東京湾で29日、サンゴの産卵の様子を撮影しました。黒潮の流れが大きくゆがむ「黒潮大蛇行」が続き、サンゴが増えたといいますが、気象庁はその「大蛇行」について、約8年ぶりの「終息」を発表しました。 　　　◇ 海を漂う無数のピンク色の粒。 志水淳平カメラマン 「次々とサンゴから、ピンク色のカプセルが上に上にと放たれていきます。すごい。幻想的ですね」 全てサンゴの卵です。 29日午後9時前。場所は、千葉県勝山沖の海の中。産卵のピークを迎え、卵が一斉に漂いました。 東京湾の海は今、大きな変化を迎えようとしています。 　　　◇ とれたての海鮮が楽しめる千葉県銚子市の飲食店で聞かれたのは…。 漁港の前にある魚料理店 「今年はいけるんじゃないかなと思ってる。魚料理屋だから、お魚が増えてくれれば、それが一番」 “今年は魚が増えるのでは”と”期待”の声があがるワケは、“この発表”にありました。 気象庁の担当者（29日午前11時半ごろ） 「（黒潮）大蛇行の定義には合わないような状況。終息しましたと判断したということです」 過去最長、8年近く続いた「黒潮大蛇行」の終息宣言。 「黒潮大蛇行」とは、日本の南岸に沿って流れる海流「黒潮」が、自然現象で発生した“冷たい渦”に妨げられるなどして本来のルートから外れて、大きくゆがむ現象です。 今年の4月に通常ルートに戻ったことから終息が宣言されましたが、今回のように8年近くも続くのは“異例”のこと。 これが海水温の上昇をもたらし、近年の関東や東海を中心とした豪雨や猛暑の原因のひとつともされています。 周辺の海では元々とれていた魚がとれなくなることが相次いでいましたが、終息により、すでに“回復の兆し”が見えてきているところもあります。 静岡県富士市の漁港、田子の浦港では先月…。 「3か月弱、シラスが全然とれなかったので。いいシラスだと思いますよ。大きさ的にちょうどいいくらい」 今シーズン初めてとなるサンマが水揚げされた岩手県の大船渡港でも…。 「去年よりは今のところ順調に見えているので」 一方で、影響が続いているのが、銚子漁港。かつて、サンマの水揚げ量日本一を誇っていましたが、3年前には漁獲量ゼロとなる事態に。 50年以上営む飲食店は、2年前にメニューからサンマを外したといいます。 漁港の前にある魚料理店 「電話番号も預かってる。サンマがとれたら必ず電話してくださいっていうお客さんもいる。サンマありませんかってみんな探してますよ。早く出してあげたい」 　　　◇ 大蛇行が起きていた約8年の間、海の中はどんな変化が起きていたのか？　特別な許可をもらい、海に潜ってみると…。 かつて同じ海域で撮影した映像と比べてみると、今は海藻がなくなり、サンゴで埋め尽くされ、この周辺では、実に4倍ほどの面積に成長。 さらに温暖化や大蛇行などの影響で、暖かい海に生息する魚やサンゴの種類が増えているといいます。 ただ、ここでイワシなどの漁をする漁師からは…。 鋸南町勝山漁協　定置部　広瀬正幸船長 「（イワシが）だいぶとれてたんですけど、ここ何年かはだいぶ少なくなって。サザエ・アワビもほぼいなくなったという感じ。潮の感じが昔のように少しでも戻ってくればいいかなという思い」 この漁港では10年ほど前あった約7000万円の水揚げは近年、数百万円まで落ち込んでいるといいます。 　　　◇ 気になる今後について、海流に詳しい専門家は…。 海洋研究開発機構　美山透主任研究員 「今まで経験もしなかった状態がずっと続くというのは、自然のサイクルとしてはちょっと異常なので。（黒潮の大蛇行が）今まで我々が見たことのない終わり方をしているので、まだ若干復活する可能性も残っている」 8月30日（土）午前0時25分（金曜深夜）放送『news zero』より