「セ」は阪神独走、「パ」は2強激戦で今秋「CS不要論」は過去最大に? これまでの「下克上確率」は20%

 8月が終わり、プロ野球の公式戦もあと1か月。各チームともに20数試合を残すのみとなった。  気になるペナント争いだが、セ・リーグは阪神が春先からペースダウンすることなく独走態勢を貫いている。接戦続きとなった先週末の巨人との3連戦も、終わってみれば阪神が2勝1敗と勝ち越して、優勝マジックを着実に減らしている。今週中にもリーグ優勝を決める勢いだが、それが即、2か月後の日本シリーズ(10/25〜11/2)につながらないのが昨今のプロ野球界である。  【八木遊/スポーツライター】  *** 【写真を見る】アラフィフでもこのカラダ! 新庄監督の肉体美 自宅の庭に設置した豪華サウナも 阪神の2年ぶり優勝が目前  今季は藤川球児監督の下、新たな船出を迎えた阪神。打線は2冠ペースの佐藤輝明を筆頭に、森下翔太や近本光司ら不動のレギュラー陣が非の打ち所がない活躍を見せている。投手陣も一時、チーム防御率が1点台に突入するなど、先発から中継ぎ、抑えまで盤石の体制。投打にわたって他の5球団に力の差を見せつけてきた。 優勝を目指す阪神・藤川監督と日本ハム・新庄監督  一方で、ライバル球団はそろって低調なまま9月を迎えた。今季は交流戦でセ・リーグ各チームが大きく負け越したこともあり、2位の巨人でさえ借金生活を強いられている。3位のDeNAに至っては借金の数が5に上っている状況だ。現在、阪神と巨人の差は、実に16ゲームもある。  戦力的にはこのまま阪神がクライマックスシリーズ(CS)でも圧倒的な強さを見せつけ、あっさりと日本シリーズに進む可能性が高いだろう。しかし、勝負事はやってみないと分からない。昨年も優勝した巨人が3位のDeNAに足をすくわれたように、下駄を履くまでわからないのが短期決戦である。  阪神が独走する中、多方面から聞こえてくるのがCSの在り方を再考すべきだという意見だ。 上原浩治氏がCS制度に提言  例えば元メジャーリーガーの上原浩治氏は、TBS系「サンデーモーニング」に生出演した際に、セ・リーグの2位以下のチームが負け越している状況を踏まえて、「日本シリーズに出て優勝したら、どうなの?っていう疑問が残りますよね。何かルールを作ってほしいなと思います」と苦言を呈し、「やっぱり阪神に(日本シリーズに)行ってもらうくらいのルールを作った方がいいんじゃないかなって気はします」と、不公平な現行制度に対する提言をしている。  実際に阪神が日本シリーズ進出を逃す可能性はゼロではない。実際にCSが2007年に始まって以降、2位もしくは3位のチームが下克上を成し遂げ、ペナント覇者の日本シリーズ進出を阻んできた例もある。その数はセ・リーグだけで昨季までの17回中、4回を数える。  これまで下克上を許したのはのべ4チームあるが、その中で公式戦で2位チームに最も大差をつけたのが2017年の広島だった。その年は2位の阪神に10ゲーム差をつけた広島がリーグ連覇を達成したが、CSファイナルで3位から勝ち上がったDeNAにあえなく敗れ去った。  今季の阪神は2位に10ゲーム以上の差をつけて優勝することはほぼ確実で、そうなれば、8年前を上回る“反発”も予想される。特に公式戦で負け越したチームが日本シリーズに出場する事態になればなおさらだろう。阪神にとって怖いのは、唯一対戦成績で負け越している中日がCSに勝ち上がってくることではないか。 熱パに水を差す可能性も  そんなセ・リーグに対してパ・リーグはどうか。今季は新庄剛志監督率いる日本ハムが開幕ダッシュに成功し、首位を快走していたが、夏場を迎えてソフトバンクが逆襲に成功。一気に日本ハムを抜き去り、その後は“2強”が一進一退の攻防を繰り広げている。現在、その差はわずか1ゲームだ。  2強に続く3位争いはオリックスが頭ひとつリードしている。さらに4位の楽天と5位の西武にも辛うじてチャンスは残されている状況だ。セ・リーグとパ・リーグで異なるペナント争いとなっている中で、パ・リーグにも“CS不要論”が出るかもしれない。  今季のパ・リーグは公式戦の最終戦で優勝が決まるようなドラマチックな展開も予想される。その上で、改めて行われるCSに対して拍子抜けと感じてしまうファンも出てくるだろう。また、ソフトバンクと日本ハムがCSファイナルで対決するならまだ格好がつくが、大きく離された3位チームが進出してくれば、微妙な空気が漂うのは間違いない。 CS制度の廃止は非現実的?  過去のパ・リーグに、今季と酷似する状況があった。それが2014年と22年のペナントレースだ。どちらの年もソフトバンクとオリックスが熾烈な首位争いを展開し、14年はシーズン最終盤に、22年はシーズンの最終日に優勝が決定。14年はソフトバンクが、22年はオリックスがそれぞれ栄冠に輝いた。  ただ、14年はCSファーストステージで3位の日本ハムが2位のオリックスを撃破。さらにCSファイナルでも日本ハムが逆王手をかける展開となった。この時はファイナル最終戦でソフトバンクが勝利し、日本ハムの下克上は叶わなかったが、2強で最後まで盛り上がったシーズンに3位チームが日本シリーズに進出していた可能性があった。  いずれにしても、今季どちらかのリーグで下克上が起これば、多くのファンからCS不要論が出てくるだろう。上位がセ・パ両リーグとも批判が出やすいゲーム差となっているだけに、過去最大級の「不要論」が持ち上がる可能性すらある。しかし、興行面や収益の観点からCSの制度を廃止することは現実的でなくなっているのもまた事実。今季のペナントを例にとっても、CSがなければセ・リーグは多くの試合が“消化試合”となっていた。現行制度のおかげで、阪神以外の球団やそのファンにCS争いというモチベーションをもたらしている。  それを踏まえた上で、やはり今年のCSの結果次第では、ゲーム差によってアドバンテージに強弱をつけたり、そもそも負け越したチームはCSから除外したりするなど、様々な案が出てくるだろう。今年も完璧な答えがない“秋の風物詩”と化した議論が始まっている。    ちなみに、過去のCSをシーズン優勝チームが勝ち抜けなかった確率は、セ・パ両リーグ合わせてちょうど20%である。 八木遊(やぎ・ゆう) スポーツライター 1976年生まれ。米国で大学院を修了後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLなどの業務に携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬記事を執筆中。 デイリー新潮編集部

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