にかなっている。私が飛行機を降りた時、「こんにちは、親しい隣人。お元気で、こうしてお会いできてうれしい」と申し上げた。これは隣人らしい言葉だと思う。互いにかけ合える温かい言葉だ。 ロシアと米国はベーリング海峡に隔てられているが、両国の島々の距離はわずか4キロしかない。我々は近い隣人であり、それは紛れもない事実だ。 アラスカはまた、露米両国の共通の歴史と遺産の舞台であり、多くの重要な出来事に関わっている。「ロシア領米国」時代の豊かな文化遺産が残っており、正教会の教会や700以上のロシア由来の地名がある。 第2次世界大戦中、このアラスカは、(第2次大戦中に連合国向け兵器供与を加速させた)「レンドリース法」に基づき軍用機や装備を供給する「伝説の空の橋」の出発点となった。 それは広大な氷原を越える危険で過酷な航路だった。しかし、両国のパイロットは勝利を早めるため命を懸け、共通の勝利のために全力を尽くした。 私は最近、ロシアの(東部)マガダン市を訪れたが、そこには露米両国のパイロットを追悼する記念碑がある。そこには米国旗とロシア国旗が掲げられている。ここアラスカにも同様の記念碑があることを承知している。 この近くには、その危険な任務で命を落としたソ連人パイロットが眠る軍人墓地もある。彼らの記憶を丁寧に守ってくれている米国の市民と政府に感謝する。それは尊い行いだ。 我々は両国が戦友として助け合い、共通の敵を打ち破った歴史的な出来事も常に忘れない。こうした遺産は、困難な状況にあっても、互いに利益となる対等な関係を再構築・発展させる助けになると確信している。 4年以上、ロシアと米国の間で首脳会談は一度も行われていない。それは長い年月だ。この期間に両国の関係は冷戦以来の最低水準にまで落ち込んだ。それは両国にとっても、世界にとっても利益にならない。 遅かれ早かれ、この状況を是正し、対立から対話へ移行する必要がある。そのための首脳会談は長らく待たれていた。もちろん、それには入念な準備が必要であり、その作業は進められてきた。 私はトランプ大統領と非常に良好な関係を築いており、何度も率直に電話で話した。(米国の)大統領特使(スティーブン・)ウィトコフ氏も何度もロシアを訪れた。双方の顧問や外務当局のトップ同士も常に連絡を取り合っていた。 周知の通り、協議の中心的な課題の一つはウクライナ情勢だった。(トランプ)大統領と、その政権がウクライナ紛争の解決のため、本質に踏み込もうとしている姿勢を評価する。 何度も述べてきているが、ウクライナ情勢は我が国の根本的な安全保障上の脅威と関わっている。さらに、我々はウクライナを兄弟の国と考えてきた。今の状況では奇異に聞こえるかもしれないが、両民族は同じルーツを持ち、起きていることは我々にとって悲劇であり大きな傷だ。だからこそ、我々はこの紛争を終わらせたいと心から願っている。 同時に、持続的な解決のためには、紛争の根本原因を除去しないといけないと確信している。 そのためにはロシアのあらゆる正当な安全保障上の懸念を考慮し、欧州と世界全体における公正な安全保障の均衡を回復しなければならない。 また、トランプ大統領が今日述べたように、ウクライナの安全も確保されるべきだと私も同意する。当然、我々もそのために協力する用意がある。 我々のこうした理解がその目標に近づき、ウクライナ和平への道を開くことを望む。キーウ(ウクライナ)や欧州各国が建設的に受け止め、妨害しないことを期待する。彼らが水面下の駆け引きで挑発を仕掛け、新たな進展を潰すようなことはしないでほしいと思う。 (トランプ)新政権が発足してから、両国の貿易は伸び始めた。これは非常に象徴的であり、実際に20%の成長を記録している。 見ての通り、協力の可能性は多岐にわたる。ロシアと米国の投資・ビジネス協力には大きな潜在力がある。貿易、デジタル、ハイテク、宇宙開発など、両国は互いに多くを提供し合える。 北極圏での協力も十分可能だ。ロシア極東と米国西海岸など、国際的な接点もある。総じて、両国が新しいページを開き、協力に戻ることが非常に重要だ。 ロシアと米国の国境である「日付変更線」がここから遠くない場所にあるのは象徴的だ。人は文字通り「昨日から明日」へ一歩で進めるが、政治においても同じことが実現できると望んでいる。 トランプ大統領との協力、そして友好的で信頼に満ちた対話に感謝する。双方が結果を重視していることは重要であり、米大統領が何を達成したいのか明確なビジョンを持っていることが分かった。 彼は自国の繁栄を心から願っている。同時に、ロシアにも国益があることを理解している。 今日、合意したことがウクライナ問題の解決だけでなく、ロシアと米国の実務的な関係修復の出発点になることを期待する。 最後に、もう一つ申し上げる。2022年、(バイデン)前政権との最後のやり取りの際、私は「(ロシアとウクライナとの)武力衝突という後戻りできない事態に至らせてはならない」と説得した。その時、私は、(ロシアとウクライナとが軍事的対立に発展させるのは)重大な過ちだと率直に伝えた。 今日、トランプ大統領が「自分が当時大統領であれば戦争は起きなかった」と述べたが、私もその通りだと確信している。 私はトランプ大統領と非常に良好で信頼できる実務的な関係を築いたと考えている。この道を進み続ければ、ウクライナ紛争の終結に向けて確実に前進できると信じている。 トランプ大統領 (プーチン氏に向けて)大統領、本当にありがとう。大変意義深く、非常に生産的な会談だったと思う。 多くの点で合意した。合意に至っていない重要な点はいくつかあるが、一定の進展はあった。合意が成立するまでは合意ではない。 後ほど、NATO(北大西洋条約機構)や私がふさわしいと思う何人かの人々に電話をする。もちろん、(ウクライナの)ゼレンスキー大統領にも電話をして、今日の会談について伝える。最終的には、彼ら次第だ。 マルコ(・ルビオ国務長官)、スティーブン(・ウィトコフ中東担当特使)、そして、ここに来たトランプ政権の偉大な面々の発言に、彼らは同意しなければならないだろう。スコット・ジョン・ラトクリフ(中央情報局長官)にも感謝する。 私たちには素晴らしいリーダーたちがいて、素晴らしい仕事をしている。ロシアの素晴らしいビジネス関係者もここにいる。皆が私たちとディール(取引)をしたいと思っているだろう。我々は短期間で世界のどこよりも暑い国になった。私たちはこの事態を終わらせようとしている取引を楽しみにしている。 今日は大きな進展があった。私はプーチン大統領、つまりウラジーミルと素晴らしい関係を築いてきた。何度もタフな会談や良い会談を重ねてきた。 「ロシア、ロシア、ロシア……」というデマによって邪魔され、対処が少し難しくなったこともあったが、プーチン大統領はそれを理解してくれた。彼はおそらくこれまでのキャリアの中で、そのようなことを何度も目にしてきたと思う。しかし、私たちは「ロシア、ロシア、ロシア……」というデマに我慢しなければならなかった。そこで言われたことは非常に犯罪的だった。ビジネス面でも、私たちが対処したいあらゆる問題でも、国として対処するのが難しくなった。しかし、これが終われば、良いチャンスがめぐってくるだろう。 手短に言うと、これから何本か電話をかけて、何が起こったのかを伝えるようと思っている。私たちは非常に生産的な会議を行い、多くの点で合意に達した。残っているのはほんのわずかで、それほど重要ではないものもある。おそらく最も重要なのは一つだが、合意に到達する可能性は非常に高い。 プーチン大統領と(ロシアの)チーム全員に感謝したい。皆さんの多くの顔を知っている。そうでなければ、新聞でいつも目にしている。ボス(プーチン氏)と同じくらい有名だ。私たちは長年にわたり、有意義で生産的な会議を開いてきたと思っている。そして、今後もそうありたいと願っている。今こそ、最も生産的な会議を開こう。 私たちは毎週、5000人、6000人、7000人、いや何千もの人々が殺害されるのを止めるつもりだ。プーチン大統領も同じように望んでいます。改めて、大統領に心から感謝を申し上げる。近いうちにまた話せると思うし、おそらくまたすぐに会うだろう。ウラジーミル、本当にありがとう。 プーチン氏 次はモスクワで(会おう)。 トランプ氏 それは面白い。批判されるかもしれないが、可能性はある。 (ニューヨーク支局 金子靖志、ワシントン支局 中根圭一)