65年に及ぶ「超ロングセラー」となった…1年に「7.2億食」売れる「のりたま」の秘密

白いご飯にかけるだけで、彩や味をプラスしてくれる「ふりかけ」。スーパーの棚を見ると実に多くのふりかけが並んでいます。その中には子どもの頃から食べていた!というふりかけがあるかもしれません。2025年で発売から65年を迎えた丸美屋の「のりたま」もそのようなふりかけのひとつではないでしょうか。 筆者自身も馴染み深い「のりたま」。ロングセラーの理由を丸美屋食品工業株式会社 マーケティング部ふりかけチーム主任濱田洋平さんにお聞きしました。 発売から65年。今でも売れ続ける理由は? のりたまが発売されたのは1960年、今から65年前のこと。開発のきっかけは、創業者の阿部末吉氏が泊まった旅館の朝食に出された「たまご」と「のり」。当時たまごとのりは贅沢品。普段なかなか食べることができないこれらの食材を家庭で気軽に食べられないか?と考えて開発に乗り出しました。のりとたまごを気軽に食べられるような商品が少ない中での発売だったこともあり、「のりたま」は一気にヒット商品に。そうなるのは理解ができますが、たまごやのりが贅沢品ではなくなった現在でも「のりたま」は売れ続けているのはなぜだろうと疑問がわいてきます。 当時とは消費者のライフスタイルや食へのこだわりなどが異なっていますが、それでも売れ続けるのは仕組みがあるからです。のりたまの味のバランスはもちろんですが、白飯にかけた時の彩りの良さ、子どもでも簡単にかけられるようなパッケージ、賞味期限が比較的長く常温で保存ができる使い勝手の良さ、手に取りやすい価格帯です。一般的な家庭で使うにあたってポイントになるところを、ほぼ網羅していると言ってもいいでしょう。ひとつの強烈なアピールポイントではなく、複数の要因が重なったことでロングセラーになったというわけです。 食品を買い続けるためには、美味しさがもっとも重要なカギとなります。のりたまは、時代のニーズなどに合わせて8回リニューアルをしていますが、特に大きく変化したのが1996年4回目のリニューアルでした。それまでたまごの素材は粒が小さい「サクサクたまご顆粒」のみでしたが、このタイミングで粒が大きめの「ふっくらたまごそぼろ」を加えて2種にしました。これによって食感とたまごの味わいがアップし、見た目にもたまごが増えた印象が強くなったのです。 さらに2020年からは、「ホロッとたまご顆粒」が加わり、現在は3種類のたまご素材が使用されています。 ふりかけは家の外でも使うという発想 ふりかけは、パウチタイプもあれば、小分けタイプ、容器入りなど販売の形状が違っています。パウチタイプは家庭の食卓で使うようなものですが、小分けタイプや容器入りはお弁当でも活躍。筆者も子どものお弁当にふりかけをつけたことが何度もあります。 ふりかけの食感の好みは大きく2つに分かれると思います。ご飯にかけた瞬間のサクサクとした食感が好きという人と、ご飯にかけてしばらくした後のしっとり感が好きという2パターンです。前者の場合はお弁当にふりかけをかけずに小分けタイプや容器入りを持たせることで対応でき、後者の場合は家でパウチタイプをかけておけばいいだけ。食べる人の好み、そして持ち運びにも対応したことで、ふりかけがいつでも使える食材に変わっていったのです。 丸美屋のふりかけはなぜ種類が多い? 丸美屋のふりかけは、ラインアップの多さも特徴です。基本的には半年に1回くらいのペースで新商品が発売になっていて、これに合わせて消費者の好みやトレンドなどを調査して味を決めていきます。 ふりかけは、子どもの年齢によって使う頻度や好まれる味が変わることが多い食材でしょう。子どものお弁当を作っている家庭ではふりかけの出番が多くなりますが、お弁当を作らなくなるとふりかけを買わなくなる場合もあります。 また味に関しては、子どもがいる家庭では、のりたまをはじめ味道楽やすきやきなどが好まれる傾向に。一方で、子どもがいない家庭では、海苔わさびや梅かつおなど、少々嗜好性のある味が選ばれることも。 そして期間限定や季節に合わせた味も販売されます。例えばのりたまからは、ひよこのチップが入った「ひよこチップ入りのりたま」や「大粒のりたま たまご増し」が販売され、混ぜ込みわかめのシリーズからは「混ぜ込みわかめ 牛松茸」「混ぜ込みわかめ 栗ごはん風」が販売されています。 さらに「ぺパたま」は期間限定で販売していたものですが、ネット上などで話題になり通年販売になったものです。このように定番商品の他にも、期間限定の味を販売することで季節感やワクワク感を提供してくれています。 コメ高騰の現在、パン専用のふりかけを作らない理由 かけるだけで味をプラスできることや昨今のコメ価格の高騰を考えると、パン専用のふりかけの開発に着手してもいいように思いますが、丸美屋としてはそのような考えは今のところないそう。というのも、もともとふりかけはご飯だけではなくパンや麺類に合わせやすいからです。実際にアレンジレシピも公開されていて、食パンにかける食べ方もあります。 ご飯をどう食べるかは、その人の自由 丸美屋は、ふりかけ市場でトップシェアを誇る企業。そのプライドは高く、常に新しい提案をしないといけないと考えています。そのために消費者のニーズやトレンドを捉えるのはもちろんですが、ふりかけ市場の活性化という大きな目標を持っています。 日本人にとってお米は主食として欠かすことができない食材。ご飯のお供として、ふりかけをどれだけ使ってもらえるのか、出番を多くするのかを考えなければなりません。その一歩となるのは、ふりかけの美味しや使い勝手の良さ、コスパやタイパの良さを知ってもらうこと。そうすればふりかけの出番は多くなるはずです。なぜなら、ふりかけは食べる人が自由にカスタムできるという、隠れたワクワク感があるからです。 基本的に食事のメニューは作る人が決めるもので、食べる側は受け身の状態です。でもお茶碗に盛られた白飯が目の前にあったら、それをどう食べるかはその人の自由。そのまま食べても、ふりかけをかけてもいいのです。食事の満足度を上げるために、自分が好きなようにアレンジができるのは、もはやエンターテイメント。ふりかけをかけるとしても、半分をのりたま、もう半分を味道楽にしてもいい。味を自由に想像すること、そしてアレンジすることの楽しさはふりかけの最大の強みなのかもしれません。 子どもの頃から使っているふりかけは、単なるご飯にかけるものという立ち位置ではありません。白飯を美味しくするのはもちろんですが、今日はどのふりかけにしようかと考えたり、これとこれを混ぜてみようと想像力を働かせたりすることができる楽しいもの。ふりかけを使ったことがある人ならわかるでしょうが、家庭にあるふりかけは1種類ではないのでは? のりたま、味道楽、すきやき、本かつおなど何種類ものふりかけが開封された状態になっていませんか? いくつもの味を取り揃え、同時進行で使えるのもふりかけの強みです。 トップシェアを誇る丸美屋は、美味しさのもっと先にあるエンタメ性やワクワク感、どこか懐かしい家庭の味を追求しています。のりたまを年間7.2億食(1食2.5g)売り上げる丸美屋。今回の取材では、ふりかけ市場をけん引する企業としてのプライドが見えた気がしました。 「バニラ」でも「チョコ」でもない…7年もかけて日本で最初に開発された「ハーゲンダッツのフレーバー」が意外だった

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