握力が15kgを下回ったらアウト 健康を保つために、日夜ウォーキングに励んでいる人は少なくないだろう。体にいいのは確かだが、それだけで95歳まで歩ける体をつくれるとは言い切れない。ねりま健育会病院院長で、リハビリテーションが専門の酒向正春氏が解説する。 「50歳になると人間の筋肉は萎縮し始め、毎年約1%ずつ衰えていきます。そのまま80歳を迎えると、人によっては5割もの筋肉が失われてしまう。転んでケガをしやすくなりますし、当然フレイルのリスクだって高まります。 加えて、ケガや病気で動けなくなると、1週間で10%もの筋肉が失われるというデータもある。そうなるとますます動けなくなって筋肉が衰えていき、負のループに陥ってしまうのです」 酒向氏によれば、筋力低下の目安になるのは握力だ。握力が15kgを下回っているならば、筋肉がかなり落ちている証拠。そこまで衰えてしまったら、段差がない平坦な道を歩いているだけでも、転倒するリスクが格段に高まると考えていい。 「95歳まで自分の足で歩くためには、80歳の時点で60代、90歳で70代と同じくらいの筋肉量を目指す必要があります。そのためにも正しい方法を身につけて、『筋肉革命』を起こすべきです」(酒向氏、以下「 」内は同) たとえ還暦を過ぎていても、正しいやり方で筋トレすれば筋肉量は着実に増加していく。酒向氏が編み出した独自のメソッドに則りながら、適切な筋トレ方法を紹介していこう。 実は間違いが多いスクワットのやり方 全身の筋肉の中でもっとも大事なのは、やはり大きな筋肉が集まっている下半身だ。酒向氏はとりわけ、太ももとお尻を強化するトレーニングを勧める。 「もっとも簡単で効果的なのはスクワットですが、実はやり方を間違えている人が多い。イスに座った状態から始めて、かかとをしっかりと地面につけたまま、スッと立ち上がります。立ち上がるときにお尻に力を入れて、両膝と股関節を伸ばした状態でキープするのがポイントです。 座るときはお辞儀をするように上半身を少し前に倒して、なるべく重心を後ろに保ちながら、ゆっくりと腰を下ろしていってください。勢いをつけて座ると、脊椎を圧迫骨折する恐れもあります。 このスクワットを30回1セットとして、朝昼晩に1日3セットずつくり返しましょう。それさえやれば、95歳になっても転ばずに歩ける筋肉を維持できるはずです」 だんだんと慣れてきて物足りなくなったら、水を入れた2ℓのペットボトルや3kgのダンベルを持って挑戦してみよう。より効率的に筋肉がついて、100歳まで歩くのも夢ではなくなる。 肩こりに効く首のトレーニング 下半身の次に鍛えたいのが体幹の筋肉。腹筋や背筋が発達することで、体のバランスが改善されて、より転びにくくなるはずだ。 「仰向けに寝て膝を曲げながら、肩甲骨を浮かせる程度に上半身を起こすだけでも、腹筋のトレーニングになります。これを30回×2〜3セットくり返せば、腹筋については十分でしょう。 背筋については、うつぶせに寝て床に両手をつき、エビ反りのように上半身を反らしてみてください。背中のトレーニングにもなるうえ、背筋が伸びて気持ちよく感じるはずです」 もし肩こりで悩んでいるならば、首の筋肉を鍛えるといい。仰向けに寝た状態で、おへそを覗き込むように首を持ち上げたり、首を左右に振ったりすることで、首の筋肉が鍛えられて、疲れやこりをほぐしてくれる。 上半身については、腕立て伏せがもっとも効率がいい。目標は20回だが、難しければ膝をついて行う「膝立て伏せ」や、壁を使った「壁立て伏せ」でも構わない。 「立った状態で壁に手をついて、腕に体重をかけながら曲げ伸ばししてみましょう。腕立て伏せより効果は劣りますが、大胸筋とその周りの筋肉を気持ちよく鍛えられます」 筋肉を鍛えるためには、筋トレだけでは不十分だ。後編記事『ケガを防ぐには「股関節を伸ばす」のが正解…意外と知らない「正しいストレッチ」のやり方』では、あわせて取り組みたいストレッチについても紹介する。 「週刊現代」2025年09月01日号より 【つづきを読む】ケガを防ぐには「股関節を伸ばす」のが正解…意外と知らない「正しいストレッチ」のやり方