【全2回(前編/後編)の後編】 最新の各社世論調査で石破政権の支持率が軒並み上昇している。総裁選前倒しの議論が進み、窮地に陥る石破茂首相(68)にとってはまさに福音。おかげで機嫌もすこぶる良いという。もっとも、自民党ナンバー2との間にはすきま風が吹き始めているそうで……。 *** 【写真を見る】麻生氏が目をつける「女性総裁候補」とは 過去には信じられないスキャンダルも 前編【「石破総理は何を考えているのか分からない」 森山幹事長が周囲に明かす 「直接、慰留の要請をしていない」】では、森山裕幹事長(80)が周囲に漏らしているという、石破首相への本音を紹介した。 さて、石破首相は、森山氏を慰留できるのか。 石破茂首相 「難しいでしょうね」 とみるのは、自民党関係者。 「石破首相は2020年の総裁選に強行出馬して敗北し、『水月会』の会長を辞任しました。グループは集団指導体制に移行し、石破氏の求心力は低下。伊藤達也元金融相(64)や山本有二元農水相(73)ら側近が続々と去った。この時も石破首相は誰一人として引き留めようとはしませんでした。よく言えば“去る者は追わず”、悪く言えば、人に頭を下げられない人間なんです」(同) さらに、こう続ける。 「石破首相は付属高校からエスカレーター式で慶應大に進んだ筋金入りのお坊ちゃん。2世議員ゆえ本当の苦労を知らず、自ら“人に頭を下げるのは苦手”と公言してはばかりません。そんな石破氏に足りないものを補ってきたのが、たたき上げで政界の裏表を知り尽くした森山氏でした。石破首相にとって森山氏は、何が何でも手放せない政権運営の生命線なのです」 二人の間にすきま風が 石破首相が真剣に森山氏を慰留しないことが影響し、今や二人の間には明らかなすきま風が吹き始めている。 政治ジャーナリストの青山和弘氏も言う。 「石破首相と森山氏の考えには齟齬(そご)が生じています。8月8日の両院議員総会では総裁選前倒しに議題が絞られ、選挙管理委員会で可否が判断されることになりました。森山氏が党内融和を優先して総会の開催を主導したのですが、他方、首相は開催そのものに後ろ向きでした。総裁選前倒しの議論が進んでいる現状には不満があるようです」 「踏み絵を踏ませる気か」 首相の思いとは裏腹に選挙管理委員会は、9月2日の参院選総括を経て、党則第6条4項に基づく「臨時総裁選」について、国会議員らに書面で実施要求の意思を示してもらう案を検討中だ。党則は“党所属の国会議員と都道府県連代表1名の総数の過半数が求めた場合、総裁選を行う”旨、明記している。 「すでに全国47都道府県連のうち20超が総裁選前倒しを求めています。国会議員も地元の声を無視できず、臨時総裁選の実施は予断を許さない状況です」(政治部デスク) 一方、森山氏は、「臨時総裁選要求は軽い話ではない」と強調。要求した国会議員の氏名を公表する案には賛意を示している。これに対して、党内からは「踏み絵を踏ませる気か」と反発する声が噴き出しているという。 揺れる胸中を吐露 森山氏本人に話を聞くと、 「(踏み絵を)踏むも踏まないも、誰が出したか分からない書面なんて話にならないじゃないですか。首班指名だって記名投票ですよ」 また、自身の進退については、 「総括の後に私の考えを述べようと思います」 と、言葉を選びながら、 「私は総裁から指名された幹事長です。人事権者に対しては忠実にやります。それは当たり前のことですよ。忠実にやらないなら、さっさと辞めちゃうでしょう。でも、そういうわけにはいかないですから」 揺れる胸中を吐露するのである。 森山氏が幹事長を辞任した場合、格下の幹事長代理などで処遇し、引き続き政権にとどめる奇策も浮上している。果たして、石破首相はプライドを捨て、こうべを垂れるか。支持率上昇で妙な自信をつけている場合ではない。 前編【「石破総理は何を考えているのか分からない」 森山幹事長が周囲に明かす 「直接、慰留の要請をしていない」】では、森山幹事長が周囲に漏らしているという、石破首相への本音を紹介している。 「週刊新潮」2025年9月4日号 掲載