心配事を抱えている時、胸がぎゅっと痛んだことはないだろうか。その違和感が、じつは命にかかわる病と関係しているかもしれない。 前編記事『【診断】「病は気から」は本当だった…心筋梗塞のリスクがわかる性格チェック』より続く。 日本人の半数以上が「ハイリスクな性格」 事実、これらの性格のタイプによって、病気のリスクは如実に変わる。 ヨーロッパ心臓病学会で発表された論文によると、タイプAはタイプBやCに比べて、心筋梗塞のリスクが男性で1・4〜1・8倍高く、女性では約2倍高いという。そして、心筋梗塞のリスクが最も高い性格がタイプDだ。6000人以上の患者を対象にした研究によると、タイプBやCに比べて発症する確率が3倍も高かった。 東北大学名誉教授で、山形県立保健医療大学理事長・学長を務める上月正博氏が解説する。 「既存の研究データは心筋梗塞に絞ったものしかありませんが、脳梗塞も心筋梗塞と同じメカニズムで発症するので、同様にリスクが上昇する可能性があります。 タイプDの人が注意しなければならないのは、発症リスクの高さだけではありません。再発率もとても高いのです。 通常、心筋梗塞の再発率は18%程度ですが、タイプDの場合、72%と4倍ほどに上がっています。糖尿病を患っている人は心筋梗塞の再発率が跳ね上がることがわかっていますが、それに匹敵するほどの大きな変化だと言えます」 これらの性格タイプは、世の中に満遍なくいるわけではなく、地域や人種によって偏りがあることがわかっている。 欧米人の場合、人口の20%がタイプDにあたるとされているが、日本人では実に46・3%がタイプDに該当するという調査結果もある。Aタイプと合わせれば、日本人の半数以上が心筋梗塞・脳梗塞の高リスクグループに属しているのだ。 やはり気になるのは、自分がどの性格タイプに属しているかだろう。 そこで、取材にもとづき、簡単に診断ができるチャートを作った(右図)。右上からスタートして、各質問に「YES」の場合は左の質問へ、「NO」の場合は下の質問へ移動してほしい。 自分の性格タイプはわかっただろうか。もしタイプA、またはタイプDだったなら、まずかえりみてほしいのは、日頃ストレスを感じている度合いだ。東丸氏が解説する。 「タイプAやタイプDの人でも、イライラしたり、不安に思ったりするのを完全に避けることは難しい。なるべくストレスを感じる時間を減らし、交感神経の活動を抑えることが、心筋梗塞・脳梗塞のリスクを低減するカギになります。 気が立ってしまった時や緊張を感じた時は、意識的に一息つくなどして感情をコントロールしてください。そうした心がけひとつで、性格による影響は抑えられるのです」 ストレスチェックを欠かさず行う 心筋梗塞・脳梗塞は、言うまでもなく高血圧や高脂血症などと関係が深い。そのため、上月氏は「自分の性格タイプを把握したうえで、生活習慣病の基本的な対策をとることも大切です」と話す。 「最も重要なのは運動です。性格を変えるのは非常に困難ですが、運動はタイプAやタイプDがもたらす悪影響をカバーする効果が高い。 運動をするとコレステロールの値が下がり、炎症を引き起こすサイトカインも減少し、動脈硬化の進行を抑えます」 足や腰が悪くてなかなか運動はできないという人もいるかもしれない。そういった場合でも、リラックスするための方法がある。 「ストレス解消という意味では、好きなことをしてストレスを減らすことも重要です。ただし、やけ酒、食べすぎ、タバコの吸いすぎは逆効果なので避けてください。 人は何もしていない時ほど、不安やイライラを感じやすい。とにかく、じっとしてストレスを溜めることは避けましょう」(上月氏) 一般的に心筋梗塞の発症は、血圧が上がる午前中に多いとされるが、働き盛りの男性の場合、深夜の就業中や、休日明けの月曜日に発症することが比較的多いという。また女性は、夫や家族の面倒を見なければならない土曜日の発症が多いともいわれる。 「できれば日頃から心拍数や血圧を測って、体調やストレス傾向を細かくチェックするのが理想です。 自分がどのような時にストレスを感じやすいかを理解すれば、リラックスできる行動を生活に取り入れやすくなるはずです」(東丸氏) 健康な体は、健康な心がはぐくむ︱。発想を変えて、まずは心を整えることこそが、病気を防ぐための近道なのかもしれない。 【関連記事を読む】『死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い』 「週刊現代」2025年09月01日号より 【こちらも読む】死ぬ瞬間はこんな感じです。死ぬのはこんなに怖い