【全2回(前編/後編)の前編】 最新の各社世論調査で石破政権の支持率が軒並み上昇している。総裁選前倒しの議論が進み、窮地に陥る石破茂首相(68)にとってはまさに福音。おかげで機嫌もすこぶる良いという。もっとも、自民党ナンバー2との間にはすきま風が吹き始めているそうで……。 *** 【写真を見る】麻生氏が目をつける「女性総裁候補」とは 過去には信じられないスキャンダルも 東京都千代田区のパレスホテル東京内にある日本料理店「和田倉」の個室に8月24日午後5時ごろ、小泉純一郎元首相(83)、山崎拓元副総裁(88)、武部勤元幹事長(84)らかつての自民党重鎮が顔をそろえた。会食の主催者は石破茂首相。赤澤亮正経済再生担当相(64)も傍(かたわ)らに侍(はべ)った。季節の高級懐石料理に舌鼓を打ちつつ、宴席はおよそ2時間半に及んだのである。 石破茂首相 山崎氏によれば席上、小泉元首相が石破首相に、日米開戦に至る過程を描いた猪瀬直樹氏のノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』を薦めて、石破首相が「私も読んで、非常に感銘を受けました」と応じる一幕があったという。さらに、 「小泉さんは、石破総理の政権運営の参考になるようなお話をいろいろされていました。とりわけ郵政解散の時の話が中心でしたね」(山崎氏) 「首相をやっていると、あまり楽しいことはない」 政治部デスクが解説する。 「小泉、山崎、武部の三氏は石破首相に総裁選出馬を促した面々です。今回の会合には、“石破おろし”をけん制する意味合いが色濃くにじんでいます。小泉元首相は郵政解散の際、郵政民営化に反対した議員を非公認とし、刺客を送り込みました。石破首相もいざとなれば、解散総選挙によって党内の敵対勢力を一掃できる。小泉氏の郵政解散の話からはそんなメッセージが読み取れます」 石破首相はその3日前、神奈川県横浜市で開催されたTICAD(アフリカ開発会議)の夕食会のあいさつで、 「首相をやっていると、あまり楽しいことはない」 そうボヤき、各国首脳の笑いを誘ったのだが、政権の支持率は上向いている。例えば先日の読売新聞の調査では、7月から17ポイントも高い39%を記録した。 政治ジャーナリストの青山和弘氏が言う。 「石破首相に支持率の上昇について水を向けると、“支持率が5割になったわけではないのだから”と口では言うものの、明らかに上機嫌でした」 「政権運営に自信を深めている」 実際のところ、石破首相が自ら退陣する気配はみじんも感じられないという。 「石破首相は全国戦没者追悼式の式辞に『反省』の文言を盛り込み独自色を示しました。一部から反発はあったものの、おおむね好評で手応えを感じています。TICADで共同議長を務め、また23日の日韓首脳会談では未来志向の関係構築で一致するなど外交面でも一定の成果を上げました。さらに最近、株価も高騰しており、ここにきて政権運営に自信を深めている様子です」(青山氏) 石破首相があくまで政権を手放さない姿勢であっても、追い込まれている状況に変わりはない。インドのモディ首相が8月29日に来日することなどを理由に、当初8月中に予定されていた参院選総括は9月2日にずれ込んだが、 「森山裕幹事長(80)は総括後の辞任を示唆しています。ほかの党役員についても9月末の任期満了が迫っています」(前出のデスク) “石破総理は何を考えているのか分からない” とりわけ森山氏の去就は、政権の命運を左右するといわれている。 「森山氏は7月28日に開催された両院議員懇談会で“総括後に責任を明らかにする”と発言し、事実上の辞任表明と受け止められました。実を言うと、森山氏は懇談会前に石破首相へあらかじめ辞意を伝えています。石破首相は周囲に“森山さんは『辞める』とは言っていない”と語り、慰留の姿勢は示しているものの、本人に直接“幹事長を続けてほしい”と要請してはいません」(前出のデスク) 一方、森山氏は先日、党鹿児島県連会長を辞任する意向は撤回している。後任に名前の挙がった三反園訓衆院議員(67)が「厳しい状況だからこそ一致団結できる体制を」と続投要請したためだ。 「石破首相も同じように頭を下げれば、森山氏もむげにはしないはずです。ですが、首相から慰留の言葉はいまだになく、森山氏が周囲に“石破総理は何を考えているのか分からない”と嘆くことしきりだといいます」(前出のデスク) 後編【石破首相は「筋金入りの坊ちゃんで、人に頭を下げられない」 森山幹事長との間に“すきま風”が】では、石破首相が森山幹事長を慰留するのは「難しい」という関係者の分析を紹介する。 「週刊新潮」2025年9月4日号 掲載